拝啓、取引様
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「あ、お世話になりますー株式会社シロップの者ですが・・・」
「はい、少々お待ち下さいませ」
もう何度目かの、オーロジャクソン㈱。
シャンクスとの会議。
シャンクスも忙しいのか、今日は時間がかかりそう。
ロビーでお待ち下さい、と言われて、
ふっかふかのソファーに座って待つことにした。
・・・・・・・・緊張するなぁ。
何となく待っていると、
女性社員の声が聞こえてきた。
「ねぇ知ってる?シャンクス先輩の話し」
「えー何?」
「取引先の女の子達に片っ端から手出しまくってるって」
「うっそ、最悪」
・・・・・・・・・・・シャンクス、って名前に思わず反応して聞き耳たてちゃったけど。
聞きたくなかった、なあ。
うーん。
「アコ、すまん」
「あ・・・」
「待たせて悪かった・・・・・アコ?」
「へ?」
「何かあったか?」
何と言うタイミング。
突然現れたシャンクスに私は言葉を失った。
えーとえーと、何か言わないと。
「しゃ・・・シャンクス忙しそうだなって思って」
「色々重なっててな・・・・まあ、大丈夫だ」
「・・・・・・・そっか」
「アコ?」
「あ。えーと、会議室使わせてもらってもいいかな」
「・・・・余計な仕事増やして申し訳ないと思ってるな?」
ぎくり。
ちょっと・・・・思った。
「・・・・・・・・ちょっとだけ」
「心配しなくていい。俺にもちゃんとメリットはある」
「そう?」
ならいいんだけど。
思いながら2人で入った会議室。
「こうしてアコと2人きりになれる」
「仕事でも?」
「仕事でもいい。チャンスだ」
不敵に笑うシャンクスは大人だけど、
・・・・・・・でも高校の頃と変わってないと思う。
『取引先の女の子達に片っ端から手出しまくってるって』
・・・・・・信じられない。
信じたくないだけかなあ。
「・・・・・・・・・・アコ?」
「あ、はい」
「具合でも悪いのか?」
「・・・・・ううん、平気」
もう気にしないようにしようと思って、
笑ってみせたら、
「熱は・・・・なさそうだな」
ぴと、と額に当てられたシャンクスの手。
近づく顔は真剣で。
本当に心配してくれてるのがわかる。
・・・・うん、信じよう。
「有り難う、シャンクス」
「無理してないか?」
「してないしてない、ただ寝不足なだけ」
「寝不足?」
「寝る前まではすっごく眠かったのに、布団に入った途端ぱっちりっていう」
「ああ、よくあるな」
「でしょ?でも大丈夫、仕事はちゃんとする」
「・・・・・・なあ、アコ」
「ん?」
シャンクスは私を見てにんまりと笑った。
「実は俺も寝不足なんだ」
「あ、そうなの?」
「あァ。だから一緒に寝ないか?」
「・・・・・・・・・・・・は?」
あんまりシャンクスがさらりと言うもんだから、反応が遅れた。
「昼寝だ」
「・・・・・・えと、ここで?今?」
「アコには悪いが特に急ぎでもないだろう?」
「・・・・・・まあ、そうなんだけど」
え?寝るの?
本気?
「ソファー2台くっつけりゃ一緒に寝れるな」
・・・・・そう、ここのくっそ広い会議室には高そうなソファーが置いてある。
会議室にソファーがあるなんて信じられない光景だけども。
・・・・・・・・寝るの?
「何なら腕枕、してやるぞ?」
「・・・・・・でもバレたらまずいんじゃ」
シャンクスただでさえあんな噂たってるのに、
会議室で女性と2人きり、
しかも寝てたなんて・・・!!
そんな私の不安を他所に、シャンクスはにっこり笑顔で、
「鍵かけときゃ問題ねェな」
どーん。
・・・・・・・そういえばシャンクスってこうだった。
全然変わってなかった!
嬉しいような困るような!
いやいや、ここで私が流される訳にいかない!
「そ・・・それ余計に大問題では・・・?」
苦笑する私にシャンクスは急に寂しそうな顔になって、
「アコは嫌か?」
と聞いてきた。
「い・・・嫌とかじゃないけど・・・・眠いけどさ」
「ならいいだろ?」
「う・・・・・・・・・・・」
ふかふかソファーの誘惑。
・・・・・・でもそんなことしたら、
きっとシャンクスの耳に今は入らなくても、
いつかは入る噂を誇張させてしまう。
シャンクスはいそいそとソファーを2台持ってきて、くっつけ始めた。
・・・・・確かに、私が持ち込んだ仕事がなければその分楽だったんだし。
疲れてる顔、してる。
休ませてあげたい、出来れば。
でもその前に・・・・言わないと。
「あ・・・あのね、シャンクス?」
「ん?どうした?」
「シャンクスは知らないかもしれないけど・・・この会社で噂、あってね」
「噂?」
「シャンクスが取引先の女の子達片っ端から手出してるって」
「・・・ほう、そりゃ知らなかったな」
「私はシャンクスがそんな人じゃないっていうのはわかってるからいいけど、これ以上噂広まったら、」
「問題ないな」
シャンクスはまたさらりと言ってのけた。
・・・・・・・・・・えーと、あれ。
「アコが信じてくれてんならそれでいいさ」
「・・・・・・・いいの?」
いや、駄目だろ。
「そのうち独立するつもりだからな」
「・・・やりにくくならない?」
「気にしねェ」
・・・・・・・・・・・・そうだね。
シャンクスはこういう人だったね。
「心配してくれてありがとな」
「ど・・・・どういたしまして・・・・」
えと、じゃあこれって、この状況って、アレですよね。
「よし、じゃあ寝るか」
「あ・・・・・・・じゃあシャンクス寝てていいよ。これ、この間のやつでしょ?私目通すだけ通しておくから」
「アコも寝ろよ、眠いんだろう?」
「・・・・けどここでは眠れないと思う。眠くなったら寝させてもらうから」
さすがにヒトサマの会社で寝れる程神経太くはない。
「そうか?」
「うん。・・・・・良かったら、使う?」
言いながら指した、私の膝。
「・・・・・・いいのか?」
さすがのシャンクスもこれには驚いた様子を見せた。
「感謝の印、と・・・お疲れ様の意味をこめて」
「じゃあ、遠慮なく」
ソファーに座った私の膝にシャンクスが頭を乗せた。
おお、重い。
「・・・・いい眺めだな」
「殴るよ」
「はははっ、悪い。・・・おやすみ、アコ」
「ん。・・・・おやすみ、シャンクス」
高校の頃と変わらない、
シャンクスの寝顔。
私はこの人を、
信じられる。
+ふかふかのソファー 終+