いざ、勝負
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何着ていこう、なんて考えたけど。
考えるまでもない。
家から持ってきた一着の一張羅。
お洒落して出掛けることなんて1年に1回あるかないか・・・
むしろ5年に1回あるか、という程の私の唯一のお洒落着。
靴だってヒールの物は1個しか持って来てない。
バッグも、同じ。
・・・・というか、持ってない。
「お待たせ、しました」
着替える為にシャンクスには部屋の外に出てもらっていて、ドアを開けてシャンクスをお出迎え。
「・・・・・・・・随分変わるもんだな、女ってのは」
「・・・それ物凄く失礼ですよ」
「ああ、すまん。普段のアコは可愛い、だが今のアコは綺麗だ、と思ったんだ」
「・・・・・・どうも」
そしてシャンクスに連れて行かれた場所は、
「・・・・・・ここって、昼間の?」
昼間ロンさんとご飯を食べたお店、だ。
「ああ。夜は感じのいいバーになると聞いてな。ここは酒が美味かったからもう1度来て見たかったんだ」
・・・・・・・・・・・酒好きめ。
思ったけどあえて口には出さず、
「・・・じゃあ、行きましょうか」
それだけにとどめておいた。
中に入れば空気が一気に変わったのがわかった。
ざわ、ざわ、と。
「・・・・・・赤髪?」
「四皇の赤髪のシャンクスか?」
「・・・女連れだぜ、おい」
そんな声が聞こえてくる。
シャンクスはさすがに慣れているのか気にとめることもなく平然とした顔で案内された席に座った。
「どうしたアコ?座らないのか?」
「・・・・・・・・や、座ります、けど」
シャンクスがあまりにもいつも通り過ぎて私は逆に少し戸惑うけれど、
気にしないことにした。
「気になったものは何でも頼んでいいぞ」
シャンクスはメニューを開いて見せてくれた。
気になったもの・・・って言われても、そんなこと言ったら全部気になる。
とりあえずその中から気になったものを絞って注文した。
「アコ、その指どうした?」
料理とお酒を待っている間、シャンクスが私の指に巻かれた絆創膏に気づいた。
「これですか?昨日包丁で切ったやつですね」
「・・・・・・隣の指は?」
「1ヶ月くらい前に火傷を」
「そっちの手の傷は?」
「えーっと、1週間くらい前に火傷、ですね。たぶん」
正直この仕事をしてれば怪我や火傷なんてよくあること。
昔に比べれば減った方ではあるけど。
「辞めたいと思ったことはないのか?」
「ないですね。・・・だから、私最近少しわかってきた気がします」
「わかってきた?」
「シャンクスとルフィ君・・・・と、父さんが笑ってる理由」
「・・・そりゃあ、聞きたいな」
心底楽しそうな笑みを浮かべるシャンクスに少しだけ釈然としないものを感じながら私は話すことにする。
「私がどんなに怪我しても火傷しても料理が好きなのと、同じなのかなって」
それに私も母を1人置いてきた。
「・・・料理の為に大切な人を捨てた私には父のこと何も言えないなって思いました。
あ、後悔はしてないですけどね?」
好きなことに真っ直ぐだから、
あんな風に笑って生きて行ける。
ルフィ君のあの笑顔の意味が少しだけわかった気がして、嬉しかった。
「俺が以前海賊は楽しいぞ、と言った時、アコは知ってる、と言ったな」
「・・・・・・・・・・よく覚えてますね」
私ですらそんなこと言ったかも、くらいなのに。
「その理由は父親だったんじゃないのか?」
「そうですよ。楽しそうに笑う父。そして、ルフィ君。今は・・・シャンクスもですけど」
あんな風に笑うから。
「あんな風に笑うんだから、妻子を置いて海に出るんだからさぞ楽しいんだろうなって思ったんです」
「あの時は父親をまだ許せていなかっただろう?今はどうなんだ?」
「今はもう許せます・・・って、私父のことそんな風に言った覚えはないです、けど」
シャンクスに父のことを聞かれた時、
『正直顔もよく知らない父親のことなんて恨めないですよ。
それでも母は父に出会えて幸せだって笑ってたし私もそれでいいと思ってます』
そう言ったはずだ。
例えそれが偽りだったとしても、だ。
「アコは顔に出るからな。心の中ではどう思ってるかすぐにわかった」
すべてを見透かしているかのような瞳にドキッとした。
「・・・・でも今は本当にいいと、思ってますから」
そこまで言ったところで、
料理とお酒が到着した。
「お待たせ致しました、こちらムール貝のワイン蒸し、タコのカルパッチョで御座います」
「わ、美味しそう!」
目の前に美味しそうな料理が並べられて、胸が躍る。
どれから食べよう。
「アコ」
「え?」
シャンクスに名前を呼ばれて顔を上げれば、グラスを持って苦笑していた。
「あ」
「乾杯」
「か、乾杯」
食べ物に夢中になっていた自分が恥ずかしい。
そうだ、今日は料理のことは忘れてシャンクスとデート、だった。
それから他愛ない話をして、ゆっくりお酒と料理を楽しんだ。
「んーお腹いっぱい。美味しかったですね」
「ああ、美味かった。そろそろ行くか」
「あ、私お手洗いに行ってきます」
シャンクスが頷くのを確認してお手洗いへ。
用を済ませて戻れば、
シャンクスは知らない女の人と話していた。
「・・・・シャンクス?」
声をかければ女の人が振り向く。
・・・・すっごい、美人。
「あら、この子がお頭さんの待ってる子?」
待ってる。
その言葉に反応した私から出たものは、
「・・・シャンクスが待ってるのは、私じゃないですよ」
「アコ?」
「あ、でも今は私がお待たせしちゃいましたね。行きましょうか」
驚くシャンクスににっこりと笑って、
レジへと向かった。
・・・・・・・・・・・シャンクスが本当に待ってるのは、
私じゃないから。
+待ってる人 終+
考えるまでもない。
家から持ってきた一着の一張羅。
お洒落して出掛けることなんて1年に1回あるかないか・・・
むしろ5年に1回あるか、という程の私の唯一のお洒落着。
靴だってヒールの物は1個しか持って来てない。
バッグも、同じ。
・・・・というか、持ってない。
「お待たせ、しました」
着替える為にシャンクスには部屋の外に出てもらっていて、ドアを開けてシャンクスをお出迎え。
「・・・・・・・・随分変わるもんだな、女ってのは」
「・・・それ物凄く失礼ですよ」
「ああ、すまん。普段のアコは可愛い、だが今のアコは綺麗だ、と思ったんだ」
「・・・・・・どうも」
そしてシャンクスに連れて行かれた場所は、
「・・・・・・ここって、昼間の?」
昼間ロンさんとご飯を食べたお店、だ。
「ああ。夜は感じのいいバーになると聞いてな。ここは酒が美味かったからもう1度来て見たかったんだ」
・・・・・・・・・・・酒好きめ。
思ったけどあえて口には出さず、
「・・・じゃあ、行きましょうか」
それだけにとどめておいた。
中に入れば空気が一気に変わったのがわかった。
ざわ、ざわ、と。
「・・・・・・赤髪?」
「四皇の赤髪のシャンクスか?」
「・・・女連れだぜ、おい」
そんな声が聞こえてくる。
シャンクスはさすがに慣れているのか気にとめることもなく平然とした顔で案内された席に座った。
「どうしたアコ?座らないのか?」
「・・・・・・・・や、座ります、けど」
シャンクスがあまりにもいつも通り過ぎて私は逆に少し戸惑うけれど、
気にしないことにした。
「気になったものは何でも頼んでいいぞ」
シャンクスはメニューを開いて見せてくれた。
気になったもの・・・って言われても、そんなこと言ったら全部気になる。
とりあえずその中から気になったものを絞って注文した。
「アコ、その指どうした?」
料理とお酒を待っている間、シャンクスが私の指に巻かれた絆創膏に気づいた。
「これですか?昨日包丁で切ったやつですね」
「・・・・・・隣の指は?」
「1ヶ月くらい前に火傷を」
「そっちの手の傷は?」
「えーっと、1週間くらい前に火傷、ですね。たぶん」
正直この仕事をしてれば怪我や火傷なんてよくあること。
昔に比べれば減った方ではあるけど。
「辞めたいと思ったことはないのか?」
「ないですね。・・・だから、私最近少しわかってきた気がします」
「わかってきた?」
「シャンクスとルフィ君・・・・と、父さんが笑ってる理由」
「・・・そりゃあ、聞きたいな」
心底楽しそうな笑みを浮かべるシャンクスに少しだけ釈然としないものを感じながら私は話すことにする。
「私がどんなに怪我しても火傷しても料理が好きなのと、同じなのかなって」
それに私も母を1人置いてきた。
「・・・料理の為に大切な人を捨てた私には父のこと何も言えないなって思いました。
あ、後悔はしてないですけどね?」
好きなことに真っ直ぐだから、
あんな風に笑って生きて行ける。
ルフィ君のあの笑顔の意味が少しだけわかった気がして、嬉しかった。
「俺が以前海賊は楽しいぞ、と言った時、アコは知ってる、と言ったな」
「・・・・・・・・・・よく覚えてますね」
私ですらそんなこと言ったかも、くらいなのに。
「その理由は父親だったんじゃないのか?」
「そうですよ。楽しそうに笑う父。そして、ルフィ君。今は・・・シャンクスもですけど」
あんな風に笑うから。
「あんな風に笑うんだから、妻子を置いて海に出るんだからさぞ楽しいんだろうなって思ったんです」
「あの時は父親をまだ許せていなかっただろう?今はどうなんだ?」
「今はもう許せます・・・って、私父のことそんな風に言った覚えはないです、けど」
シャンクスに父のことを聞かれた時、
『正直顔もよく知らない父親のことなんて恨めないですよ。
それでも母は父に出会えて幸せだって笑ってたし私もそれでいいと思ってます』
そう言ったはずだ。
例えそれが偽りだったとしても、だ。
「アコは顔に出るからな。心の中ではどう思ってるかすぐにわかった」
すべてを見透かしているかのような瞳にドキッとした。
「・・・・でも今は本当にいいと、思ってますから」
そこまで言ったところで、
料理とお酒が到着した。
「お待たせ致しました、こちらムール貝のワイン蒸し、タコのカルパッチョで御座います」
「わ、美味しそう!」
目の前に美味しそうな料理が並べられて、胸が躍る。
どれから食べよう。
「アコ」
「え?」
シャンクスに名前を呼ばれて顔を上げれば、グラスを持って苦笑していた。
「あ」
「乾杯」
「か、乾杯」
食べ物に夢中になっていた自分が恥ずかしい。
そうだ、今日は料理のことは忘れてシャンクスとデート、だった。
それから他愛ない話をして、ゆっくりお酒と料理を楽しんだ。
「んーお腹いっぱい。美味しかったですね」
「ああ、美味かった。そろそろ行くか」
「あ、私お手洗いに行ってきます」
シャンクスが頷くのを確認してお手洗いへ。
用を済ませて戻れば、
シャンクスは知らない女の人と話していた。
「・・・・シャンクス?」
声をかければ女の人が振り向く。
・・・・すっごい、美人。
「あら、この子がお頭さんの待ってる子?」
待ってる。
その言葉に反応した私から出たものは、
「・・・シャンクスが待ってるのは、私じゃないですよ」
「アコ?」
「あ、でも今は私がお待たせしちゃいましたね。行きましょうか」
驚くシャンクスににっこりと笑って、
レジへと向かった。
・・・・・・・・・・・シャンクスが本当に待ってるのは、
私じゃないから。
+待ってる人 終+