拝啓、取引様
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「これも・・・微妙だよね」
「・・・・だな」
パッケージのイラストが決まらない。
私もいくつか案を出してみてはいるんだけど。
2人で一致する、これ!っていうのがない。
難しいなあ。
「うーん・・・・これとこれを合わせる、とか」
「・・・いまいちスッキリしねェな」
「・・・・だよね」
「A社のやつ見たか?あれは目を引く」
「見た。あれいいよねー。あとC社の新発売のケーキのパッケージ見た?さすがだわー」
他社の良いとこはしっかりチェック済みなんだけどな。
「・・・と言ってても始まらないんだがな」
「どうせならもっとこう、違う!ってのがいい」
「違う?」
「確かにA社のもC社のも目を引くし可愛いかもしれないけど、コンビニのスイーツです!って感じがする」
「なるほどな・・・」
「だから何ていうか・・・難しいんだけどさ」
具体的にどうするっていうアイディアがある訳でもないし。
「アコ、明日時間あるか?」
「明日?・・・・大丈夫だと思う」
「本場に行ってみないか?」
「・・・本場?」
ってまさか、フランス!?
「スィーツのテーマパークあるだろ」
「あ!あるある」
フランスな訳なかった。
でもいいかもしれない。
「研究するってのもいいんじゃねェか?」
「いいね!でもあそこちょっと遠くない?」
「俺が車出すさ」
「ほんと?助かるー」
この時の私は、軽く考えていた。
仕事のことしか考えてなかった。
これでこのパッケージラビリンスから抜け出せるかも、って。
・・・・・甘かったよ。
シャンクスが会社まで迎えに来てくれるってことで、指定の場所で待っていた。
・・・・・目の前についたのは、
「・・・・ポルシェ?」
だよねコレ。
うっわ、高そう。
・・・・じゃなくて。
「どうしたアコ?」
運転席から顔を出したのは、
想像通りのシャンクス。
うわーおだよ。
「乗らないのか?」
「・・・あ、ごめん」
まず最初の問題に気付く。
自然に開けられたドアに自然に乗り込んじゃったけど。
・・・・・密室で、シャンクスと2人きりだということに。
そして助手席に乗ってしまったせいで、
距離が近くて。
戸惑う。
「仕事だといいな、駐車場代も飲食の金も会社から出る」
ポルシェに乗る人が何言ってるんですか。
思わずそうツッコミそうになった。
「あはは・・・いっぱい食べよーね」
苦笑した私の膝にそっと手が置かれた。
「しゃっ、シャンクス!」
「問題ない。安全運転だ」
第2の問題。
逃げ場がないこと。
・・・まあ、シャンクスだから嫌って言えばやめてくれるだろうけど。
「そういう問題じゃないんだけどね・・・」
「嫌ならやめるが」
ほら、ね。
前を見たまましれっと言うから、
今のシャンクスの心境はわからないけど。
「・・・くすぐったいから嫌」
「わかった」
あっさりと引いた手にほっとする。
でも、
「そうか、アコの弱点は膝か」
とすぐに笑う。
「いや弱点ていう訳じゃないけど」
「そういや前に膝枕してもらったな。気持ち良かった」
「今のは不意打ち過ぎだし・・・」
「不意打ちじゃねェと意味がないからな」
「・・・・・私不意打ちに弱いから。リアルに」
「ほう、そりゃいいことを知った」
「ときめきの意味じゃなくてね」
「似たようなもんだろ」
「寿命が縮まるからやめて」
第3の問題。
車は走り続ける。
・・・・ちょっと遠いから、時間が長い。
会話が途切れる瞬間が気まずい。
でも運転してるシャンクスの横顔を見たら、
何処か嬉しそうな笑みを浮かべてたから。
・・・・まあいっか、と少しだけ思えた。
「あ、もうすぐ着くね」
「・・・・来たことあるのか?」
「うん。出来てちょっとあとに友達と」
「その時の印象は?」
「人が多くて落ち着いて食べられなかった」
「オープンした頃はテレビでだいぶ話題になってたからな」
今はもう落ち着いてると思うけど。
「あ、そこ左折」
「了解」
で、無事に到着。
車から降りた時肩の力が抜けた気がした。
「さすがに人も少ないね」
「平日だしな。何処か入るか?」
「メニューの写真見たいしね。行こっか」
たくさんお店は並んでるけど、とりあえず目の止まった1店舗に入ることに。
「・・・カラフル過ぎても目がチカチカするってことがわかったかも」
「しかし美味そうだな」
「だねえ。定番ものから季節のケーキ、和風のもあるね」
うん、確かに美味しそう。
「適当に3つくらい頼んでみるか」
「じゃあ定番と季節ものと和風のにしない?」
「そうだな」
ってことで3つのジャンルから適当に選んで。
再びメニューを凝視。
「斜め上から撮ってる写真多いね」
「写真が大きくても実物見えなかったら意味がないからな・・・」」
「でもお店の雰囲気から何か掴めそう」
「まあ、まずは食ってみよう」
「だね」
で、そんなことを話してるうちに注文した3品が到着。
「あ、サイズ小さめ」
「店舗がたくさんあるからな、他も回れるようにしてあるんだろう」
「なるほど」
疑問が解けたところで改めて食べようとしたら、
「アコ」
名前を呼ばれた。
「ん、何?」
「せっかくだからやってみないか?」
「・・・・何を?」
「デートの定番」
にっこり笑ったシャンクスが目線で示した先には、
「はい、あーん」
「あーん」
・・・・・とかやってるカップル。
「・・・今日は仕事だと思ってたんだけど」
「ならテーマを変えよう。恋人に食べさせたいスイーツっていうんでどうだ?」
おいおい、と思ったけどそのテーマは悪くないかも。
「ならやってみるのも仕事のうちだと思わないか?」
「思わない。でもテーマを変えるのはいいね。すべての恋する人へ、とか」
「いいな、それにしよう」
「でも肝心のパッケージがねー」
「焦ることねェさ。ほら、美味いぞ」
「んー・・・・・あのさ、酷いこと聞いていい?」
「・・・・条件次第」
「条件?何?」
「デートの定番、やってくれ」
「・・・・やるの?」
「あァ、それが条件だ」
うーん、でもまあいっか。
ちょっと考えたけど、
「シャンクスの・・・私への気持ちってどんな感じ?」
聞いてみることにした。
するとシャンクスはまっすぐ前、つまり私の後ろを指した。
「・・・・・あれ?」
「あんな感じだ」
シャンクスが指したのはお店に飾られた絵。
色鉛筆で描かれた虹。
「・・・・そっかぁ。・・・・いいかも」
「アコ?」
「あ、ごめんね。パッケージのいいアイディア思い浮かんだ」
「俺のおかげか?」
「・・・・うん」
「そりゃ何よりだ」
よし、忘れないようにしよう。
「じゃあ、えっと・・・・はい」
仕方なくケーキを掬って、シャンクスの口元に運んだ。
「ん」
シャンクスは満足そうに笑って口を開ける。
そこに、放り込んだ。
「美味いな。やっぱり味が違う」
嬉しそうなシャンクスを見るのは私も嬉しい。
・・・・恥ずかしいけど。
「・・・ありがとね、シャンクス」
仕事の為にシャンクスの気持ちを利用してる私を、大事にしてくれてる。
「礼を言うのはこっちだ・・・というか謝るべきか」
「・・・何で?」
「仕事にかこつけてアコの側に居る」
「それ私も思ってる」
「そうか?・・・・じゃあ、似たもの夫婦ってことだな」
「・・・・夫婦じゃないけどね」
帰りもシャンクスの車に乗せてもらった。
でもいろんな疲れが出てきて眠くなった私に、
「寝てていいぞ」
天使の声。
お言葉に甘えて目を閉じて、
少ししたら唇に何かが、触れた気がした。
+仕事かデートか 終+