いざ、勝負
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「痛っ」
野菜を切っていた時に痛みを感じた。
包丁で指の皮を切ったようだ。
「大丈夫かー?何か今日は多いな、アコ」
「すみません・・・・」
つい数分前にも火傷をしたばかりだ。
「お頭と何かあったな?アコ」
ロンさんにずばり言い当てられて、私は言葉に詰まった。
あの日、
シャンクスから目を逸らしてしまってからずっと私はシャンクスを避けている。
あの日は先に部屋に戻ってすぐにベッドに入ったし、
朝からはずっと厨房に居るようにして、夜はシャンクスが居ないのを見計らって
部屋に戻っては寝るだけ、という生活。
そんな生活ももう3日目。
図書室にも行きたいけど行けてない。
・・・・図書室でシャンクスに会ったら、と考えただけで足が向かない。
「まあ、話したくないなら無理にとは言わないが、今日は部屋に戻ってるか?」
「・・・・いえ、やります」
部屋に戻ったらシャンクスが居る可能性が高い。
・・・・だから、戻りたくはない。
「そんなこと言ってお前、このまま続けてたら死ぬぞ?」
死ぬぞ、と言うのはロンさんなりの比喩なんだろうけど、胸が痛んだ。
「とにかく、頭冷やしてこい」
「・・・・・はい、すみません」
言い方も優しくて、顔も笑ってて。
なのに私には、怒鳴られるより辛かった。
結局部屋に戻るのが怖くて、甲板で風に当たることにした。
本当に、頭を冷やさなきゃだ。
・・・・・・・・・・・・私、何でシャンクスを避けたんだろう。
何で私はあの時、あんなこと言ったんだろう。
『・・・シャンクスが待ってるのは、私じゃないですよ』
これじゃまるで、
・・・・・・・・・・・・・・・・・まるで、
ルフィ君に嫉妬してるみたい。
「そんな馬鹿な」
誰も居ないことを確認して、ぽつりと口に出してみる。
そんなコトある訳ない。
シャンクスに嫉妬するならまだしも、ルフィ君に嫉妬するなんて、そんなこと。
・・・・ちょっと待って。
じゃあ避けてるのは何で?
顔を合わせたくないのは、何で?
「具合でも悪いのか?アコ」
「え、あ、え!?」
ふと気づくと隣にシャンクスが居て、驚いた。
「さっきから居たんだが。・・・アコ」
じぃ、っと見つめられて、あの時のことが思い出される。
初めて目を逸らしたあの時。
「あ、私っベッドで寝てきま、」
具合が悪いことにしてベッドで寝ると言って部屋に戻ろうと、くるりと背中を向けた瞬間。
強く腕を引っ張られた。
「・・・・俺ぁ何かしたのか?」
後ろから抱きしめられている状態で、
耳元で囁かれる。
「はな、して下さい・・・っ」
「嫌だ」
片腕なのに、すごい力が入っていて、離れられそうにない。
「あの!私ほんと具合悪いんで!」
「俺が何かしたなら言ってくれ、アコ」
何処か切迫したようなシャンクスの声に耳を塞ぎたくなる。
「・・・・・・・・・わかんない、です」
けれど塞ぐことは出来なくて、思わず言葉が洩れた。
「・・・・・・・・わからない?」
「・・・・・・・・・・・・・私が1番どうしたらいいか、わかんな」
最後まで言う前に、
私の頭上から冷たい液体が降ってきた。
ざばーっと。
「・・・・・・・・・・・・え」
上を見ると、
「お・・・お頭!?アコ!?」
「う、うわああすんません!!」
2階からバケツを持った人が唖然としていた。
「アコ、大丈夫か?」
「・・・・・・・・大丈夫、です」
今度はシャンクスと向き合う体勢になった。
ぽたぽたと髪から落ちる滴。
・・・・・・・・・・ロンさんに頭冷やして来い、とは言われたけど。
まさか本当に頭冷やすことになるなんて。
と思ったのも束の間。
今度は前からぎゅう、っと強く抱きしめられた。
「なっ何ですか!?」
濡れた身体がくっついて気持ち悪い。
「・・・・・・・・・このままだと見られちまうだろ」
言われて気がついた。
・・・・・・・・そっか、服が濡れてるということは透けてるこということ。
私、避けてたのに。
理由も言わないで逃げようとしたのに。
・・・そんな私をまた、守ってくれた。
泣きそう。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・はい」
この状況なら泣いてもわからないかな、と。
私はシャンクスに抱きしめられながら、
涙を零した。
わからないはずなのに、
抱きしめられた腕が一層強くなった気がした。
+そして彼はまた 終+