3千万ベリーの恋
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「こちらは伸縮性も御座いますし、フリーサイズですので」
「あ、それは要りません」
「でしたらこちらなど如何でしょう?お客様にとてもお似合いかと」
「ごめんなさい好みじゃないです。あ、これのもう一個大きいサイズあります?」
「はい、こちらですね、少々お待ち下さいませ」
こっちでもゆっくりと買い物させてはくれないらしい。
私が選んでもいないものをあれやこれやと持って来てはおススメされてしまう。
まあ私はきっぱりお断りするけど。
「買わなくて良かったのか?金なら気にすることないんだぞ?」
シャンクスはそう言ってくれるけど、
「好みじゃないもん。好きでもないもの買ったって仕方ないでしょ?
どうせ買うなら気に入って買った方がデザインした人にも作った人にとってもいいだろうしさ」
私がそう返すとシャンクスは、にっと笑って「そうか」と言ってくれた。
「またのお越しをお待ちしております」
お決まりの台詞に見送られて、私達は店を出た。
店で買った品物は袋にして2つ。
シャンクスが全部持ってくれた。
「1個持つよ?」
「ん?ああ、気にするな。俺が持ちたいだけだ」
・・・・とか言っちゃって。
紳士だなあ。
でもここで意地張っても仕方ないので、シャンクスの行為は素直に受け取っておくことにした。
「そっか、ありがと」
「おう」
そこでふと気になったのは、手。
店の中では途中まで手を繋いでいたけど、試着するために離した。
それから1回も繋がれることはなかった。
シャンクスは片腕だけだから、私の荷物を持ってくれたらそれで終わり。
いや、別に手繋ぎたいとかいうんじゃないんだけど。
片腕でも、強いんだもんな。
すごい人だ。
「ところでアコ」
「ん、何?」
急に名前を呼ばれてはっとした。
「何か俺に言うことがあるだろう?」
シャンクスは至って真面目な顔で。
・・・・・言うこと?
「有難う?」
「違うな。ベンに言ったことで俺に言ってないことがあるはずだ」
「ええ、何それ」
ますますわかんないんだけど。
ベンさんに何か言ったっけ?
「覚えてないか?」
「ない」
「思い出してくれ、アコ」
何処か必死な形相のシャンクスに私も頑張って思い出す。
えーと、あれか?
初めて私が寝坊した日にベンさんと結構話したもんな。
何話したっけ。
まず私が寝てたことがバレてて、
あと私が異世界から来たことを信じてくれて。
心配してくれて、優しい人だなあとは思ったけど。
それからはこの世界のことを少し教えてもらって。
・・・・・・・パスタが美味しかったなあ。
いや、今はそうじゃねえし。
「ゴメン全然わかんないんだけど。私何か言った?」
「アコ・・・・ベンに大好きと言ったらしいな?」
「ああ、うん言ったけど」
確かにそれは言った。
この船の皆が大好きだと。
そう言った。
よく見るとシャンクスの顔がどことなく怖い。
え、怒ってる?
「・・・・・え、シャンクス?怒ってんの?」
シャンクス怒らせるとかマジレアなんですけど!
どうしよう!
「いや・・・すまん、怒ってはいないんだが・・・その、な」
珍しく歯切れが悪いシャンクス。
怒ってはいないというシャンクスの顔を良く見ると、確かに微妙な表情だ。
怒ってる、というより、
不貞腐れてる・・・・・・・?
いや、でも何故。
「アコ、俺には言ってくれねえのかなー、と」
心なしかシャンクスの顔が赤い。
やべ、何か可愛いとか思ってしまった。
いやでもあの時は何も考えてなかったから大好きですとか言えたけど(相手はベンさんだったし)!
よく考えるとすげえ恥ずかしいししかもシャンクスに面と向かってそんなこと言える訳ない!
い・・・・・言わなきゃ駄目か。
いっそ聞いてみるか、どうしても言わなきゃ駄目、って。
いやいやいや、そんなこと聞いたらさすがのシャンクスも傷つくよね多分。
「アコ?」
にこにこ、と今度は待ちわびているような笑顔で私を見る。
褒められるのを待ってる子供のような顔。
オッサンなのに。
「シャンクスのことは・・・感謝してるしすごい人だと思ってるよ?」
やっぱり恥ずかしさのほうが勝って、大好きとは言えず。
でもこれでも伝わるんじゃね?
・・・というのは甘い考えだったらしい。
シャンクスは悲しそうに笑った。
「そうだな・・・無理やり言わせようとして悪かった。ベンが嬉しそうに言うもんだからつい、な」
「・・・・・っコックさんは、美味しいご飯作ってくれるし、ベンさんもヤソップさんもルウさんも他の皆も優しくて大好きだし!
そんな皆に慕われてるシャンクスも大好きだっての!」
恥ずかしさに耐え切れず私は一気にまくしたてた。
シャンクスはとても嬉しそうに笑う。
「・・・・も、言わないよ」
「ああ、十分だ。有難う、アコ」
たぶん今の私の顔は真っ赤だ。
でもそれをからかわず、優しく笑ってくれたのはせめてもの救い。
大好き、と言っただけでドキドキしてる。
拗ねた顔が可愛かった、とか。
私の一言で喜ぶのが可愛い、とか。
・・・・・・・ちくしょう。
+可愛い人 終+