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「駄目かも」
そう言ったアコに驚いたものの、
冷静に考える。
話しがある、というんで俺の告白への返事かと思ったが、
真面目なアコが仕事中に話すこととは思えなかった。
駄目、というのは会社のことだとわかって内心ほっとしたが。
定期的に会えなくなるのは問題だが、
連絡先もわかってる今、
会うだけならいつでも出来る。
・・・・・・・・・だから、別段俺がどうすることもないだろうと思っていた。
「シャンクス忙しいのに・・・無駄な時間、とらせちゃったし、・・・・あー!!ごめんもうっ!!」
叫びながら泣くアコを見るまでは。
これから自分がどうなるかわからないって時に俺の心配、とはな。
まったく、変わらねェもんだ。
諦めないと言う姿勢も。
俺の心を動かすには十分だ。
アコを送ったその足で、
俺はとある場所に向かった。
「シャンクスが・・・助けてくれたの?」
翌日困惑した様子のアコの目の下には隈が見えた。
徹夜して何とかしようと頑張ってた、ってとこか。
俺もやるだけのことはしたが、結果はどうなってるかわからない。
アコの口からは、
「大丈夫になった」
この言葉に内心ほっとした。
俺を『ヒーロー』だとアコが言うなら、
今はまだヒーローのままでいてやることにするか。
「あ」
鞄の中にあった男物のハンカチに、
思わず声が出た。
「あー・・・・・・そうだった」
これ、シャンクスのハンカチだ。
泣いた私に貸してくれて、借りたままだった。
しかもブランドのハンカチ。
・・・・・洗濯機で洗濯、じゃ駄目かな。
クリーニング、出した方がいいのかな。
告白の返事も・・・いつまでも待たせる訳にはいかない、よね。
シャンクスの優しさに、好意にいつまでも甘えてる訳にはいかない。
あ、そういえば今日シャンクスとお昼ご飯食べる約束してるんだっけ。
社員食堂は混むから弁当か何か持ってきておいた方がいいって言われた。
簡単におかずを作って詰め込んで、
「・・・・・行って来ます!」
誰も居ない部屋に気合いを入れて叫んだ。
よっし、今日も色々大変そうだけど無事に終わりますように!
「・・・・・・これ、うちの上司から」
どん、と会議室のテーブルに置いたお酒。
「・・・・・・ほォ、こりゃいい酒だ。いいのか?」
「会社からの御礼だって」
「有り難くもらっておく」
「本当は私からも何かお礼したいんだけど・・・・」
「いや、この酒で十分だ」
・・・ってシャンクスは言うけどさ。
「ハンカチも・・・借りっぱなしだし」
「持ってていいぞ?」
あっさりと言い放ったシャンクスに慌てて、
「とんでもない!洗って返すよ。・・・でも、その、洗濯機でも・・・・大丈夫?」
「何でもいいさ」
「・・・・・でも、助けてもらってばっかりで」
私、何もしてなくて。
「言っただろう?俺にもメリットはある。それに膝枕してもらったしな」
なのにシャンクスは・・・いつもこうして笑ってくれる。
告白の返事だって、してないのに。
「して欲しいことあったら、言ってね・・・!」
出来る限りで答えるから!
「じゃあまた今度デートしてくれ」
「勿論です!」
「よし。じゃあ、仕事に取り掛かるか」
「はいっ」
・・・・・何となく、告白の返事も出来ないまま仕事の話しになって。
ああ、今言うタイミングだったのになあと悔やみながらもそのまま話し合いになってしまった。
でも仕事になったからには集中するもので、
気がつけば数時間経過。
「・・・・・・・・よし、そろそろ飯にするか」
「あ、そうだね」
あっという間にお昼の時間。
私は鞄から今朝ささっと作ったお弁当と自販機で買ったお茶を取り出した。
シャンクスは・・・・・・。
「え・・・・・・」
「どうかしたか?」
「シャンクスお昼それ?」
「ああ、結構美味いぞ」
シャンクスはカップ麺に、コンビニのおにぎり。
・・・・・・・・・・・超大手会社の重役社員で、高級料亭に行ってる人のお昼とは思えない。
「いつもそんな感じ?」
「まあ、似たようなモンだな」
少し安心したのと同時に、
心配になった。
「・・・・・・・・今度お昼一緒に食べる時さ、お弁当、作ってこようか?」
「・・・・・いいのか?」
「だって健康心配だし・・・・お礼にもならないかもしれないけど」
「いや、助かる。楽しみだ」
本当に嬉しそうにシャンクスが笑うから、胸が締め付けられた。
「あ・・・・・・・・・・あのね」
言わないと、と思うのに。
何て言ったらいいかわからない。
返事、決まってない。
でも・・・・今日は何かしら言うって決めてきたから。
シャンクスの為にも。
自分の、為にも。
「その・・・・・この間の、返事・・・・だけど」
ドキドキとうるさい心臓を押さえつけて、
さあ、と思った時。
「まだ決まってないんだろ?」
「へ?」
まさしく言い当てられて驚いた。
「その顔は図星、だな?」
「・・・・・・・・・・なんでわかったの?」
「ずっと見てきたからな。わかるさ」
「・・・そ、っかぁ」
そっかそっか、ええとじゃあどうしよう!?
「急かすつもりはねェんだ、気長に考えてくれりゃいい」
「・・・・・・・・ん」
また、シャンクスは優しい。
「それより弁当、楽しみにしてるから」
頼むな、と私を見つめるシャンクスに、
ドキドキがしばらく止まらなかった。
+ドキドキ 終+