いざ、勝負
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ぱち、っと目を覚ますと見慣れない天井が映った。
・・・・・隣に見えた赤い髪に、自分の状況を改めて再確認。
寝ている赤髪さんを起こさないようにそっとベッドを抜け出して、洗面所で着替えた。
そして、向かうは、当然。
「おはよう御座います!」
レッドフォース号、その厨房。
「お、この時間に来るたぁ偉いなお嬢ちゃん!じゃあ早速作ってもらうか」
「はいっ」
私は店から持ってきたエプロンを装着した。
うん、これを着けると気合いが入る。
「お頭には最初は1品でいいって言われてんだが・・・今日この材料なら何を作る?」
ずらりと並べられた材料。
ふと、端にあるものを見つけた。
「あれは何ですか?」
「ああ、昨日の残り物だよ」
「残り物・・・・どうするんですか?」
「俺達が責任持って食べるのさ。船じゃ食料は貴重だからな」
「・・・・・ちなみに今日のメインは?」
メインは他の人が作ってくれるということで、それを聞いておく。
「今日は魚の焼いたものがメインだな。あとはサラダは決まってるけど」
「じゃあ、あれ下さい。あと卵も」
「あれ・・・・って、あれかい?」
「はい、あれです」
許可を得て、私は調理を始めた。
「なかなかやるなあお嬢ちゃん」
「アコです」
「はは、そうだったな、これからが楽しみだ」
「俺はロンってんだ。さあ、もうすぐ朝食の時間だ。忙しくなるぞ、アコ」
ロンさんは50歳くらいの優しそうな人で、ここの料理長をやっている人だ。
「はい、頑張ります!」
食堂に人が集まってきた。
「ほう、美味そうだな」
・・・・・1番のお客さんは、
「今日は早いですねお頭」
「アコの作る料理が楽しみでな」
「・・・・・どうぞ」
にこにこと嬉しそうにしている赤髪さんに、卵焼きを渡す。
「アコはまだやることがあるのか?」
「え?あとは片付けですけど」
「そうか。じゃあ一緒に食おう」
「・・・ですから片づけがあるんで」
人の話聞けよ、とイラッとしたのが伝わったのか、
「まあ、今日くらい片付けはやってやるから。お頭と飯食ってやれよアコ」
ロンさんにそう言われて、
「・・・じゃあ、お言葉に甘えますね」
仕方なく頷くことにした。
「すまんな、ロン」
「頑張って口説いて下さいよ、お頭。アコは強い」
「おう、任せろ」
ロンさんまで勝手なこと言ってる。
私は手を洗ってエプロンをはずし、自分のぶんの朝食を手に取った。
「そしたら感想聞かせてください」
「勿論だ。自信は?」
「あります」
慣れない厨房で調理したとは言え、中途半端なものを出したつもりはない。
席に着いて、
「いただきます」
先に赤髪さんが卵焼きを口にするのを見届けた。
そして、
「美味い」
この一言でほっとした。
続いて私も食べ始めた。
「・・・アコ、これは何が入ってるんだ?」
「あ、昨日の残り物です」
「・・・・残り物?」
ロンさん達には何も言われなかったからそのまま出しちゃったけど、さすがに失礼だったかしら。
「・・・駄目でした?」
「いや、残り物でもこんな美味くなるもんなんだな」
そう言って本当に美味しそうに食べてくれる赤髪さんは、お世辞を言ってるようには見えなかった。
「残り物のまま食べるよりこうしちゃった方が美味しく食べれるならこっちの方がいいかなって思ったんです。
その方が食材も喜ぶし」
「・・・・・」
「赤髪さん?」
何も言わない赤髪さんに不安になって名前を呼ぶと、これ以上ないくらいの笑顔が返って来た。
「アコを連れて来て良かった」
「・・・・良かった、です」
その笑顔と言葉に、これしか返せなかった。
+いただきます 終+