拝啓、取引様
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「ヤソップさーん、これチェックお願いします」
「あいよー」
ヤソップさんに書類を渡して席に戻ろうとしたら、
「今日は行くのか?」
「あ、はい。今日は行きますー」
声をかけられた。
行くのか、というのはシャンクスの所のことだろう。
「・・・お前らどうなってんだ?」
「今のとこ・・・ぼちぼち、ですかねえ」
「ほーう」
「コンセプトとかは決まってるんですけど、材料とか費用とか考えるとなかなか進まなくて」
何回か話し合いを進めてはいるけど、
何せ2人しかいないし、
アイディアもあまり浮かばず進んでないのが現実。
もう1人くらい増やしたいけど私と2人で、っていうのがシャンクスの提示した条件だし。
「・・・・いや、そういうことじゃなくてよ」
「え?違うんですか?」
「お前ら付き合ってんのか、って話だよ」
「は!?」
突然のヤソップさんの話題に驚きを隠せない。
「しゃ・・・シャンクスとはそういう関係じゃないですよ」
「でも相手さんは気があるんだろ?」
「・・・・・・・ですけど」
「お前だったからこの企画も引き受けてくれた訳だ」
「・・・・・・・・たぶん」
「そろそろ進展ねェのかよ」
「進展・・・って言われましても」
デートはしたけど・・・。
手・・・繋いだけど。
・・・・・・・何か思い出したら恥ずかしくなってきた。
「あるみたいだなー?」
急にヤソップさんがにやにやしてきた。
「・・・っないです!」
「顔赤ェぞー」
「いいからさっさとチェック終わらせて下さい」
「おー怖ェ」
「株式会社シロップですが」
「はい、お待ち下さいませ」
受付を済ませて、
シャンクス待ち。
・・・・・ヤソップさんのせいで少しドキドキしてる。
ただでさえ今、シャンクスのこと気になってるのに。
いや、でもここでは仕事に集中!
いつものようにソファーに座って待っていると、
「今は仕事中のはずだ」
・・・・シャンクスの声。
ちら、と声のほうを見てみる。
・・・・冷たい目のシャンクスと、
そんなシャンクスを縋るように追いかける女性。
すると、
パァン!!
驚く程の音。
女性が、シャンクスの頬を叩いた音、だ。
「その気がないなら紛らわしいことしないで!」
泣きながら叫んで、
逃げるように去って行った。
・・・・・うわあ。
修羅場・・・・だ。
どうしよう。
見なかったことにして帰りたい。
せめて他の場所に・・・!
なんて私の結構切実な願いは叶うことなく、
「あ」
「・・・・情けないとこ見せちまったな」
シャンクスと思い切り目が合った。
「・・・・お疲れ様」
情けないのは私だ。
こんな言葉しか、かけられないなんて。
「じゃあ、会議室・・・・行くか」
「あ、うん。・・・よろしく」
何だかいろんなことが脳裏を過って、
シャンクスと目合わせられなくて、
ひたすら前を見てたらそっと腰に手が添えられて体が跳ねた。
「ひゃっ・・・!?」
「・・・・悪い」
驚いた私にシャンクスは苦笑して、
すぐに手を離した。
び・・・・びっくりした。
会議室に入って、
「で、今日はこのあたりを先に決めて行こうって話だったな」
「うん、それなんだけど・・・」
「何かアイディアあるか?」
「パッケージはやっぱり専門家に頼んだ方が」
口にした瞬間、
「駄目だ」
即答で拒否。
「でも、こればっかりは・・・・さ」
「アコと2人でやるという条件で俺は呑んだはずだが」
「そう・・・だけど」
「第三者が介入するなら俺はこの企画を降りさせてもらう」
何処か怒ってるようなシャンクスの口調にちょっと落ち込む。
・・・・・わかってたけどさ。
「・・・・ごめん」
「いや・・・少しきくつ言い過ぎちまったな。すまん」
「ううん、約束だもんね。ちゃんと、守るから」
「ああ・・・」
何となく気まずい雰囲気。
ふと見たら、シャンクスの頬が少し赤くなってることに気づいて、
「ほっぺ・・・・大丈夫?」
「・・・ああ、大丈夫だ」
「少し赤くなってる」
「後で冷やしておくさ」
「・・・・ちょっと待ってて?」
シャンクスにそう言い残して、
私は一旦会議室を出た。
そしてお手洗いに行って、
ハンカチを濡らした。
ぎゅっと固く絞って、再び会議室へ。
「お待たせ。はい、これ」
戻ってすぐシャンクスの頬に、濡らしたハンカチを当てた。
「気持ちいい。助かるよ」
「今日1日出来るだけ当ててた方がいいかも。それ、あげるから」
「いいのか?」
「うん。私もハンカチもらったし。・・・値段が違うけど」
シャンクスのハンカチはブランド物。
私のハンカチは普通の雑貨店で買った安物(しかもセール)。
「・・・・って、やめといた方がいいかな」
「何か問題あるか?」
「・・・・だって、花柄だよ?」
紫を基調としたものだから派手ではないけど、
男性は絶対に持ってないもの。
「俺は気にしねェから問題ない」
・・・・気にしなさすぎでは。
何となくその瞬間、さっきの女性のことを思い出してしまった。
「でも・・・ほら、女の人に見られたら」
「アコ・・・さっきのことなら、誤解だ」
ドキッとした。
「や、でも」
「俺が好きなのはアコだけだ。・・・信じられないか?」
「そういうんじゃ、なくて。その・・・そういう趣味の人だって思われるよ?」
「言っただろう?アコ以外の女に何思われても構やしねェさ」
淡々と語るシャンクスに、
湧いてくる疑問。
「・・・・聞いてもいい?」
「何でも聞いてくれ」
「・・・・シャンクス、あの人に勘違いさせるようなことしたの?」
あの人は、
『その気がないなら紛らわしいことしないで!』
そう言ったから。
シャンクスはどんなことをしてたんだろうと思った。
「これといって何かした覚えはねェな」
・・・・嘘だよ。
きっとシャンクスは皆に優しいから。
それで、勘違いしちゃったんだ。
そしてきっと、
他にもシャンクスのことを好きな女性は居ると思う。
「・・・・そっか」
「アコ?」
優しくしないで。
・・・・ふとそんな言葉が湧いてきて、
驚いた。
・・・・あれ、おかしいな。
別にシャンクスが誰にどうしようと私は別に。
・・・・うん、別にいいじゃないか。
「頑張って・・・・ね」
「・・・・・アコ」
「あ、じゃあ私パッケージデザイン書いてくるね!」
「・・・ヤキモチだと思っていいのか?」
シャンクスの頬に当てていた手に、
シャンクスの手が、重なった。
「・・・・っ!」
頭に血が上るような感覚。
「そんなの聞かないでよ!」
私は初めて、
シャンクスの手を撥ね退けた。
そして、
「ごめん今日帰る・・・・っ」
急いで鞄をとって、
会議室を出た。
上手く、進まないもんだなあ。
いろいろ。
+進まない 終+