拝啓、取引様
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「じゃあ最終的にはこんな感じだな」
「うん、そうだね」
「他に何か問題あるか?」
「今のとこ大丈夫」
「・・・じゃあ、休憩にするか」
「私飲み物買ってくる」
立ち上がって出て行ったアコを見送って、思わずため息が漏れそうになった。
・・・・・アコの様子が変だ。
この間写真を撮ってから、だ。
写真を撮ることが嫌だったのか、と考えたが色々考えてくれていたようだからそれもないだろう。
なら写真の出来が気に食わなかったのかとも思ったが、そんなことでこれ程までに異様になるとも思えない。
あからさまに態度が、違う。
怒っている訳ではなさそうだが、
そっけない。
俺の目を出来るだけ見ないようにしている。
・・・・・・心当たりはない。
「お待たせ、珈琲で良かった?」
「ああ、有難う」
珈琲を受け取って、2人でソファーに座ってみるも、
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
会話はない。
「・・・・・アコ」
「・・・・何?」
何かあったか?と聞きたいところだが、
そのまま聞いても答えてはくれないだろう。
「今日飯にでも行かないか?」
まず食事に誘って反応を窺う。
「・・・ごめん今日約束があるから」
「・・・・そうか」
あくまで目線は下。
一言で言い切った、か。
「なら明日、どうだ?」
「明日は・・・・忙しいから」
「忙しいのか?」
「ヤソップさんの仕事、手伝うから」
「なら俺も手伝う」
「大丈夫、2人で十分だから」
・・・・2人でやるのか。
妻子持ちとはいえ、男と2人きりってのは気分いいもんじゃねェな。
・・・それを言える立場じゃないことは理解してるが。
「あんまり無理はするなよ」
「うん、有難う」
淡々と礼を言ったアコはついに携帯を取り出す始末。
・・・・・ここまで酷いとはな。
俺がよっぽど何かしたか。
口に出すのも嫌だと思う程の、何かを。
そうすると聞くに聞けねェ。
・・・・参ったな。
「じゃあ、お疲れさま」
「ああ、気を付けて帰れよ」
結局何も聞けないまま、アコは会社へと戻って行った。
心当たりがない以上こっちからは動けない。
とはいえ、このまま黙ってる訳にもいかねェ。
「バギー!悪いが早退させてもらう!」
「あぁ?てめェが体調不良ってタマか!?」
「レイリーさんによろしく言っといてくれ」
「ってそれ怒られんの俺・・・・って聞けよ赤髪ィ!」
アコが来る日はやるべきことはだいたい終わらせてるから問題はないはずだ。
荷物をまとめて、
会社を出た。
ちょうどアコの会社の前まで来たところで、
アコの姿を見つけた。
・・・・せめて、誰と飯を食うのかだけでも確認したいとこだ。
アコはそのまま中へ入るのかと思いきや、
会社の前で止まった。
携帯を取り出し、メールを打った様子を見せた数分後、
会社から男が出て来た。
・・・・あれは確か、ヤソップとか言うアコの上司だったな。
待ち合わせしてたのか。
そのまま2人は歩き出した。
っつーことは今日の飯の相手はあの男か。
安心・・・とは言い切れない相手だな。
さて何処まで着いて行くか、と思案していた時だった。
隣を歩くアコの顔が、一気に赤くなったのが見えた。
何を言っているのかまでは聞こえねェ。
・・・・・・・・・このまま掻っ攫って行きてェな。
抱きしめて耳元で、いったいどうしたらそんな顔が見れるんだと聞きたい。
一方、相手の方はニヤニヤしながらアコを見つめている。
沸々と腹の中に湧き上がる黒い感情。
そして1つの疑問が浮かんで、すぐに消した。
・・・・・まさか、な。
アコが妻子持ちの上司を好きになるとは考えにくい。
だがだとしたらあの顔の理由がわからない。
そのうち2人が駅前のファミレスに入ったので、俺も続いた。
席は少し離れたものの、2人の様子は見れる。
2人は食事をしながらもずっと話し続けている。
あの感じからすると雑談、ではないな。
アコが真剣な相談をしてるような雰囲気だ。
対して相手もそこそこ真剣にそれを受けている。
・・・仕事の話し、か?
いくら考えても埒が明かないことはわかってはいるが、考えずにはいられない。
そして数分後、アコを1人残してヤソップは店を出た。
残されたアコは、思い悩んだように俯きながら携帯を取り出す。
・・・・またメールか。
今度は誰だ。
と、俺の携帯が鳴った。
・・・・・俺に?
慌てて携帯を開く。
『急にごめんね、今時間ある?』
『アコならいつでも。どうした?』
すぐに返せば、客席のアコの表情が厳しくなり、
『駅前のファミレスに来てくれませんか?』
・・・・本当なら時間稼ぎでもして行くべきなんだろうな、と思いながら俺は席を立った。
「・・・・シャンクス?」
呆然としたアコの顔が愛おしい。
「え、あれ、え?早くない?」
「偶然、俺もここで飯を食っててな」
「・・・・すっごい偶然」
ああ、そうだな。
本当に偶然なら運命だ。
「それで?何か用があったんだろう?」
「・・・・・あ。あの、座ってもらっても大丈夫?」
「遠慮なく座らせてもらう」
さっきまであの男が座ってた場所に、腰を降ろす。
「・・・・・あの、えっと。さっきまでヤソップさんとご飯食べてたんだけど。あ、ヤソップさん知ってるよね?」
「ああ、知ってる。アコの上司の男だな、妻子持ちの」
「そう、その人。それでその、相談してて。結果シャンクスと話さないとってなって」
今朝までのアコとは大違いの、
俺が良く知るアコの姿。
おおかた俺が予想よりも早く来たんで驚いてるんだろう。
・・・・可愛いな。
「落ち着けアコ。俺は逃げたりしねェから、ゆっくりな」
「あ、うん。・・・・今日のこと、謝らないとと思って」
「今日のこと?」
「・・・・私、シャンクスと目合わさないようにしてたこと。シャンクス気付いてたでしょ?」
「・・・・まぁな」
あれだけあからさまにされれば嫌でも気付く。
「それには理由があって。・・・聞いてくれる?」
「聞くよ」
泣きそうな顔で俺を見つめるアコになるべく優しく答える。
「この間・・・・遊園地行った時から考えてたんだけど、私シャンクスのこと好きかもって」
「・・・それで?」
「でも真剣なシャンクスの気持ちに応える程かって言われると困るし、簡単に好きになったら嫌いになるって言われたし」
そう言って再びアコは俯いた。
「・・・そしたらシャンクスにどんな風に接したらいいかわかんなくなっちゃって」
・・・・なるほど、今日の態度は俺のせいか。
「謝ることはねェさ、俺を意識してくれてんのはいい兆候だ」
「・・・でも、冷たく・・・しちゃったから」
「俺は気にしてない。だから顔をあげてくれアコ」
そこまで言ってようやくアコはゆっくりと顔を上げた。
「・・・シャンクスのこと、本当に好きって言えるまで、もう少し待ってくれる?」
「勿論そのつもりだ」
さっきまでの焦りと黒い感情が消え、
胸に湧き上がるのは甘いもの。
「ごめんね・・・・有難うシャンクス」
アコの何処か安堵したような泣きそうな笑顔にたまらなく抱きしめたくなる。
「礼を言うのはこっちだ、おかげでアコとまた会えた」
「・・・今日も会ったのに」
「仕事で、だろ?」
「・・・そうだけど」
頬を赤く染めたアコはずっと見ていたい程愛おしい。
「そういえばシャンクス同窓会行く?」
「同窓会?」
「あれ、来てなかった?手紙」
「・・・・手紙?」
「同窓会のお知らせ。来月の日曜日」
言われ見てれば昨日か一昨日にそんなものが来ていたような気もするが、
アコのことで頭がいっぱいでそれどころじゃなかったな。
「アコは行くのか?」
「うん、久しぶりに会いたい友達も居るし」
「そうか・・・じゃあ俺も行く」
同窓会で何が起こるかわからねェからな。
「そう?じゃあ楽しみにしてるね」
・・・・・帰ったらまず手紙を確認しないとな。
+新しい展開へ 終+