3千万ベリーの恋
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迷子なう。
今ここに携帯があればそう呟きたい気分だ。
服も生活小物も買って、あとは下着類。
でもさすがにそこまでシャンクスに付き合わせる訳にはいかない。
シャンクス本人は行きたがってたようだけど。
そこで私は店から少し離れた場所にある噴水の前でシャンクスに待ち合わせにした。
訳だけども。
・・・・・・・・・噴水何処だっけ。
えーと、あの緑の看板には見覚えがあるんだよな。
「お嬢さん可愛いね、1人?」
この道真っ直ぐだった気もするんだけどあの店は通ってないとも思う。
「もしもし?お嬢さん?」
いっそ人に聞いてみるのが早いかなー。
うーん、でももうちょっと自力で頑張ってみるかな。
「ちょいと、聞いてる?」
何かうるさいな。
そう思いながら振り返ると、見知らぬ男の人が困った顔で立っていた。
「・・・・・・・・・人違いです」
何か関わりたくない。
そう思ったので見なかったことにした。
「間違ってなどないさ、お嬢さん」
そもそも私お嬢さんって年齢でもねえっしょ。
とにかく今は如何にして待ち合わせの噴水まで行くか、だな。
「困っているようだね?見たところこの町に不慣れなようだ」
「あ、あそこは見覚えある気がする。そっかあの角を曲がれば良かったのか」
「そんな君と僕が出会ったのも運命としか言いようがない!違うかい?」
「あれ、違った。おっかしーなー」
「・・・・・困るんだよ、付いてきてくれないと」
ふと男の声が低くなったことに私は気づいた。
首だけを声のするほうに向けてちら、と覗いてみる。
男の人は下を向いてぶつぶつ言ってる。
うわ、怖!
やっぱり見なかったことにしよう、と再び前を向いて歩き出そうと足を踏み出したその瞬間。
がし、と力強く肩を掴まれた。
え、何。
もしかしてこの人1日に何回か良いコトをしなきゃいけない人とかなの?
「あのですね、私の他にも困ってる人居るでしょう?そっちの方に行ってあげて下さいってば!
例えばほら、そこの人なんか私達に話しかけたそうに・・・・え?」
例を挙げようとして目の端に見えた赤い髪の男の人を指さして、私は固まった。
「しゃ・・・シャンクス?」
私のその言葉にいち早く反応したのは男の人で、私の肩を掴んでいた手をさっと離した。
「シャンクス・・・?まさか四皇の!?嘘だろ!?」
あ、そういえば四皇の意味聞くの忘れてた。
「悪いが、そのまさかだ。俺の女に用なら俺が聞くが?」
「う・・・うわああああ!!」
あっという間に男の人は去って行った。
え、ええええええ!?
何だったの結局!
ていうか四皇のシャンクスって名前だけで逃げ出すの!?
「え、ていうかシャンクス何故ここに?」
「待ちきれなくてな、迎えに来た」
「ごめんごめん、結構買っちゃったかも」
「買うのは問題ねえが・・・アコ、これは駄目だ」
シャンクスは袋の中をちらりと見て不満そうに言った。
え、やっぱ買いすぎたか。
「そっか、そうだよねーじゃあ今からお店行って返品してもらってくる」
私は真面目に反省した。
のに、
「量は問題ない。しかしなアコ、これは問題だ」
「・・・・・・どのへんが?」
「全然エロくない」
「・・・・これだから男ってやつは・・・あ、そういえばさっきの男の人何だったんだろ」
何気なく気になったことだったけど、
「ああ、あれな。誘拐しようとしてたんだろうな、アコを」
「へえ、そうなんだ」
・・・・・・・・さらりと答えたシャンクスの重大発言に、
「ってはあああああ!?」
何言っちゃってんのこの人。
「この町で最近多発してるらしい。町に不慣れな女性を狙って声をかけ、誘拐するんだってよ」
「・・・誘拐してどーすんの?」
「さあな。売り飛ばすんじゃないか」
こわ!
「え、じゃあ私誘拐されるとこだったの?」
「相手はそのつもりだったようだが・・・相手が悪かったな」
シャンクスはいかにも面白い、といった風に笑う。
「何かその言い方気になる」
「アコは明らかに道に迷っていたし、お嬢さんと呼ばれて悪い気はしないだろうと思ったんだろう」
「で、連れて行こうとした訳か。私お嬢さんなんて年齢じゃないのに」
「それでも道に迷っていたのは確かだろ?何で聞かなかったんだ?」
「え、だっていかにもうさんくさい顔のオッサンなんかについていきたくないし。どうせうさんくさいなら美女がいい」
ナミさんになら騙されてもいいなー。
とか考えてたら、
「っはっはははは!だーっはは!」
シャンクスがお腹抱えて笑い出した。
「・・・・どした?」
「いや、その通りだと思ってな。確かに美女がいいよなあ・・・くくっ、っはっはっは!」
シャンクスはよく笑う。
大きな声で豪快に。
でもその笑い方を私は嫌いじゃない。
笑いのツボがわからないけど。
どうしたもんかと楽しそうに笑うシャンクスを見ていると、買い物袋をさげたおばさんが私達に近寄ってきた。
「あらあ、やっぱりさっきのお兄さん!彼女さん無事に見つかったのね、良かったわあ」
さっきのお兄さん?
シャンクスはおばちゃんを見ると、人好きのする笑顔を浮かべた。
「ああ、助かったよおばちゃん」
「え、何、どゆこと?」
「お兄さんがね、噴水のとこで誰か待ってるみたいだったから聞いたのよ。彼女さんと待ち合わせなの?って」
彼女じゃないけどね!
「そしたらそうだっていうから、最近誘拐事件が多いから気をつけなさいよって言ったらね、お兄さん血相変えて走ってったのよ」
「え・・・・・」
シャンクスが血相を変えて?
「とにかく無事で良かったわあ。2人でこの町を楽しんで行ってね!」
言いながらおばちゃんは去っていった。
じゃあシャンクスが噴水のとこに居なかったのは、待ちきれなかったからじゃなくて。
私を心配して来てくれたってこと?
「シャンクスが血相変えるってレアじゃね?うっわ見てみたいかも」
口に出してから、しまった、と思った。
いくらなんでも心配して迎えに来てくれた人に対して言っていいことじゃない。
「まあとにかく無事で良かった。他に必要なものはあるか?」
それでもシャンクスは変わらず優しく笑ってくれた。
それが逆に辛い。
「・・・・・よくない」
「ん?」
「私今酷いこと言った。ごめん」
「酷いこと?俺は言われた覚えはないな。事実だろう」
「でもごめん」
「気にするな。それよりアコにそんな顔させる方がよっぽどこたえる」
「・・・・ん、ありがと」
自己嫌悪に陥る私に優しく微笑んでくれるシャンクスの存在が有り難かった。
「・・・・あれ、そういえば何でシャンクス私が道に迷ってたって知ってんの?」
「ずっと見てたからな」
「何を」
「店を出てからのアコを」
「・・・・・・なんてこったい」
そうして彼はまた笑った。
+絶賛迷子なう 終+