拝啓、取引様
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「この機械を使えば出来そうじゃない?」
「いいな、そうするか」
「・・・・でも問題は経費だよね」
「うちが何とかする」
「や、さすがにそこまでは」
「いいから、させてくれ」
パッケージ案の練り直し会議中。
全体的なものも少しは変えた。
・・・・金獅子に盗まれたから。
「・・・ほんとに、ありがと」
「元はと言えば俺の責任だからな。今度はしっかり守る。これも・・・アコも」
「・・・・うん、よろしく」
シャンクスは自分のせいだって気にしてるけど、悪いのは絶対金獅子側。
「そういや今日はC社の新作発売日だったな」
「あ。コンビニ行こっか」
「ああ、そうしよう」
こんな事態でも企画をやめたら負けだから、頑張るのだ。
とりあえず他社の商品は要チェック。
すぐ近くにコンビニがあるから、
2人で歩いてコンビニへ。
もうすぐでお店、というところで。
「すみませんねぇ」
お婆さんが困ったように私たちに声をかけてきた。
「どうされました?」
「この本を孫の為にそこまで運ばなきゃならないんです・・・旦那さんのお力を貸してもらえませんかねえ」
ちら、とシャンクスに視線を送るお婆さん。
「行って来てあげて、シャンクス」
「・・・大丈夫か?アコ」
迷うシャンクスの背中を押して、
「うん」
「じゃあ・・・行ってくる。すぐに戻る」
シャンクスを見送った。
その瞬間だった。
いきなり身体を強く引っ張られた。
声を上げる暇もなかった。
「・・・・・っ!!」
気が付けば私の身体は猛スピードで走る車の中。
「また会ったねえベイビーちゃん?」
「・・・私は会いたくなかったです」
・・・・隣に偉そうに座っていたのはシキ。
「つれねーベイビーちゃんも可愛いぜえ」
「下手したら大怪我ですよ、こんなやり方」
「ロジャーんとこのガキじゃ守れねーってことがわかっただろ?」
「そんなことより用件は何でしょうか。早く済まして帰らせて頂きたいのですが」
「その話は会社でじっくりとしようじゃねェかベイビーちゃん・・・ジハハハ!」
どくどくと大きくなる心臓と、
自然と早くなる口調。
・・・シャンクス、どうか無事でいて。
「惚れた女1人守れねー男と結婚して後悔しただろベイビーちゃん」
金獅子に連れてかれた私は、
豪華な応接間に居た。
「シャンクスは悪くありません、不甲斐ないのは私です」
「俺と結婚したくなったんじゃねーのか?ん?」
「なりません。結婚のお話しはお断りさせて頂いたはずです」
軽く睨みつけたら、シキはにや、と怪しく笑った。
「そりゃロジャーに守られてるからだ」
「・・・・どういう意味でしょう」
「職を失った男と結婚してても辛いだけだろう?」
そう言ってシキが私に2枚の紙を見せた。
1枚に書かれていたのは、
『離婚届』
「今日にでもあのガキはロジャーから解雇を言い渡される。・・・そうなればベイビーちゃんの会社も大変だなぁ」
・・・そうされたくなければシャンクスと離婚しろってこと。
そしてもう1枚の紙には、
『婚姻届』
「・・・私にどうしろとおっしゃるんですか」
「ベイビーちゃんがこれにサインして、あいつにこれを書かせりゃ何とかなるかもしれねェぜ?」
・・・・なるほど確かに強引過ぎる。
でも私は、
「せっかくご用意下さったのに申し訳ありませんが私はこれを書くつもりはありませんので」
「・・・・そう頑なになるなよベイビーちゃん」
絶対に受け入れない。
「シャンクスに書かせるつもりもありませんし」
「ジハハハハ!ますます好きになったぜ」
「・・・用がお済みになったら帰らせて下さい」
シキは私の抵抗なんて全然気にしてない風で、
余裕の笑みを浮かべた。
「それは置いておくから、書く気になったらいつでも呼んでくれ、ベイビーちゃん」
「ちょっ、」
・・・・・そのまま、私と2枚の紙だけを置いて立ち去った。
ご丁寧にドアに鍵をかけて。
・・・・失敗した。
でもここは幸い、広い。
テーブルもあれば椅子もあるし。
・・・・・・・窓ガラスもある。
でも一応、
「書く気はありませんが出して下さい」
声をかけてみる。
・・・・・・・・・反応は、ない。
なら、
「えいっ」
近くにあった立派そうな椅子を持ち上げて、
それを窓にぶつけた。
ガッシャーン、と。
それはそれは物凄い良い音がして、
予想通りすぐにドアが開いて、驚いた顔のシキが入って来た。
「・・・・ますます気に入ったぜベイビーちゃん」
割れた窓ガラスを見て笑ったシキに、
「帰りたいと言ってる人間を閉じ込めるのは監禁ですよシキさん。・・・弁償しませんから」
このガラス高そうだけどね!
シキは私を見て、
「この女をガラスのねェ部屋に閉じ込めろ。傷はつけるな、俺の嫁になる女だからなァ」
近くに居た部下らしき男にそう命じた。
私はあっけなくその男に両手を取られた。
・・・・元より力では敵わないから抵抗はしないけど。
「・・・また監禁ですか」
せめて口だけでも抵抗し続ける。
そんな私にシキはまだ余裕の笑みを浮かべたまま、
「ベイビーちゃんが俺と結婚したいと泣きついてくるまで出さねェだけだ」
「・・・それを監禁っていうんですよ」
「じゃあ監禁だな、ジハハハハ!!」
・・・・監禁を認めてなお、
シキは余裕の笑い声を残した。
私はシキの言葉通り、
窓ガラスもテーブルも椅子さえもない部屋に閉じ込められた。
「・・・・・電気もないし」
なるほど。この部屋で精神的に追い詰めようってことか。
この部屋に長時間居たら確かに参るかも。
私は思い切り息を吸い込んで、
「変態!ここから出しなさいよ!!」
叫んでやった。
反応がなくても、
「ジハハハハーとかキモイんですけどー!!」
諦めずに叫び続けてたら、ドアが開いた。
「先に誓いのキスでもするかいベイビーちゃん」
シキが出てきて、ぐ、と顎を掴まれた。
「・・・・・誓わないししませんけど」
・・・・さすがにこれはヤバい、かも。
シキの目が本気だ。
顔が近づいて、もう駄目かも、と思った時。
「監禁容疑に婦女暴行も追加だな、シキ」
ビデオを持ったシャンクスが、来てくれた。
「無職の分際で女を取り返しにきたか」
「無職?いや、俺はオーロジャクソン㈱の社員のままだ」
「何だと?」
「それと、ロジャー社長から伝言だ。あの程度で脅しだと思うなよ、と」
シキの顔が歪んで、
次にどたどたと足音がして、警察が入って来た。
「おいおいお巡りさんよ、俺を逮捕するのかい?証拠もないのに」
一見まだ余裕あるように見えるけど、
シキの顔には焦りが見える。
だから私は、隠し持っていたそれのスイッチを押した。
『ベイビーちゃんが俺と結婚したいと泣きついてくるまで出さねェだけだ』
『・・・それを監禁っていうんですよ』
『じゃあ監禁だな、ジハハハハ!!』
部屋に響き渡る声。
「先ほどお認めになりましたよね?」
「足りないってんならこのビデオもあるぞ」
「・・・・やるじゃねえかロジャーんとこのガキが」
そして、シキは逮捕された。
「本当に何もされてないんだな?」
「うん大丈夫」
私たちも事情聴取されたけど、数時間のもので無事に解放された。
「怪我もしてねェな?」
「大丈夫」
あえて言うなら椅子で窓ガラス割った時に指を少し切ったけど、もう血も止まった。
「間に合って良かった」
「グッドタイミングだったよ、計画通り」
「あんなわかりやすい罠にかかるのも難しいもんだな」
「だねえ」
バギーさんの情報を得て、
私はボイスレコーダーを隠し持っていた。
監禁の時に持ち物チェックがあったら駄目だったけど、幸いにもされないということだったから出来た作戦。
1度シキの誘いを断ったら、2日後に必ず拉致されるとの情報があったから、
あえて罠にはまって私は監禁され、
監禁を認めさせる。
それを証拠として残してシャンクスが警察を連れて来る。
そうすれば警察はシキを逮捕出来るから。
・・・だから私たちは、あのお婆さんが罠だとわかっていた。
お連れさん、ならまだしも旦那さん、って言ってたし。
「本当に有難うねシャンクス」
「俺は何もしてねェよ、頑張ったのはアコだ」
「1人じゃ頑張れなかったし。よし、ご飯行かない?お腹すいた」
「そうだな、飯にするか。乾杯だ」
金獅子の件、これにて一件落着。
+さあ、罠へ 終+