拝啓、取引様
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「ネクタイ贈ったり口紅もらったり、ってもう恋人同士みてーなもんじゃねぇか」
「・・・・ネクタイは会社のお金で買いましたけどね。領収書提出しましたよ」
「色気ねーなぁ」
「仕事しましょうヤソップさん」
「俺は真面目にしてるぜ?」
「・・・・シャンクスから電話来たの教えてくれなかったのは何処のどなたでしたっけ」
ぼそっと呟いたらヤソップさんが肩をぴくりと上げた。
「・・・いや、それはだな。お前さんを喜ばせてやろうと」
「ヤソップさん」
「・・・悪かった。んで、お前ら今何やってたんだったっけか」
・・・・上手く誤魔化されてるような気がしなくもないけど、
まあいっか。
「社運をかけた大事な企画なのに・・・前にも少し説明しましたけど」
「俺も忙しいからよ、な?」
「スイーツです」
「スイーツ?」
「昨今のスイーツ流行に乗っかって、新しいスイーツを開発してるんです今」
「ああ、そうだっけか」
「オーロジャクソンはお弁当やおにぎりでコンビニにツテがありますが、スイーツに手を出してません」
大手スーパーやコンビニにツテのあるオーロジャクソン㈱。
だからオーロジャクソンがスイーツを出したとなれば話題にもなる。
そして、無名だけども地道なファンが居る(実は)和菓子メーカーのうちが、
協力して作れば間違いなく売れる、という話。
・・・・まあ、向こうからすればうちの力なんか借りなくても売れるし話題にもなるだろうから。
だから本当はうちと協力する必要はなかった。
・・・・だからシャンクスには感謝してる。
すごく。
でも・・・シャンクスとキス。
それが頭をぐるぐる。
「甘い菓子に甘い恋、ってか」
「・・・・甘いだけが恋ならこれは恋じゃないです」
だってこんなに悩んでて、
こんなに苦しいのに。
反省してねェだろう、と言われりゃ否とは言えねェ。
口紅を贈ればアコがどんな反応するかはわかっていたから、
あえて買った。
もしダメでも、喜んでくれんならそれでいい。
・・・次のデートが、楽しみだ。
・・・・・・・・・・・で、
「・・・・緊張しすぎだな、アコ」
「う・・・・だって」
待ち合わせにやって来たアコの異様なこと。
顔が固いのは勿論、
歩き方もぎこちないし、
意識が飛び過ぎてるのが見える。
・・・・まあ、これはいい傾向だと思っておくか。
俺のことを意識してるいい証拠だ。
残念ながら例の口紅はつけていないようだったが、
気にはしねェ。
「好きな動物は?」
「・・・・アルパカ」
家族連れやカップルの多い動物園。
動物は嫌いじゃないあらしいから、
見てるうちに緊張もほぐれるだろう。
「アルパカは・・・・奥の方だな。順番すっ飛ばして行ってみるか?」
「・・・順番に見る」
遠慮がちに主張する姿に少し効果ありすぎたかと苦笑しながら、
アコの手を取った。
「じゃあ行こう」
その瞬間アコの身体が面白いくらいに跳ねた。
・・・・重症だなこりゃ。
まあ手を離す気はねェが。
「・・・アコ、少し休まないか?」
「え、だってまた来たばっかりだよ?」
「あれが食いたい」
入園してすぐにあった売店。
椅子も空いてるし、ちょうどいい。
「・・・・・あれ?」
目をまんまるにして『あれ』を見るアコ。
可愛いなー。
「アルパカソフトもあるみてェだな」
「食べる!」
繋いだ手の力が一気に抜けたのがわかった。
看板にあった、アルパカソフトの文字。
やっぱアコには食い物が1番だ。
「アルパカソフト下さいっ!」
意気揚々と売店のおばちゃんに注文するアコの顔にもう緊張はない。
「ウサ男ソフト1つ」
「・・・・シャンクスが・・・・うさぎ」
「美味そうだろ?」
「・・・っていうか、可愛すぎ・・・あははっ」
はじけたように笑うアコにほっとした。
緊張してるより笑ってる顔の方がいいな、アコは。
空いてたベンチに座って、
「・・・これはいらないってことだな、アコ」
「とってもよくお似合いです」
それからアコは、何処から食べてやろうか、ふはははー!と楽しそうにアイスに夢中。
・・・アイスにさえ嫉妬しそうになる。
俺も融けないうちに食っちまうか。
「痛いよー」
「ん?」
「僕を食べないでおくれよぅー耳を取らないでおくれよぅ」
・・・・ビスケットで出来た耳を取った俺を見てアコがにやにやしている。
そう来るか。なら俺も反撃だ。
「じゃあ食わないでおくか。その代りアコを食わせてもらうぞ?」
空いている手でそっとアコの頬に手を当てて顔を近づけたら、
一瞬で顔が真っ赤になった。
「・・・・ごゆっくりお召し上がり下さい」
小さい声で呟くアコに笑みが零れる。
「アコを?」
「ち、ちがっ!!・・・・アイス」
慌てるアコが可愛くて、また調子に乗っちまう。
「俺より先にアルパカとキスしたのか、アコ」
アコの手元にあったアルパカソフトは、
口として存在していたクッキーがなくなっていた。
「・・・・・・・・・・っ、ごめん、てば」
震えた声で泣きそうなアコを見て、
さすがにここで止めることにする。
「・・・悪かった、いじめすぎたな」
「・・・・・・もうシャンクスとデートしない」
ガン、と頭に衝撃。
「・・・・・っそれは・・・効くな」
・・・・やり過ぎた。
仕事で会えるとはいえ、2人きりになれるチャンスはそうはない。
「嘘・・・・する」
・・・・っ、今すぐにでも抱きしめたくなる。
「・・・・嬉しいよ、アコ」
また緊張させちまったかと心配したが、
「・・・美味しかった、アイス」
えへ、と笑う姿に安堵した。
早く・・・・俺のものにしたい。
「これだけ首長いと首凝り大変そうだよね」
「マッサージ料金割り増しだな」
「さすがにライオンは迫力があるね・・・」
「見応えがあるなァ」
「あ、アルパカ!」
肩の力も抜けたアコは学生の頃を思わせる。
それでもたまに繋がれた手を意識していることは明らかで、それだけでも満足するべきだろうな今日は。
・・・そう、思っていた。
「お手洗いに行ってくるね」
と言って、戻って来たアコの唇の色に驚いた。
・・・・口紅を、つけている。
「・・・・・アコ」
「・・・・・・え、っと」
「・・・・確認するが・・・つけてる、な?」
俺の質問にアコは真っ赤な顔で俯いて、
「・・・・つけてる。でも・・あのね?シャンクスのこと好きかはまだわかんなくて」
でも、つけた。
それはすなわち、
「・・・けど、キス・・・してみたいって思った、から」
・・・・キス出来る。
何でもいい、出来るなら。
「ここで・・・はダメだな」
さすがに人目があったので、
トイレの影に連れ込んで、
アコを壁に押さえつけた。
「・・・いいんだな、アコ」
今すぐしたいのを抑えて最後の確認。
ゆっくりとアコが頷いたのを見て、
すぐに唇を押し付けた。
重なった唇から漏れる吐息。
ずっと、したかったキスは、
柔らかくて、
「・・・・・・・・甘い」
最高に甘い。
+甘いの甘くないのって 終+