いざ、勝負
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『海賊王になる、あいつはそう言った。きっと来るさ、立派な海賊になってな』
きっと来る。
そう言った時のシャンクスの顔がぱっと思い浮かんで、あんなことを言ってしまった。
あの時シャンクスが待っていたのは、
私だと知っていたのに。
ルフィ君を待っているのは私だって同じなのに。
・・・・・・・・・・・もやもやする。
帰り道でも、その後も部屋では何事もなかったかのように接してくれるシャンクスで良かった。
船は再び海の上を進んでいる。
「元気ないな、アコ。お頭とデートん時に何かあったのか?」
夕飯の後片付けをしていると、ロンさんに声をかけられた。
「・・・・・・・・・いえ、別に何も」
「そうか?何かあったら言えよ。俺達ぁ家族みたいなもんなんだからな」
「・・・・・・・・・・お父さん?」
「ははははっまあそんなトコだな」
「じゃあお父さん、この後厨房借りてもいいですか?」
「ああ、新作レシピを試してみたいんだろう?可愛い娘の為なら喜んで、だ」
試しにお父さん、と呼んでみればロンさんは嬉しそうに顔を輝かせた。
「ってももう夜も遅いからほどほどにしとけよ」
「はーい」
1人、また1人と厨房から消えていく。
最後にロンさんも居なくなって、私の時間。
「よし」
結構試してみたいレシピが溜まった。
どれから試すかな。
夜も遅いし簡単な物からにしよう。
梅酒を使った料理を考えていて、梅酒の瓶を手に取った。
が、
「んん・・・!んぐううう!!!」
蓋が硬くて開かない。
「俺が開けよう」
「・・・・・・・・シャンクス?」
聞きなれた声に後ろを振り返ればそこには予想通りシャンクスが立っていた。
「開かないんだろう?悪いがアコ、本体だけ持っててくれるか」
「あ、はい」
瓶本体を私が両手で握り締めて、
シャンクスが蓋を掴んだ。
そして、
「・・・・・・・・・・・・・・有難う御座います」
いとも簡単に開けてしまった。
「何を作るんだ?」
「・・・・・・・・ていうか何故シャンクスはここに?」
「ロンから聞いた。新作レシピを試すんだろう?」
そう言って笑ったシャンクスの手には、
「・・・・・・・・・救急箱?」
「これがありゃアコがいつ怪我しても俺が手当てしれやれるからな。片手だから出来ることは限られちまうが」
「その為に、わざわざ?」
もしかしてこないだの話を聞いたから?
『昨日包丁で切ったやつですね』
『1ヶ月くらい前に火傷を』
「俺がしたいだけだ。気にするな」
「でも、私もうちょっとかかりますよ?」
「言っただろう?俺が側に居たいだけだって」
「・・・・そう、ですか」
そんなに頻繁に怪我する訳でもないんだけど。
・・・・ていうか、
見つめられてると料理しづらい。
でもたぶん言っても無駄だし、気持ちは嬉しかったのでそのままにすることにした。
「これ、食べてもらえませんか?」
「いいのか?・・・・・ん、美味い」
「あと、これも」
「・・・・・うん、美味い」
出来ればもっと細やかな感想が欲しかったんだけど、シャンクスの笑顔と、
『美味い』
それだけで何処か満足してしまう自分が居る。
・・・・・・・そして、
ドキドキする自分が、居る。
「でも実際食べたらもうちょっと改良してみたくなりました」
「アコが納得行くまでやりゃあいいさ」
「んー・・・でもキリがないんで今日はこれでやめておきます。有難う御座いました」
「礼を言われるようなことは何もしちゃいないんだが」
「試食とか、瓶の蓋とか。・・・怪我、心配してくれたり」
助かったのは、事実だから。
「アコにはもっと俺を頼って欲しいな」
「・・・・・・・すみません甘え下手で」
「そんなとこも可愛いから許す」
許された。
・・・・ていうか、
調子狂うなあ。
「・・・明日、何か食べたい物とかあります?今日のお礼に作りますけど」
「そうだな・・・」
少し考える素振りを見せた後、シャンクスは爆弾発言をした。
「アコが食いたい」
「・・・・・っ」
冗談だ、って。
からかってるだけだって、わかってるのに。
心臓がどくん、と飛び跳ねた。
そして捕らわれた私の瞳。
真っ直ぐに、何処か挑戦的に見つめられる。
そして私は今日、
シャンクスと出会って初めて、
シャンクスから目を逸らした。
+片腕の救急隊員 終+