拝啓、取引様
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新商品の売れ行きが好調だ。
有難いことにそう報告が来ている。
先方も喜んでくれているとのこと。
頑張ったご褒美に、と今日は買い物に来ている。
いい天気だし。
特別ボーナスも少しは出るかもしれねェぞ、とのヤソップさんの言葉を信じて。
1人で買い物とか寂しくないし。
普通だし!!
あ、この服可愛い。
・・・・でも結構するなー。
安月給の身。
ご褒美と言えども好きなように買うのはやめておこう。
服は結構最近買ったばっかりだし。
お、靴いいかも。
このパンプス可愛いしヒールの高さもイイ!
これは買いだな。
あとはー・・・本も欲しいけど我慢しよ。
重くなるし。
鞄もいい。
仕事用のバッグが結構ボロボロになってきたから買っちゃおう。
ああっそう言えば今日紫水庵の新作和菓子が出る日だった!
結局、最初に見たパンプスとバッグ、紫水庵の新作和菓子も無事にゲットして1日の休みが終わった。
幸せな1日だった。
幸せだったのは、1日だけ。
買ったばかりの靴を履いて、
買ったばかりのバッグで出勤。
「おはよう御座いまーす」
「おー今日も好調だぞ」
「アレですか?」
「おう。今コンビニでそのサマも見た」
「やった!」
「・・・・それ新品だな」
ヤソップさんが私のバッグをじろりと見る。
「そうですけど」
「また高そうなもん買うじゃねーか。鞄なんて入りゃいいだろ入りゃ」
「・・・乙女心がわかってませんねヤソップさん」
「俺ぁ男だからな」
「そんなんじゃ乙女心掴む和菓子は作れませんよー」
「今必死に1人の女の心掴もうとしてる男がもうすぐ社長になるから大丈夫だ」
「・・・・そうですか」
仕事を終えて帰ろうと外に出た私は、
絶望した。
・・・・何コレ。
嘘でしょ。
暗い空。
そこから降り注ぐ、
雨。雨。雨。・・・・・あめ。
ちょっと待って。
ねえ、私。
今日・・・・新品の靴とバッグよ?
天気予報雨なんて言ってなかったじゃん!
嘘つきー!!
傘も持ってないよ!
・・・・・走ろう。それしかない。
覚悟を決めて拳を握りしめた時、
目の前に見慣れた車が止まった。
「アコ」
窓から出た赤い髪。
「・・・・しゃん、くす」
「帰るんだろ?送って行く」
ドアが、開いた。
「え、でも」
「傘ないんだろ?」
・・・・傘はない。外は雨。
買ったばかりの靴とバッグ。
「・・・・・お邪魔します」
そっと乗り込んだ。
ばたん、とドアを閉めたら車が動き出したので慌ててベルトを締めた。
「可愛いな、その靴。・・・・と鞄」
ちら、と私の靴とバッグに視線を向けてシャンクスが言う。
「・・・ありがと」
外を見たら、やっぱり傘を持ってない人がちらほら居て、鞄やタオルを頭に置いて走ってる姿が。
「シャンクスもう仕事終わり?」
「いや、途中だ」
「え、じゃあ何で・・・」
「アコは傘を持っていない、加えて新品の靴と鞄を持っている。そうメールが来た」
「・・・・誰から」
もうここまで来たら犯人はわかりきってるけど一応聞いてみる。
「ヤソップから」
・・・・だろうね。
「いいの?仕事・・・」
「せっかくのチャンスだ、逃す訳にはいかねェよ」
「・・・・怒られないのそれで」
「全然。むしろ新商品が好調で喜んでる」
「うん。・・・・私も、嬉しい」
私たちの想いを賭けたケーキ。
私もこの間売れるところ見たんだよ、
と話したい。
・・・・でも。
何だか少し話しずらい。
そう感じてるのは私だけかもしれないけど。
「そういえば私この間社長さんにご挨拶しなかったけど・・・怒ってなかった?」
恐る恐る心配していたことを聞いてみたら、
シャンクスは笑った。
「そんなことで怒るような社長なら俺は入社出来てねェだろうな」
「・・・・優しい人だね」
「あァ、心は広いな」
「でもやっぱり今度行かせてもらいたいな、挨拶」
「その時は俺も行く」
「え、いいよ。1人で・・・」
「俺もプロジェクトの責任者だろう」
「・・・・そう、だけど」
「大丈夫だ、嫁だなんて紹介するつもりはない」
「っそんな心配はしてない!」
「そうか?」
カラカラと笑うシャンクスに心臓の動きが早まる。
・・・・前までこんなことなかったのに。
やっぱり私はシャンクスのことが好きなんだと思い知らされる。
私も好き、と言ってしまいたくなる。
言わないと決めたから言わないけど。
「・・・雨、酷くなってきたね。今日雨って知ってた?」
「朝の天気予報で言ってたな」
「言ってた!?嘘!」
見てたけど言わなかったよ!?
段々と強くなる雨脚に、シャンクスの存在の有難みを改めて思う。
「必要ならいつでも呼んでくれ、すぐに行く」
「・・・・そんなパシリみたいな存在でいいの?」
「俺は気にしないな」
「だって・・・利用、されてるんだよ?」
「むしろ利用してくれ。それで会えるんなら大歓迎だ」
・・・何で、そんなに。
「・・・私、最低なんだよ」
「・・・アコ?」
「部屋は汚いし面倒くさがりだし、頭悪いし・・・性格も決して良い方とは言えないし」
「それが最低か?」
「今だってシャンクスのこと利用してるし」
「俺は喜んでるんだが」
「シャンクスに好きだって言ってもらえるような人間じゃないんだよ、私」
「・・・と言われてもな」
困ったように言うシャンクスの表情は何処か優しい。
「アコは今の会社が好きだな」
「え?うん」
シャンクスが突然話題を変えた。
・・・・ように思えた。
「高校の頃から株式会社シロップに入りたいと言ってただろ」
「・・・あの頃からファンだったから」
「和菓子はいっぱいあるのにあそこを選んだ理由は?」
「・・・美味しいから」
「そうだな、確かに美味い。でも改良点はあるはずだ。違うか?」
「そりゃあ、あるけど・・・」
確かにすべてが良いとは思ってない。
「まぁ、だから俺もあの会社と合併しようと思った訳だ。プロデュースのし甲斐がある」
「シャンクス和菓子好きだったっけ?」
「正しくは好きになった、だな。最近。アコの影響だ、間違いなく」
「・・・・もしかしてこの間図書館に居たのって」
そうだよ、あの時シャンクスは和菓子関連の棚の近くに居た。
和菓子の棚の近くに企業関連の本がある訳ない。
「興味を惹かれる本はなかったが、一応な」
「やっぱり・・・」
「話しが逸れたな。だがまぁ、つまりはそういうことだ」
・・・・ん?
「ごめん、どういうこと?」
「短所があってもそれを有り余るくらい愛おしいってことだ」
きゅうう、っと心臓が締め付けられた。
「とにかく何言われても諦めることはないと思ってくれ。・・・着いたな」
話しをしているうちに家に着いた。
「・・・・あり、がと」
これしか言葉が出てこなかった。
そんな当たり前の言葉だけを伝えて、私は車を降りた。
シャンクスは、最後まで笑ってくれてた。
今更、
私が言えることなんて。
+続かない幸せ 終+
有難いことにそう報告が来ている。
先方も喜んでくれているとのこと。
頑張ったご褒美に、と今日は買い物に来ている。
いい天気だし。
特別ボーナスも少しは出るかもしれねェぞ、とのヤソップさんの言葉を信じて。
1人で買い物とか寂しくないし。
普通だし!!
あ、この服可愛い。
・・・・でも結構するなー。
安月給の身。
ご褒美と言えども好きなように買うのはやめておこう。
服は結構最近買ったばっかりだし。
お、靴いいかも。
このパンプス可愛いしヒールの高さもイイ!
これは買いだな。
あとはー・・・本も欲しいけど我慢しよ。
重くなるし。
鞄もいい。
仕事用のバッグが結構ボロボロになってきたから買っちゃおう。
ああっそう言えば今日紫水庵の新作和菓子が出る日だった!
結局、最初に見たパンプスとバッグ、紫水庵の新作和菓子も無事にゲットして1日の休みが終わった。
幸せな1日だった。
幸せだったのは、1日だけ。
買ったばかりの靴を履いて、
買ったばかりのバッグで出勤。
「おはよう御座いまーす」
「おー今日も好調だぞ」
「アレですか?」
「おう。今コンビニでそのサマも見た」
「やった!」
「・・・・それ新品だな」
ヤソップさんが私のバッグをじろりと見る。
「そうですけど」
「また高そうなもん買うじゃねーか。鞄なんて入りゃいいだろ入りゃ」
「・・・乙女心がわかってませんねヤソップさん」
「俺ぁ男だからな」
「そんなんじゃ乙女心掴む和菓子は作れませんよー」
「今必死に1人の女の心掴もうとしてる男がもうすぐ社長になるから大丈夫だ」
「・・・・そうですか」
仕事を終えて帰ろうと外に出た私は、
絶望した。
・・・・何コレ。
嘘でしょ。
暗い空。
そこから降り注ぐ、
雨。雨。雨。・・・・・あめ。
ちょっと待って。
ねえ、私。
今日・・・・新品の靴とバッグよ?
天気予報雨なんて言ってなかったじゃん!
嘘つきー!!
傘も持ってないよ!
・・・・・走ろう。それしかない。
覚悟を決めて拳を握りしめた時、
目の前に見慣れた車が止まった。
「アコ」
窓から出た赤い髪。
「・・・・しゃん、くす」
「帰るんだろ?送って行く」
ドアが、開いた。
「え、でも」
「傘ないんだろ?」
・・・・傘はない。外は雨。
買ったばかりの靴とバッグ。
「・・・・・お邪魔します」
そっと乗り込んだ。
ばたん、とドアを閉めたら車が動き出したので慌ててベルトを締めた。
「可愛いな、その靴。・・・・と鞄」
ちら、と私の靴とバッグに視線を向けてシャンクスが言う。
「・・・ありがと」
外を見たら、やっぱり傘を持ってない人がちらほら居て、鞄やタオルを頭に置いて走ってる姿が。
「シャンクスもう仕事終わり?」
「いや、途中だ」
「え、じゃあ何で・・・」
「アコは傘を持っていない、加えて新品の靴と鞄を持っている。そうメールが来た」
「・・・・誰から」
もうここまで来たら犯人はわかりきってるけど一応聞いてみる。
「ヤソップから」
・・・・だろうね。
「いいの?仕事・・・」
「せっかくのチャンスだ、逃す訳にはいかねェよ」
「・・・・怒られないのそれで」
「全然。むしろ新商品が好調で喜んでる」
「うん。・・・・私も、嬉しい」
私たちの想いを賭けたケーキ。
私もこの間売れるところ見たんだよ、
と話したい。
・・・・でも。
何だか少し話しずらい。
そう感じてるのは私だけかもしれないけど。
「そういえば私この間社長さんにご挨拶しなかったけど・・・怒ってなかった?」
恐る恐る心配していたことを聞いてみたら、
シャンクスは笑った。
「そんなことで怒るような社長なら俺は入社出来てねェだろうな」
「・・・・優しい人だね」
「あァ、心は広いな」
「でもやっぱり今度行かせてもらいたいな、挨拶」
「その時は俺も行く」
「え、いいよ。1人で・・・」
「俺もプロジェクトの責任者だろう」
「・・・・そう、だけど」
「大丈夫だ、嫁だなんて紹介するつもりはない」
「っそんな心配はしてない!」
「そうか?」
カラカラと笑うシャンクスに心臓の動きが早まる。
・・・・前までこんなことなかったのに。
やっぱり私はシャンクスのことが好きなんだと思い知らされる。
私も好き、と言ってしまいたくなる。
言わないと決めたから言わないけど。
「・・・雨、酷くなってきたね。今日雨って知ってた?」
「朝の天気予報で言ってたな」
「言ってた!?嘘!」
見てたけど言わなかったよ!?
段々と強くなる雨脚に、シャンクスの存在の有難みを改めて思う。
「必要ならいつでも呼んでくれ、すぐに行く」
「・・・・そんなパシリみたいな存在でいいの?」
「俺は気にしないな」
「だって・・・利用、されてるんだよ?」
「むしろ利用してくれ。それで会えるんなら大歓迎だ」
・・・何で、そんなに。
「・・・私、最低なんだよ」
「・・・アコ?」
「部屋は汚いし面倒くさがりだし、頭悪いし・・・性格も決して良い方とは言えないし」
「それが最低か?」
「今だってシャンクスのこと利用してるし」
「俺は喜んでるんだが」
「シャンクスに好きだって言ってもらえるような人間じゃないんだよ、私」
「・・・と言われてもな」
困ったように言うシャンクスの表情は何処か優しい。
「アコは今の会社が好きだな」
「え?うん」
シャンクスが突然話題を変えた。
・・・・ように思えた。
「高校の頃から株式会社シロップに入りたいと言ってただろ」
「・・・あの頃からファンだったから」
「和菓子はいっぱいあるのにあそこを選んだ理由は?」
「・・・美味しいから」
「そうだな、確かに美味い。でも改良点はあるはずだ。違うか?」
「そりゃあ、あるけど・・・」
確かにすべてが良いとは思ってない。
「まぁ、だから俺もあの会社と合併しようと思った訳だ。プロデュースのし甲斐がある」
「シャンクス和菓子好きだったっけ?」
「正しくは好きになった、だな。最近。アコの影響だ、間違いなく」
「・・・・もしかしてこの間図書館に居たのって」
そうだよ、あの時シャンクスは和菓子関連の棚の近くに居た。
和菓子の棚の近くに企業関連の本がある訳ない。
「興味を惹かれる本はなかったが、一応な」
「やっぱり・・・」
「話しが逸れたな。だがまぁ、つまりはそういうことだ」
・・・・ん?
「ごめん、どういうこと?」
「短所があってもそれを有り余るくらい愛おしいってことだ」
きゅうう、っと心臓が締め付けられた。
「とにかく何言われても諦めることはないと思ってくれ。・・・着いたな」
話しをしているうちに家に着いた。
「・・・・あり、がと」
これしか言葉が出てこなかった。
そんな当たり前の言葉だけを伝えて、私は車を降りた。
シャンクスは、最後まで笑ってくれてた。
今更、
私が言えることなんて。
+続かない幸せ 終+