拝啓、取引様
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ヤソップさん何着て行くんですか来週のパーティ」
「スーツ」
「・・・いいですね男は簡単で」
「女は大変だなァ」
カラカラと笑うヤソップさんからはまったく大変そうという気持ちは感じられない。
・・・・こっちは大変だっていうのに。
「・・・ほんとに、大変です」
「何だ、もしかしてまだ返事してないのかお前」
「・・・してません」
「さっさとすりゃいいだろうに」
「・・・・・・そうですね」
わかってはいるけど。
私の気持ちはまだ決まってない。
「我が社との協力で素晴らしいものが出来たと思っており・・・」
オーロジャクソン㈱の社長さん、
ゴールDロジャーさんは渋くてカッコイイ人だ。
最初は普通のコメントだったけど、
「存分に楽しもうじゃないか!」
・・・・最後はこの言葉に皆大盛り上がり。
パーティでは、ほとんどがオーロジャクソン㈱の人間だけど、
シャンクスが隣に居てくれてるおかげでアウェー感はあまりない。
「・・・素敵な人だね、社長さん」
「あの人が居なきゃアコと仕事は出来なかっただろうな」
「私挨拶しないと・・・・」
「まだいいだろう、飯食って酒飲んでる時に堅苦しい話はご法度だ」
「そっか・・・・」
じゃあいつ挨拶すればいいんだろう。
「そんなことよりアコ」
「ん?」
「ドレス、似合ってる。綺麗だ」
「・・・有難う。シャンクスも・・・スーツ、素敵」
サラリーマンにしか見えないヤソップさんと違って、シャンクスはよく着こなしている。
何より、ネクタイが。
・・・私が前にプレゼントしたものだから。
恥ずかしいけど嬉しい。
「気合入れたからな」
「・・・それって、この間の隠し事の?」
「まあ、そんなとこだ」
「教えてくれるの?」
実際気になって仕方なかった。
明日発売のケーキのことも気になるけど、
シャンクスの隠し事が何なのか。
「・・・概ね決定したんで話してもいいんだが・・・」
でもシャンクスは何処か迷っているような口ぶり。
「・・・何?」
続きを促せば、
「先にアコの方から聞きたい」
「私のって・・・・・返事?」
心臓を抉るような鋭い視線が返って来た。
「それもあるが・・・あるだろ、隠し事」
「あ・・・・この間の・・・パソコンの?」
「俺の隠し事も話すんだ、アコのも話してもらわなきゃフェアじゃない」
「う・・・・」
「実はずっと気が気じゃなかったが、俺にも隠し事がある以上無理には聞けなかったしな」
・・・私の隠し事。
パソコンで恋愛相談のサイトを閲覧していたこと。
「・・・・ちょっと、相談サイトを」
「相談サイト?何か悩み事か?」
「・・・・まあ、そんなとこ」
「俺には言えない悩み事か?」
「・・・・うん」
言える訳ない。
でもそんな私にシャンクスは、
「じゃあ俺も言わない」
・・・・と来たもんだ。
「え。で、でももう決まってることなんでしょ?私にも関係ある・・・んだよね?」
「ある」
「えええ!?」
「・・・・よし。じゃあ当ててみよう」
驚く私を見てシャンクスが楽しそうに笑った。
「え、でも」
「悩みは・・・甘いモン関係か?」
「・・・違う、よ」
「じゃあダイエット」
「・・・・違う」
「・・・恋愛関係、か」
どくん、と心臓が大きく動いた。
「・・・・・ちが、」
「当たりだな」
ポーカーフェイスを装ったはずなのに、シャンクスに見事に言い当てられた。
「なん、で」
「わかるさ。伊達にアコのこと見ちゃいねェからな」
どくどくどくどく。
徐々に大きくなる心臓の音がうるさい。
「・・・・っ」
「好きな奴が・・・出来たのか?」
ドレスの裾をぎゅっと握って、
小さく首を横に振った。
それが精いっぱいだった。
「じゃあ俺のことか」
これには何も反応出来なかった。
顔を上げたらシャンクスの勝ち誇ったような笑みが見えて。
・・・・怖くなった。
この人は、私のことを知り過ぎてる。
怖い。
「・・・・アコ?」
・・・泣きそう。
ていうか、逃げたい。
そう思った瞬間に手を取られた。
「・・・っ離して」
「悪かった、ふざけ過ぎた」
いいよ、と言える余裕は今ない。
離れない手に心臓が止まりそうだ。
「・・・シャンクス・・・・喉、乾いた」
「・・・何かもらってくる。ここで待っててくれ」
「・・・ん」
そうしてようやく離れた手にほっとした。
それでもまだ心臓の音は大きくて。
・・・シャンクスが戻って来なきゃいいのに、と思った。
それでも動けない私のところへシャンクスは戻って来た。
「お茶で良かったか?」
「・・・ありがと」
お茶を受け取って一口飲んだら、少し落ち着いた。
「・・・約束だ、俺の隠し事を話そう」
「・・・聞かせて」
「まず1つは報告だ。俺は再来月でオーロジャクソン㈱を辞める」
「え・・・・独立?」
「そうだ。もう退職届も出してあるし、次の会社の準備も整ってる」
「そっか・・・おめでとう」
「ああ、有難う。・・・もう1つは謝罪だ」
「・・・謝罪?私に?」
「アコの努力を無駄にした」
「・・・・どういうこと?」
シャンクスは少しだけ言いにくそうに苦笑して、
「株式会社シロップはなくなる」
・・・真面目な顔で、そう言った。
「・・・わかんない、全然」
「俺の会社がアコの会社を吸収する」
「・・・・何それ」
「そちらの責任者とはもう何度も話し合った。他の社員も納得済みだそうだ」
「嘘」
「嘘じゃない。・・・アコには今日まで言わないでくれと俺が頼んだ」
「・・・・そんな」
「怒ってくれていい」
パーティも、合併のことも。
・・・私だけ何も知らなかった。
「・・・っシャンクスのそういうとこ大っ嫌い!」
感情に任せてそう叫んで、
私は会場を出た。
・・・・社長さんに挨拶、
結局出来なかった。
シャンクスへの返事だって、今日しようと思ってたのに。
・・・・・・好きだって。
そんなことをぼんやり考えながら。
+好きだって 終+