拝啓、取引様
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「ヤソップさーん私今日午後から取引先行ってきますねー」
それはいつものように出勤して、
いつものようにヤソップさんに話しかけた時のこと。
「・・・・・・・・・・・おう」
「・・・・・・ヤソップさん?」
ヤソップさんの表情が妙に暗くて、
あれ、と思った。
「よーく謝っておけ」
「・・・・・・・・誰に?」
「その取引先に、だ」
「・・・・・・・・・・何でですか?」
うちの会社は何か謝らなきゃいけないことをしたんだろうか。
いや、そもそも私の無茶な企画を通してくれたことは申し訳ないと思うし感謝もしてるけど。
ヤソップさんは深いため息を吐いてから、
「とある会社に圧力をかけられてな。・・・・・・悪かったなぁ、せっかく起死回生の企画やってるのに」
「・・・・・・・・・・え」
「ま、お前は若いから今からでも何とかなるだろ」
あっけらかんと笑うヤソップさんに、
笑うことすら出来ない私。
泣くどころか頭真っ白で、
言葉すら出てこない。
・・・・・・・・・せっかく、
シャンクスに協力してもらって立て直せそうだったのに。
どうしよう、どうしたら。
「ほん、とに・・・・本当にもうどうにもならないんですか!?」
「悔しいが無理だ」
「絶対!?」
「絶対。・・・お前はよくやってくれたよ」
それ以上、私は何も言えなかった。
「株式会社シロップの者ですが・・・」
「はい、お待ち下さいませ」
もう見慣れた受付のお姉さんは優しくて。
シャンクスはすぐに来てくれた。
・・・・・・・・・・・重い。
めっちゃ気が重い。
初めて来た時以上に。
「じゃあいつもの会議室、行くか」
「あ・・・・・・うん」
いつ言おう。
どんな風に説明したらいいんだろう。
考えただけで泣きそう。
まだまだ、これからだったのにな。
私が考えた企画の実現。
最初は首を繋げる為のものだったけど、
シャンクスとの話しを広げていくうちに楽しくなった。
これが実現する日が楽しみだった。
「今日はこのあたりを決めていくか。・・・・・アコ?」
「・・・・・シャンクスに、謝らないといけないことが、あって」
「・・・・・聞こう」
シャンクスは姿勢を直して私が話しやすいようにしてくれた。
「せっかくシャンクスが受け入れてくれたのに・・・・、もう駄目で」
「駄目?」
「他の会社から圧力かけられて、早くて今月いっぱいで・・・・」
駄目、なんだって。
「・・・・・・・・・・・そう、か」
「私は最後まで頑張ってみるけど、たぶん駄目だと思う」
私1人の力でどうにかなるようなことじゃないことはわかってる。
「相手の会社は?」
「株式会社Z、ってとこ」
「・・・・・・・なるほどな」
私は初めて聞く名前だったんだけど、
シャンクスは思い当たるらしい。
「・・・知ってるとこ?」
「裏の世界では有名な会社だな。アコの会社が標的にされたか・・・・」
「・・・・・・・ごめんね。せっかくここまで来たのに」
「いや、大変だな・・・これから」
「ほんとに・・・・ごめっ、ごめん・・・ね・・・!」
ぼろぼろ涙が落ちてきて、
「・・・・アコ」
「シャンクス忙しいのに・・・無駄な時間、とらせちゃったし、・・・・あー!!ごめんもうっ!!」
袖でごしごしと涙をふき取って、
私本当に社会人失格だなと思う。
「・・・・・アコ、ほら」
見かねたシャンクスがハンカチをくれて、
そしたらますます涙が溢れてきた。
「・・・・・・・っ、ぅ・・・っありがとぉっ・・・!!」
悔しい。
悔しくて苦しくて、
たまらない。
そっと肩に触れた腕。
そのまま優しく抱きしめられた。
「大丈夫だ、アコ。落ち着け」
「・・・ぜったい、無理でもっ、最後まで頑張るから私!!」
「・・・・・・・ああ」
泣き止んだ私をシャンクスはうちの会社の前まで送ってくれて、
状況が変わったら報告してくれ、と言って別れた。
諦めムード全開の会社で、
私はその日徹夜で株式会社Zのことを調べた。
絶対無理でも、
絶対駄目でも、
最後まで屈服なんかしてやんない。
この会社が好きだから。
「んん・・・・!!」
パソコンの画面とにらめっこしながら、
弱点弱点・・・相手の弱点を探す。
絶対何かしらある。そこを叩けば助かるかもしれない。
弱点、弱点・・・・じゃくてん、じゃく、てん・・・・・・を。
「・・・・・・・・・・・は!」
がばっと顔を上げた。
・・・・・寝てた!!
・・・・・・・・たいして情報集められなかった。
さすが裏の世界で暗躍する会社。
いやいや、負けないぞこんちくしょう。
「・・・・・・あ、れ」
ふと目の前の袋に気づいた。
中に入ってたのはお菓子と、飲み物。
そして、
『ほどほどにな! ヤソップ』
のメモ。
お菓子を口に入れたら、また涙が出た。
・・・・・・・・まだまだ、頑張る。
気合いを入れて再びパソコンに向かったら電話が鳴った。
「はいー株式会社シロップですー」
『ヤソップだ』
「あ、ヤソップさん差し入れ有り難う御座いましたー今朝ご飯代わりに食べてま・・・・え?」
ヤソップさんから、衝撃の発言があった。
「・・・・・・・・・えええええ!?」
私はただ呆然とするしかなくて。
・・・・・・・私はただ、呆然とオーロジャクソン㈱の前に立ち尽くしている。
来ちゃった・・・・。
約束も何も、してないけど。
えーと。
あ、とりあえず受け付けか。
「・・・・・・・・あ、」
受付に行こうとしたらちょうどシャンクスの姿が見えた。
シャンクスもこっちに気づいてくれて、
「アコ」
ただ立ち尽くす私のとこまで来てくれた。
「・・・・顔、ひどいな。大丈夫か?」
「え、あ。・・・・ひどい?」
「あ、いや・・・・すまん。疲れてるって意味だ」
「ううん、大丈夫。・・・・あ、えーっと。なんか、大丈夫になった」
「大丈夫になった?」
「会社。圧力、なくなったって。続けられるって・・・企画も」
「そうか!良かったなァ」
シャンクスは満面の笑みで喜んでくれて。
「・・・・・・・シャンクス?」
「ん?」
「シャンクスが・・・助けてくれたの?」
ヤソップさんはただ、首が繋がったとしか言わなかった。
ヤソップさんがやってくれたんですか、って聞いたら俺にはそんな力ねェよって笑ってた。
だから、考えられるのはシャンクスしかいない。
「たいしたことはしてねェよ。だが、良かった」
・・・・・シャンクスの会社にとって決して良い企画じゃない。
1度決まった倒産がなくなるなんて、
ものすっごい大変なことに決まってる。
なのに、
そんなさらっと・・・・シャンクスは。
「・・・・・・ほんとに、ほんっとに、有り難うシャンクス・・・・!」
シャンクスの胸に頭を預けて、
少しだけ泣いた。
シャンクスはやっぱり抱きしめてくれて。
やっぱり私の、ヒーローだ。
+やっぱり 終+