拝啓、取引様
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「こことー・・・・あとここも行きたい」
「ここの特色は?」
「いちご大福!」
「了解。んじゃあまずここから行ってみるか」
最近の私たちのデートはだいたい、
和菓子屋だ。
気になる店を見つけては、出かけてる。
シャンクスの部屋にもよくお邪魔するようになった。
今はお部屋の中でデートの作戦会議。
「いちご大福ってすごいよね。あんこの中にいちご入れるなんて衝撃」
「しかも美味いときたもんだ」
「ね。あの発想はなかなか出ないよ」
「だが・・・俺とアコならもっとすげェもんが作り出せるだろうな」
自信満々の笑みを浮かべるシャンクス。
「・・・その自信の根拠は何処から、って聞いてもいい?」
「愛だな」
「・・・・シンプルだね」
「実績もあるだろ?」
「まあね?」
「俺とアコの愛の結晶だ」
「・・・何かその言い方やだ」
「間違ってはいないはずだが」
うん、まあ確かに間違ってはないんだけど!
「ところで2店舗でいいのか?」
「うん、今日のところは。何で?」
「いつももっと行くだろう」
「・・・・いいの、2つで」
確かにいつもはもっと行く。
本当は今日あって行きたい。
でも行けない深い深い理由がある。
「・・・なるほど」
何も言ってないのにシャンクスは納得した様子を見せた。
「私まだ何も言ってないよね?」
「わかるさ、アコのことは」
「言わなくていいからね!?」
「どんな風になっても俺はアコを愛してる」
・・・遠回しに励まされた。
まあ、デートは和菓子屋巡り。
仕事はお菓子作り。
じゃあ当然、体重が増える訳で。
・・・お腹、出て来たのよね最近。
「・・・ありがと」
でもこの言葉に甘える訳にはいかない。
痩せるなら食べるな動けってよく言うけど、
仕事柄食べない訳にいかない。
とにかく出来るだけ食べないで、
動くしかない!
「ねえ、シャンクス」
「ん?」
「私一口を全力で味わうから残り食べてくれる?」
「ああ、任せてくれ」
頼もしい私のパートナー。
「ところでアコ」
いつもの調子で私の名前を呼んだシャンクスのポケットから、
あり得ないものが出て来た。
「・・・シャンクス?」
「気に入らなかったら改めて他のを用意するつもりだ」
「え、だって・・・前に、もらった、よ?」
「あれは金獅子を騙す為のものだろ?俺はあれじゃ納得しない」
前にもらったのは恐らくルビーだった。
今回は、
シンプルに光るダイヤモンド。
私だってシャンクスのことは段々わかってきたとはいえ、
さすがにこれには動揺を隠せない。
「・・・あのねシャンクス」
「サイズも合ってるだろう?」
「あ・・・」
シャンクスが私の左手をとって、
ゆっくりと、優しく指輪をはめてくれた。
「似合ってる」
ちゅ、と額に口づけが落とされた。
「・・・・シャンクスが社長として頑張ってるのは知ってる。でもあんまり金銭感覚が違うと・・・」
自信失くす・・・!
「心配しなくてもこれからはアコに相談するさ。俺だけの金じゃなくなる訳だしな」
私まだ返事してないのに、と思っていたら、
次にシャンクスは1枚の紙を私に出してきた。
あ、これ知ってる。
「・・・2回目だね?書くの」
「予行練習してあったからもうすんなり書けるだろう」
婚姻届け。
シャンクスの分だけはもう既に記入済み。
「・・・うん」
・・・ここまできて、まだ迷ってる私。
「俺と結婚してくれ、アコ」
そしてそんな私にトドメ。
「・・・わ、たし」
私は。
・・・返事を、迷ってる。
「返事は今じゃなくてもいい。・・・待ってる」
私の様子を見かねてシャンクスがぽんぽんと頭を叩きながら笑った。
「じゃあ最初の店、行くか」
「・・・うん、行く」
8年も待たせておいて。
・・・私はまた、シャンクスに待たせている。
自分の部屋で1人になると色々考えちゃうなぁ。
考えてみれば、取引先としてシャンクスに会わなかったら。
・・・私は今路頭に迷ってたんだきっと。
あの日私が、オーロジャクソン㈱を選んでいなかったら。
シャンクスとはいつ再開出来ただろう。
そしたら私は、違う人と出会って、
違う人と恋をしてたのかな。
・・・今は想像もつかないけど。
高校の頃だってシャンクスとこんな風になるなんて想像してなかった。
・・・最初は高校の同級生で。
次に会った時はもう取引先で、
あっという間に社長になって。
恋人。
中でも1番思い出にある、取引先だった頃。
まだ最近のことなのに昔のことのように思えるから不思議。
取引・・・・か。
「はいシャンクス」
「・・・手紙か?」
「うん、この間の返事」
私はシャンクスに手紙を書いた。
そしてそれを、仕事の時に渡した。
「今読んでも?」
「駄目。・・・仕事終わったら読んで、電話で返事して?」
「・・・俺に対する返事に返事?」
「うん、よろしくね」
「アコ、」
「じゃあ仕事に戻りまっす!」
手紙を渡して、仕事に戻った。
こんなにドキドキしながら仕事をする1日は、初めてかもしれない。
ミスをしないように慎重に、
新作和菓子の改良に取り掛かった。
あ、あとで電話しないと。
取引先に。
その日の夜、シャンクスから電話があった。
『取引成立だ』
そして私にとってシャンクスは、
旦那様になった。
拝啓、取引先様。
私が貴方を幸せにします。
だからあなたが私を幸せにしてくれますか?
+そんな取引 終+