いざ、勝負
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赤髪さんと、私の部屋。
そこには私の荷物が散乱していた。
確かに・・・これは片づけが最優先かも。
座り込んできょろきょろと周りを見回していると、ベッドに座った赤髪さんと目が合った。
「なかなかいい部屋だろう?」
「・・・・微妙です」
確かに部屋自体は広いんだけど。
埃、とか。ゴミとかものすっごく気になる。
でも何より気になっているのは、
「赤髪さん、私の布団はあるんでしょうか」
ベッドが1つしかないこと。
これは恐らく元々の持ち主である赤髪さんの物だろうし、私は布団で構わないんだけど。
布団らしきものが見当たらない。
さすがに地べたに寝るのはお断りしたいんだけどな。
「布団はねえな。アコがベッドで寝りゃいい」
「え、でもそしたら赤髪さんは?」
「俺は寝れりゃ何処でも・・・アコ」
「はい?」
「その呼び方はやめてくれ」
思い出したようにそんなことを言い出す赤髪さんに思わず首を捻る。
「呼び方、ですか」
「その敬語も。勝負の最中とはいえこの船に乗ったからには俺の仲間だ。仲間にそんな呼び方はして欲しくない」
強制はしないが、と笑う赤髪さんに私は迷う。
「・・・・いつか」
「いつか?」
「今すぐには、直せないです。いつか、じゃ駄目ですか」
「・・・・いや、それでいいさ」
それでいいと言いながら赤髪さんは何処か寂しそうに笑った。
胸が少しだけ痛む。
・・・・覚悟はしてきたつもりでも、
昨日の今日で簡単に仲間だなんて思えない。
いつか、なんて。
約束は出来ないけど。
するとそこに、
「お頭、失礼します!」
1人の男の人が入ってきた。
赤髪さんはその人と何かを話して、
男の人が行ったのを見届けると私のほうに向き直った。
「アコ、出航だ」
「・・・・はい」
本当のお別れを告げる声。
「甲板に出るか?」
「・・・・・・・・・いえ、ここで」
「そうか」
最後にあの場所を目に焼き付けておきたい気もするけど、やめた。
大事な物は瞼に焼き付けてあるから。
それにこれからの私の居場所はここだし。
船が動き出して、船内が騒がしくなった。
「私は・・・・何もしなくていいんでしょうか」
「アコにして欲しいことは1つだ。俺達に飯を作ること」
「それは、そうなんですけど。本当にそれだけでいいんですか?」
「それでいい。あとはなるべく俺の側に居ること」
「・・・・?何でです?」
楽しそうにそんなことを言い出す赤髪さんに疑問をぶつけると、
赤髪さんは恥ずかしげもなく、
「居て欲しいからに決まってるだろう?それと、守る為だな」
「・・・・・お手数おかけします」
いざとなったら包丁で応戦しようかな、なんて考えてみる。
けれどそんな私を見透かしたかのように赤髪さんは私の頭に手を伸ばす。
「アコは余計なこと考えるなよ、頼むから」
ぽんぽん、とまるで子供をあやすような赤髪さんの仕草に少しだけむっとする。
「・・・・わかってます、足手まといになるだけですから」
「いや、俺が嫌なだけだ」
「・・・・そう、ですか」
私には大根で応戦した前科がある。
ここで約束すると言っても信じてはくれないだろうし、
私自身絶対に何もしないとやっぱり約束は出来ないのでそれだけ答えた。
それでも赤髪さんは納得してくれたらしく、それ以上何も言わなかった。
「ちなみに風呂は入る時は一言俺に言ってくれ。悪いが見張りをつけさせてもらう」
「別に逃げませんよ?」
「・・・アコを守る為に、だ」
「・・・・・・・・了解です」
「よし、行くぞアコ」
「え、何処にですか?」
黙々と片づけをしていたら、途中でそんなことを言われた。
「今日の主役が居なくては始まらないからな」
「主役・・・・?」
連れて行かれた場所は、食堂で。
「アコを歓迎して、乾杯!」
「宴だー!」
入った途端、そんな声が耳に飛び込んできて。
「・・・・・・・え、」
驚く私をそのまま席へと連れて行く赤髪さん。
「新しい仲間に乾杯!」
無理やりグラスを持たされて、注がれるお酒。
「ほれ、アコ」
「あ、有難う、ございます」
「乾杯ー!!」
たくさんの声に囲まれて、宴は始まった。
+約束のない、いつか 終+