いざ、勝負
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「ただい、ま」
何となく気まずい、帰宅。
「あ、おかえりー」
けれど母さんはいつもと同じ。
「・・・・え、あれ」
赤髪さんから何も聞いてない、ってことはないよね?
許可は得てあるって言ってたし。
「そういえばアコ、食べ物は大事にしなさいっていつも言ってるでしょ?」
「え、大事にしてるよ?」
「大根で人を殴ろうとしたくせに」
「・・・・・・それは、相手が刃物持ってたからで」
まさかそう来るとは思わなかった。
さすが定食屋を経営してる人だけのことはある。
「だったら大人しく捕まれば良かったじゃない」
「・・・・・可愛い娘に対して言うことじゃないんじゃない?お母様」
「可愛い娘だから言ってるのよ」
娘が誘拐されたっていうのに、
海賊のところに行って明日には居なくなるっていうのに。
・・・・・・・普通過ぎる母さん。
「今日は店開けなかったんだ?」
「買い出しに行ったあんたが帰って来ないってことは?」
「・・・・お店は開けません」
「はい正解。ま、仕方ないわ。ほら、夕飯出来たわよ。明日の朝出発なんでしょ?今日は早く寝ちゃいなさい」
いつもの夕御飯。
炒め物に煮物、漬物。
母さんの、料理。
私の原点。
「・・・・・いただきます」
噛み締めて、味わって。
「美味しい」
自然と笑顔になる、味。
「母さんはね、あんたのその顔のために今まで作ってきたの。これからはあんたの番ね」
「・・・・・うん。まずは、赤髪さん達のために」
そして次は、麦わらのルフィに食べてもらう為に。
「ま、四皇赤髪のシャンクスの船なら心配はしてないわ」
「少しくらいは心配して欲しいんですけどね」
「しないわよ。アコはきっと赤髪のシャンクスのことが好きになるもの」
「・・・・何それ」
「母親の勘てやつ?」
母親の勘、か。
「ねえ母さん」
「なーに?」
「父さんのこと恨んでる?」
海賊である父。
今も生きてるのかさえわからない父。
「あり得ないわね。あの人に出会えて恋をして、私は幸せ。アコを産めたこともね」
「・・・・・母さん」
母さんの顔が一瞬、私の知らない女の人に見えた。
・・・・・恋する女の顔、ってこんななのかもしれない。
「どうしたら母さんみたいに強くなれる?」
「・・・・・信じることじゃない?」
「出会ったばっかりの赤髪さんを?」
「信じれるでしょ?あんたの作った料理を美味しいって言ってくれた人なんだから」
「・・・・・あ、」
こんな時母さんにはやっぱり敵わないことを思い知らされる。
赤髪さんは悪い人じゃない。
力づくで連れて行く、なんて言ってたのに来ないなら来ないでいいと言ってくれたり。
勝負の条件も私にとって悪いものじゃなかった。
何より私の作ったご飯を美味しいと言って食べてくれたこと。
「・・・・・・・うん、信じられる」
その日は久し振りに早くに布団に入った。
明日からのコトを思うと眠れないかもしれない、なんて思いながら目を閉じたけど。
次に目を開けた時にはもう朝だった。
「店のことは気にしなくていいから。元気でやるのよ」
「母さんも、元気で」
駄目だ、私。
ここまで来て迷ってる。
・・・・どう、しよう。
「こらアコ。私はあんたにそんな顔させる為に育ててきた訳じゃないわ。あんたの目標は!?」
「・・・・っ赤髪さん達に美味しいご飯を食べさせること!麦わらのルフィ君に美味しいご飯を食べてもらうこと!」
「よし、行って来なさい!」
「行ってきます!」
やっぱり私は駄目だ。
最後まで母さんに甘えた。
今まで支えられてきた、けど。
これからは1人で立っていかなきゃ。
気合いを入れなおして、
出発日日和の青空を見上げた。
+旅立ち 終+