Elysionのパロ夢小説
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Yield
(夢主 視点)
あの人──『藤原一裕』 の事が。
産まれた頃から少し嫌いだった。
だった筈なのに……なんで?
あの人の事が気になって……頭から離れない。
好きになっちゃいけない人なのに。
お父さんにはお母さんが居るのに。
好きになる心算なんて……さらさらなかったのに。
私はお父さんの事を好きになってしまった。
この気持ちを伝える日が、いつか来るのかな……?
『一人娘は せっせと種を蒔く
変わらぬ過去に 訪れぬ未来に』
幼い頃、誰かから種をもらった。
確か、甘い果実が生る木の種だったと思う。
種を庭に植えると、如雨露で水を撒く。
比較的成長の早い品種らしいが、私が独り立ちするまでに実が生るかな?
飽き性の私には育てられないんじゃないかと、お父さんは心配していた。
『不毛な行為と 君は笑うだろうか?
それなら君は 幸せなんだろうね……』
種を蒔いたその年の冬、雪が降った。
種の上に雪が積もる。
積雪が溶ける頃、種から芽が出た。
『根雪の下で春を待つの 夏が過ぎれば実りの秋ね……』
芽が木になると共に、私も少女から女性へと成長する。
二十歳の誕生日を両親が祝ってくれた。
家族四人で、いつもより豪華な食事が並ぶテーブルを囲む。
お酒大好きなお父さんも、私の初めての晩酌に付き合ってくれた。
その日は呑み過ぎたのか、母は机に突っ伏して眠ってしまう。
「もぉ……お母さんったら。こんな所で寝てたら風邪ひくよ?」
毛布を持ってくると母の肩にそっとかけた。
食事を済ませた妹も、自室に戻って。
お父さんを見ると泥酔してクラクラしている。
「大丈夫? ……お父さん……」
お父さんの腕を肩に乗せ、大きなその身体を引き摺る様に寝室へと運んだ。
ベッドの上にお父さんを寝かせる。
私も就寝しようと、親の寝室を後にしようとした、その時だった。
私の腕をお父さんが掴む。
振り向くと、薄っすら意識がまだ残ってるお父さんは、誰かの名前を呟いた。
「……美沙ぁ……?」
それは、母の名前だった。
きっと私の事をお母さんと勘違いしているのだろう。
不意に学校で友達に言われた事を思い出す。
〈ミサってさ、お母さんには似てるけど、お父さんにはにてないよね?〉
それもその筈だ。
私とお父さんは。
血の繋がっていない親子なんだもの。
*****
それは、ある日の事だった。
私は、母親の私物の中からとある書類を見つけた。
『DNA鑑定』と書かれた数枚の資料。
それは、私とお父さんの血が繋がっていない事を決定づける書類だった。
その書類を片手に、母親に詰め寄ると。
お母さんは真実を話してくれた。
結婚する直前まで、お母さんはお父さんに隠れて違う男と付き合っていたらしい。
その男との間に生まれたのが、私だった。
しかし身籠った事を結婚した後に知った母は、お父さんには嘘をついて産んだそうだ。
「でも……大丈夫。あなたは正真正銘、私とお父さんの子だから」
安心させるように微笑む母。
「ありがとう」
私は笑顔を装った。
嬉しくない。
でもこれで解った。
お父さんと私は、他人だ。
私は、血縁者ではなく、ちゃんと他人と恋をしたのだ。
*****
『一夜限りの 情事(ゆめ)でも構わない
それをも女は 永遠に出来るから』
私の腕を掴む、その太くて長い指を見詰める。
ふと、私は悪巧みを思いついた。
アップにしていた髪を解く。
髪を降ろすと、私はますます母に似ているらしいから。
父への恋心に気が付いてから、お父さんに女として意識してもらいたくて、ずっと母の格好を真似てきた。
髪も伸ばし始めた。
結局は女としてじゃなくて、母として見られただけだったけど。
『不毛な恋と 君は笑うだろうか?
やっぱり君は 幸せなんだろうね……』
でも……それでも良い。
だったらそれを利用するまでよ。
服を脱ぎ捨てあの人に跨る。
衣服を開けだせると、そのまま一方的に肌を重ね合わせた。
自分の中に種が残った事に、その時の私は何となく気が付いていた。
『凍える夜は夢を見るの 夏が過ぎれば思いが実る……』
お腹が大きくなってきて隠す事が難しくなってきた。
その為、お腹に子供が居ることを、お父さんとお母さんに告げる事にした。
もちろん聞かれたのは、子供の父親。
一瞬、お父さんに「貴方の子です」って、真実を告白しかけた。
言いかけて、口を紡いで。
「別れた彼氏との子だよ」
と適当な嘘を吐いた。
産みたいのか問われ、私は肯定した。
幸いにも優しい両親で、産むことを許してくれた。
月日が経って私は子供を産む。
この腕に抱いた愛おしい我が子は、どこかお父さんに似ている気がした。
『3……不安定な数字
3-1……模範的な数式
問題となるのは個の性質ではなく 唯……記号としての数量
世界が安定を求める以上 早くどれか一つを引かなければ……』
もし、お父さんとお母さんが離婚したらどうなるのかな?
ある日に、庭に植えた種の事を思い出す。
庭に出て、木を見て私は驚いた。
赤い果実が三つも生っていたから。
振り返ると──お父さんが立っていた。
愛し過ぎて胸がキュンとして、思わずその胸に飛び込んだ。
「ど、どないしてん?」
その大きな体を抱き寄せて。
素直に溢れ出る気持ちを口にした。
「好き」
もう隠したくない。
「お父さんが……好き」
「……」
「何か言ってよ」
お父さんは私の両肩に手を置いて、体を離した。
「……親子やで、俺ら」
「違う! 貴方は知らないかも知れないけど、私達血が繋がってないのよ! だから親子じゃないわ!」
「…………知っとったよ」
「え」
「お母さんに聞かされとったから」
「知ってた……の? 親子じゃないって? ……なら、良いじゃない!」
どうして?
なんで?
お父さんは、苦しそうな顔を逸らすばかりで。
「血ぃ繋がってへんかったとしても……ミサの事、異性として見れへんよ」
そりゃあ、そっか。
『何故人は恋をする 相応しい季節に出会えないの?
嗚呼……お父さん……お母さん』
──それでも私は幸せになりたいのです……。
落胆する。
空っぽになった恋心。
力なく俯く。
雑草を刈る用の鎌が落ちているのが目に入った。
そう言えば……使い方によっては、鎌でも人の頭を刈れるらしい。
無意識にその鎌を拾い上げた。
背を向けるお父さんの首に向かって鎌を握った手を振り下ろす。
『恋心 甘い果実 真っ赤な果実
もぎ獲れないのなら 刈り取れば良いと……
嗚呼……でもそれは首じゃないか……』
庭に転がり落ちる果実。
返り血で真っ赤に染まりながら、私はその場を立ち去った。
家の中に入ると、我が子が眠るベビーベッドの前にお母さんが佇んでいた。
赤ん坊の顔を覗き込んで、何かを考えている様子。
「お母さん……何してるの?」
お母さんは振り向かない。
「ねぇ……この子のお父さん……本当に別れた彼氏なの?」
静寂が流れる。
もう隠す必要はない。
私は沈黙を破った。
「お父さんと私の子供だよ、その子」
「……やっぱり」
やっぱり?
そうか。
お母さんは薄々気が付いていたのね。
「やっぱり、産ませるべきじゃなかった……!」
「どうしてっそんな事言うの!? お父さんと私は……親子じゃなのよ!?」
どうして否定するの!?
どうして誰も私の恋を受け入れてくれないの!?
許さない……!
私を否定するモノは……許さない!!
手に握られたまま捨て忘れた鎌を母に向かって振り下ろす。
床にゴトンと大きな果実が落ちた。
真っ赤になった状態で、我が子を見下ろす。
丁度目を覚ますと、私を見て可愛らしく笑った。
嗚呼、貴方だけよ。
私を受け入れてくれるのは。
二人の♀(女)
一人の♂(男)
一番不幸だったのは誰?
落ちた果実……転がる音
余剰な数字……引かれる音
3-1+1-2
──最後に現われたのは『仮面の男』
彼等が消え去った後 一人取り残されたのは誰──
THE END
(夢主 視点)
あの人──
産まれた頃から少し嫌いだった。
だった筈なのに……なんで?
あの人の事が気になって……頭から離れない。
好きになっちゃいけない人なのに。
お父さんにはお母さんが居るのに。
好きになる心算なんて……さらさらなかったのに。
私はお父さんの事を好きになってしまった。
この気持ちを伝える日が、いつか来るのかな……?
『一人娘は せっせと種を蒔く
変わらぬ過去に 訪れぬ未来に』
幼い頃、誰かから種をもらった。
確か、甘い果実が生る木の種だったと思う。
種を庭に植えると、如雨露で水を撒く。
比較的成長の早い品種らしいが、私が独り立ちするまでに実が生るかな?
飽き性の私には育てられないんじゃないかと、お父さんは心配していた。
『不毛な行為と 君は笑うだろうか?
それなら君は 幸せなんだろうね……』
種を蒔いたその年の冬、雪が降った。
種の上に雪が積もる。
積雪が溶ける頃、種から芽が出た。
『根雪の下で春を待つの 夏が過ぎれば実りの秋ね……』
芽が木になると共に、私も少女から女性へと成長する。
二十歳の誕生日を両親が祝ってくれた。
家族四人で、いつもより豪華な食事が並ぶテーブルを囲む。
お酒大好きなお父さんも、私の初めての晩酌に付き合ってくれた。
その日は呑み過ぎたのか、母は机に突っ伏して眠ってしまう。
「もぉ……お母さんったら。こんな所で寝てたら風邪ひくよ?」
毛布を持ってくると母の肩にそっとかけた。
食事を済ませた妹も、自室に戻って。
お父さんを見ると泥酔してクラクラしている。
「大丈夫? ……お父さん……」
お父さんの腕を肩に乗せ、大きなその身体を引き摺る様に寝室へと運んだ。
ベッドの上にお父さんを寝かせる。
私も就寝しようと、親の寝室を後にしようとした、その時だった。
私の腕をお父さんが掴む。
振り向くと、薄っすら意識がまだ残ってるお父さんは、誰かの名前を呟いた。
「……美沙ぁ……?」
それは、母の名前だった。
きっと私の事をお母さんと勘違いしているのだろう。
不意に学校で友達に言われた事を思い出す。
〈ミサってさ、お母さんには似てるけど、お父さんにはにてないよね?〉
それもその筈だ。
私とお父さんは。
血の繋がっていない親子なんだもの。
*****
それは、ある日の事だった。
私は、母親の私物の中からとある書類を見つけた。
『DNA鑑定』と書かれた数枚の資料。
それは、私とお父さんの血が繋がっていない事を決定づける書類だった。
その書類を片手に、母親に詰め寄ると。
お母さんは真実を話してくれた。
結婚する直前まで、お母さんはお父さんに隠れて違う男と付き合っていたらしい。
その男との間に生まれたのが、私だった。
しかし身籠った事を結婚した後に知った母は、お父さんには嘘をついて産んだそうだ。
「でも……大丈夫。あなたは正真正銘、私とお父さんの子だから」
安心させるように微笑む母。
「ありがとう」
私は笑顔を装った。
嬉しくない。
でもこれで解った。
お父さんと私は、他人だ。
私は、血縁者ではなく、ちゃんと他人と恋をしたのだ。
*****
『一夜限りの 情事(ゆめ)でも構わない
それをも女は 永遠に出来るから』
私の腕を掴む、その太くて長い指を見詰める。
ふと、私は悪巧みを思いついた。
アップにしていた髪を解く。
髪を降ろすと、私はますます母に似ているらしいから。
父への恋心に気が付いてから、お父さんに女として意識してもらいたくて、ずっと母の格好を真似てきた。
髪も伸ばし始めた。
結局は女としてじゃなくて、母として見られただけだったけど。
『不毛な恋と 君は笑うだろうか?
やっぱり君は 幸せなんだろうね……』
でも……それでも良い。
だったらそれを利用するまでよ。
服を脱ぎ捨てあの人に跨る。
衣服を開けだせると、そのまま一方的に肌を重ね合わせた。
自分の中に種が残った事に、その時の私は何となく気が付いていた。
『凍える夜は夢を見るの 夏が過ぎれば思いが実る……』
お腹が大きくなってきて隠す事が難しくなってきた。
その為、お腹に子供が居ることを、お父さんとお母さんに告げる事にした。
もちろん聞かれたのは、子供の父親。
一瞬、お父さんに「貴方の子です」って、真実を告白しかけた。
言いかけて、口を紡いで。
「別れた彼氏との子だよ」
と適当な嘘を吐いた。
産みたいのか問われ、私は肯定した。
幸いにも優しい両親で、産むことを許してくれた。
月日が経って私は子供を産む。
この腕に抱いた愛おしい我が子は、どこかお父さんに似ている気がした。
『3……不安定な数字
3-1……模範的な数式
問題となるのは個の性質ではなく 唯……記号としての数量
世界が安定を求める以上 早くどれか一つを引かなければ……』
もし、お父さんとお母さんが離婚したらどうなるのかな?
ある日に、庭に植えた種の事を思い出す。
庭に出て、木を見て私は驚いた。
赤い果実が三つも生っていたから。
振り返ると──お父さんが立っていた。
愛し過ぎて胸がキュンとして、思わずその胸に飛び込んだ。
「ど、どないしてん?」
その大きな体を抱き寄せて。
素直に溢れ出る気持ちを口にした。
「好き」
もう隠したくない。
「お父さんが……好き」
「……」
「何か言ってよ」
お父さんは私の両肩に手を置いて、体を離した。
「……親子やで、俺ら」
「違う! 貴方は知らないかも知れないけど、私達血が繋がってないのよ! だから親子じゃないわ!」
「…………知っとったよ」
「え」
「お母さんに聞かされとったから」
「知ってた……の? 親子じゃないって? ……なら、良いじゃない!」
どうして?
なんで?
お父さんは、苦しそうな顔を逸らすばかりで。
「血ぃ繋がってへんかったとしても……ミサの事、異性として見れへんよ」
そりゃあ、そっか。
『何故人は恋をする 相応しい季節に出会えないの?
嗚呼……お父さん……お母さん』
──それでも私は幸せになりたいのです……。
落胆する。
空っぽになった恋心。
力なく俯く。
雑草を刈る用の鎌が落ちているのが目に入った。
そう言えば……使い方によっては、鎌でも人の頭を刈れるらしい。
無意識にその鎌を拾い上げた。
背を向けるお父さんの首に向かって鎌を握った手を振り下ろす。
『恋心 甘い果実 真っ赤な果実
もぎ獲れないのなら 刈り取れば良いと……
嗚呼……でもそれは首じゃないか……』
庭に転がり落ちる果実。
返り血で真っ赤に染まりながら、私はその場を立ち去った。
家の中に入ると、我が子が眠るベビーベッドの前にお母さんが佇んでいた。
赤ん坊の顔を覗き込んで、何かを考えている様子。
「お母さん……何してるの?」
お母さんは振り向かない。
「ねぇ……この子のお父さん……本当に別れた彼氏なの?」
静寂が流れる。
もう隠す必要はない。
私は沈黙を破った。
「お父さんと私の子供だよ、その子」
「……やっぱり」
やっぱり?
そうか。
お母さんは薄々気が付いていたのね。
「やっぱり、産ませるべきじゃなかった……!」
「どうしてっそんな事言うの!? お父さんと私は……親子じゃなのよ!?」
どうして否定するの!?
どうして誰も私の恋を受け入れてくれないの!?
許さない……!
私を否定するモノは……許さない!!
手に握られたまま捨て忘れた鎌を母に向かって振り下ろす。
床にゴトンと大きな果実が落ちた。
真っ赤になった状態で、我が子を見下ろす。
丁度目を覚ますと、私を見て可愛らしく笑った。
嗚呼、貴方だけよ。
私を受け入れてくれるのは。
二人の♀(女)
一人の♂(男)
一番不幸だったのは誰?
落ちた果実……転がる音
余剰な数字……引かれる音
3-1+1-2
──最後に現われたのは『仮面の男』
彼等が消え去った後 一人取り残されたのは誰──
THE END