何度でも、君と
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「今週の日曜日・・・・あ、ごめんなさい予定が」
『予定?』
「高校時代の友達の結婚式なんです」
あれからなるべくすれ違いのないように、と暇を見つけては電話をするようにしてる。
今の話題は次いつ会えるか。
『友達・・・・女か?』
「ですよ。成績が常に学年トップで髪が長い美人さんで、気さくないい子だったんですけど」
『覚えてねえな』
「あははっまあ先輩とはあんまり関わりなかったですもんね。とりあえず次に会えるのは再来週ですか」
『我慢出来ない。早くに帰れそうな日があるんだ、泊まりに来ればいい』
ということで。
金曜日、6時半。
駅前のスーパーで今日は何を作ろうか、と買い物。
結論。
カレーが1番楽。
おかずあれこれ作らないで済むし。
「有難う御座いましたまたお越し下さいませー」
適当に買って袋詰め。
そのまま店を出てシャンクスの家に向かった。
ここからなら遠くないし。
「ねえ、貴女」
「・・・・・・・・・・・・・私ですか?」
後ろから突然声をかけられた。
声の主は綺麗な女の人。
あれ、どこかで会ったことある。
「社長の恋人さんでしょう?」
社長。ってことは、
「あ、シャンクスの美人秘書さん」
「あら、美人なんて嬉しい。貴女のおかげで最近社長の機嫌が良くて楽になったんですよ」
「・・・・・・シャンクスがご迷惑をおかけしてます」
それまではやっぱり大変だったのね、と思わず苦笑して頭を下げた。
「もしかしてこれから社長の家に?」
「あ、はい」
そう頷けば、秘書さんは私の耳に口を近づけた。
「社長のことなんだけど、今日もしかしたら浮気してるかもしれないので気をつけて下さいね」
小声でそう呟かれて、私は耳を疑った。
・・・・・・・・・・・・・・浮気?
「今日は私も他の人も定時で帰らせてるんです。電話しても出なかったら疑った方がいいかもしれませんよ」
「・・・・・・そう、ですか」
「変なこと言ってごめんなさいね。でも私心配で」
「いいえ、有難う御座います」
お礼を言うと、それじゃあ、と言って彼女は去って行った。
秘書さんの顔も声もとても真剣で。
きっと本当に心配してくれてるんだろうと思う。
・・・・・・・・・・・浮気、かぁ。
脳裏に蘇るあの場面。
でも心では全然信じてない自分も居る。
電話。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・カレーにいっぱいガラムマサラ入れてもいいか聞こうかな」
『シャンクス』の文字を見つめて数秒。
私は通話のボタンを押した。
何回かのコール音の後、
『ただいま電話に出ることが出来ません。御用の方はぴーっという発信音の後にお名前とメッセージを』
というお決まりの台詞。
・・・・・・・・・でも何か、
浮気っていう感じしない。
ベンさんと2人で残業でもしてるんじゃないだろうか。
と思うのは逃げかな。
不安がまったくないと言ったら嘘になるけど。
とりあえず家に行って待とうと決めて歩き出した時、電話の着信。
「もしもし?」
『アコ、何かあったか?』
いつもと変わらないシャンクスの声。
「いえ、あの。・・・・・・・怒らないで下さいね?」
『・・・・・・・・・何だ?』
「さっき秘書さんに会って、シャンクスが今頃浮気してるんじゃないかって」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・アコ今何処に居る?』
「え、えと駅前のスーパー出たとこです」
『わかった』
シャンクスはそれだけ言うと電話を切ってしまった。
・・・・・・・・・・・何がわかったの?
呆然と携帯を見つめて、
まあいっか。と歩き出した。
再び歩き出して数分。
「アコ」
シャンクスの、私を呼ぶ声。
・・・・・・・・・あれ、空耳。
ふと車道を見ると、見慣れた車が私のすぐ横で止まった。
「・・・・・・・・・・・・・・は?」
「今日の夕飯は?」
言いながらその車から降りてきたのは、
シャンクス本人で。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・カレー、です」
驚きを隠せない私がぽつりと答えればぎゅうっと抱きしめられた。
「不安にさせたか?」
「ちょっとだけ。・・・・ベンさんと残業ですか?」
「ああ。今日はノー残業デーだ。俺とベンを除いて、な」
うん。まあ、そんなことかなとは思ってたけど。
「私また邪魔しちゃいましたね・・・・」
「いいさ。一緒に帰ろう」
「え、さすがにそれはマズイのでは」
「アコを不安にさせたまま1人にはさせねえよ。言っただろう?もうアコを傷つけない」
そう言うシャンクスの携帯がさっきから鳴りっ放しで。
「・・・・・・・シャンクス、電話」
「これだな」
やっと鳴り止んだ携帯電話。
着信履歴20件。
相手は全部同じ。
画面にうつし出された文字は、
『ベン』
「ベンさん可哀想」
「最近頑張ってたんだ。今日くらい許してもらう。ベンにももう帰るように言っておく」
「・・・・・・・・・・いいんですか?」
「明日頑張る」
こうなったらもう私がどんなに言っても聞かないので、
ベンさんに心から謝罪しながら私はシャンクスと手を繋いだ。
「そういや結婚式は明後日だったな」
カレーを食べ終えて食後の紅茶を楽しんでいると、シャンクスが思い出したように呟いた。
「はい。友達の地元の駅近くの式場で」
「二次会は?」
「行きませんけど」
「着てく服はどんなのだ?」
「これです」
以前着た時に撮った写真が携帯に残っていたので、それを表示して見せた。
するとシャンクスは苦々しく顔を歪ませた。
「可愛すぎじゃないか?変な男に絡まれたらすぐ電話しろよ」
「・・・・・・・・・大袈裟ですよ」
「大袈裟じゃない。帰りも誰かに迎えに行かせるから連絡してくれ」
「・・・・・・・はーい」
絶対大袈裟だと思うんだけど、嬉しい気持ちのほうが大きいので大人しく頷いた。
そして、開発中に試飲した時よりかなり美味しくなったアップルティーを飲みながら、
ゆっくりと流れる時間。
ふと、
「アコ」
真面目な声音でシャンクスに名前を呼ばれて顔を見れば、真剣な眼差しとかち合った。
「ムードなくて悪いんだが」
そう言ってすっと出したシャンクスの手には小降りの箱。
箱の中にあったのは、
繊細な細工が施された細身のシルバーのリング。
真ん中に存在感のあるダイヤモンドの指輪。
「結婚。してくれないか?」
「・・・・・・・・・・・・・・わ、わんもあぷりーず」
思わずそう返せば、シャンクスは私の心臓を抉るような不敵な笑みを浮かべた。
「俺と結婚してくれ、アコ」
+ムードはないけど 終+