Elysionのパロ夢小説
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
Ark
(夢主 視点)
カズ兄──藤原一裕はとても綺麗な人だった。
色気があって、人見知りだけど人を笑わせるのが大好きで。
大好きな自慢のカズ兄だった。
私にだけ見せてくれる、優しい笑顔が愛おしくて堪らなかった。
夜、淡い月明かりが差し込む薄暗い部屋でカズ兄と交じり合う。
その時に見せる顔。
これも、私だけのモノ、だった。
ずっとそう思い込んでいた……。
それは雪の日の事。
町中で偶然会ったカズカズ兄の隣には、見知らぬ女の姿があった。
「お兄……ちゃん?」
驚いた様子でこちらへと振り向くカズ兄。
「その人、だぁれ……?」
女性の方に目線だけを向ける。
私とは正反対の、チャラチャラと着飾った女性。
嗚呼、本当はそう言う女 が好みだったのね……。
カズ兄は珍しく動揺している様子だった。
まるで、彼女に浮気している現場を目撃された彼氏のように。
冷たい眼差しでカズ兄を見詰める。
私と女を交互に見たカズ兄は、最終的に女性の方に視線を止めた。
「……彼女や」
「ウソ」
「嘘ちゃう。なんでこんな所で嘘言わなアカンねん」
知るか、そんな事。
カズ兄は女性の肩に腕を回し引き寄せた。
私は……カズ兄に裏切られたんだ。
目の前の出来事が受け入れがたくて、私はその場から逃げ出す。
泣きながら我武者羅に走っていた為、積雪で足を滑らせ盛大に転んでしまった。
体を起こすとその場にしゃがみ込む。
それは何処かの施設の前だった。
綺麗な建物の目の前で私は泣き崩れる。
泣き声を聞きつけたのか、建物から誰かが出て来た。
「どうなさったのですか?」
声の方を見る。
そこにはマントを被った人物が立っていた。
フードを目深に被っている為、顔は見えない。
「お入りなさい」
マントの人物は建物の扉を大きく開き、私を招き入れた。
豪華なソファに腰を降ろすと目の前のテーブルに綺麗なティーカップが置かれ、紅茶が注がれる。
良い香りが鼻をくすぐった。
泣きじゃくっていた私だったが、その香りを嗅いでいたら少しだけ気持ちが少しだけ落ち着く。
「お話しなさい。何があったのですか?」
「……」
「誰かに話す事で救われる事もありますよ」
私は手で涙を拭うと、ついさっきあった出来事とカズ兄への想いを語った。
「そうでしたか……それはお辛かったでしょう」
その人は私の事を優しく抱きしめる。
それが監視卿 との出会いだった。
それから私は、その施設に住み込む事になる。
監視卿 に話すのはいつもカズ兄の事だった。
ある雨の日、監視卿 は何かを私に差し出す。
「我々を楽園へ導ける箱舟は、哀れなる魂を大地から解き放つ。救いを求める貴女にArkを与えよう」
それはナイフだった。
『Arkと呼ばれた物(それ)は月光を受けて銀色に煌めいた……』
両手を広げてArkを受け取る。
脳裏で監視卿 の言葉を思い起こした。
我々=生者?
楽園=天国?
箱舟=何? 誰?
哀れなる魂=お兄ちゃん?
大地=現世?
Ark=このナイフ?
私はナイフを握りしめると立ち上がり、その場を後にする。
会いに行かなくては。
カズ兄に。
楽園へ導かなくては。
お兄ちゃんを──。
建物から出ると、そこにはカズ兄の姿があった。
「ミサ……」
カズ兄は心配そうな表情をしている。
「お兄ちゃん……私、お兄ちゃんが大好き。お兄ちゃんを愛してるの」
「……。俺は」
一旦唇を閉ざしたカズ兄は、苦しそうに表情を歪めると再び口を開く。
『想い出まで裏切った 冷たい言葉の雨』
どうして?
どうしてそんな事言うの?
どうしてしまったの……お兄ちゃん……。
止んだ筈の涙が再び溢れ出してくる。
やはり導かなくては……。
私が……お兄ちゃんを。
『幸せだった二人永遠 に届かなくなる前に……』
「ねぇ何故変わってしまったの? あんなにも愛し合っていたのに……」
涙を微笑みに換え詰め寄る。
《Arkと呼ばれた物》 を握って……。
──愛憎の箱舟 。
その薄い胸に飛び込むように、カズ兄の左胸にナイフを突き立てた。
『さぁ、楽園へ還りましょう? お兄ちゃん……』
高笑う私の声が、その場に響き渡る──。
*****
(藤原 視点)
婚約者の山口美沙と会っている所を見られたあの日から、妹──ミサが家に帰って来んくなった。
いつも二人で過ごしていた夜を、独りで過ごす日々。
ミサ……何処に行ってもうてん。
一応、連絡はつくけど……。
数か月経ったある日。
俺はたまたまミサの姿を見つけた。
ミサは、最近有名な新興宗教団体の建物の中に居った。
『信じてたその人に裏切られた少女。
逃げ込んだ楽園は信仰という狂気。
新しい世界へと羽ばたける自己暗示。
澄み渡る覚醒は進行という凶器』
今すぐにでもミサを連れ出したい所やけど、門の前には警備員が居て関係者以外は入れてくれそうもない。
ミサの奴、一体どうやって此処に入ってん。
まさかこの教団の宣教師にでも騙されてんのか?
ええ解決策が見い出せへんまま、俺は手を拱く。
いつかミサが出て来てくれる事を信じて、俺はその教団へと通い詰めた。
ある雨の日。
やっとミサが教団の建物から出て来る。
俺と鉢合わせになったミサは、何故か俺に愛の告白をし始めた。
俺は、ミサを傷つけたなかった。
ホンマはその愛を受け入れたかった。
けど、とある言葉を思い出し口を閉ざす。
それは婚約者の美沙の言葉やった。
「まさか……本当に妹さんに恋してる訳じゃないよね?」
「それが本当だったとしたら……」
「マジでキモい」
俺は気が付いてしもた。
ミサへの愛は、汚れた気持ちやったって事を。
俺は口を開いた。
想い出まで裏切った、冷たい言葉の雨をミサへと降り注ぐ。
悲しそうなミサの表情が、忘れられへん。
ミサは俺の胸へと飛び込んで来た。
瞬間、左胸に鋭い痛みが走る。
ミサが持っていた何かに、胸を刺された。
俺はその場で膝を付く。
意識が遠退いて。
力を失い、地面へと倒れ込んだ。
『最期の瞬間に廻った 歪な愛の記憶』
ミサと初めて肌を重ねたあの夜から、今の今までの記憶が走馬灯のように駆け巡った。
婚約者と歩いている所をミサに見つかった時……。
俺は付き合っていると言うてしもた。
『脆弱な精神 が堪えきれず あの日嘘を吐いた……』
ミサと愛し合う事。
それは許される事ちゃう。
そんな事わかっとった。
わかっとったけど……。
『律すれば律する程堕ちる 赦されぬ想いに灼かれながら
まぐわう傷は深く甘く 破滅へ誘う……』
──背徳の箱舟 。
『さぁ、楽園へ還りましょう? お兄ちゃん……』
ミサの悲し気な高笑いが、徐々に遠退いてく──。
THE END
(夢主 視点)
カズ兄──藤原一裕はとても綺麗な人だった。
色気があって、人見知りだけど人を笑わせるのが大好きで。
大好きな自慢のカズ兄だった。
私にだけ見せてくれる、優しい笑顔が愛おしくて堪らなかった。
夜、淡い月明かりが差し込む薄暗い部屋でカズ兄と交じり合う。
その時に見せる顔。
これも、私だけのモノ、だった。
ずっとそう思い込んでいた……。
それは雪の日の事。
町中で偶然会ったカズカズ兄の隣には、見知らぬ女の姿があった。
「お兄……ちゃん?」
驚いた様子でこちらへと振り向くカズ兄。
「その人、だぁれ……?」
女性の方に目線だけを向ける。
私とは正反対の、チャラチャラと着飾った女性。
嗚呼、本当はそう言う
カズ兄は珍しく動揺している様子だった。
まるで、彼女に浮気している現場を目撃された彼氏のように。
冷たい眼差しでカズ兄を見詰める。
私と女を交互に見たカズ兄は、最終的に女性の方に視線を止めた。
「……彼女や」
「ウソ」
「嘘ちゃう。なんでこんな所で嘘言わなアカンねん」
知るか、そんな事。
カズ兄は女性の肩に腕を回し引き寄せた。
私は……カズ兄に裏切られたんだ。
目の前の出来事が受け入れがたくて、私はその場から逃げ出す。
泣きながら我武者羅に走っていた為、積雪で足を滑らせ盛大に転んでしまった。
体を起こすとその場にしゃがみ込む。
それは何処かの施設の前だった。
綺麗な建物の目の前で私は泣き崩れる。
泣き声を聞きつけたのか、建物から誰かが出て来た。
「どうなさったのですか?」
声の方を見る。
そこにはマントを被った人物が立っていた。
フードを目深に被っている為、顔は見えない。
「お入りなさい」
マントの人物は建物の扉を大きく開き、私を招き入れた。
豪華なソファに腰を降ろすと目の前のテーブルに綺麗なティーカップが置かれ、紅茶が注がれる。
良い香りが鼻をくすぐった。
泣きじゃくっていた私だったが、その香りを嗅いでいたら少しだけ気持ちが少しだけ落ち着く。
「お話しなさい。何があったのですか?」
「……」
「誰かに話す事で救われる事もありますよ」
私は手で涙を拭うと、ついさっきあった出来事とカズ兄への想いを語った。
「そうでしたか……それはお辛かったでしょう」
その人は私の事を優しく抱きしめる。
それが
それから私は、その施設に住み込む事になる。
ある雨の日、
「我々を楽園へ導ける箱舟は、哀れなる魂を大地から解き放つ。救いを求める貴女にArkを与えよう」
それはナイフだった。
『Arkと呼ばれた物(それ)は月光を受けて銀色に煌めいた……』
両手を広げてArkを受け取る。
脳裏で
我々=生者?
楽園=天国?
箱舟=何? 誰?
哀れなる魂=お兄ちゃん?
大地=現世?
Ark=このナイフ?
私はナイフを握りしめると立ち上がり、その場を後にする。
会いに行かなくては。
カズ兄に。
楽園へ導かなくては。
お兄ちゃんを──。
建物から出ると、そこにはカズ兄の姿があった。
「ミサ……」
カズ兄は心配そうな表情をしている。
「お兄ちゃん……私、お兄ちゃんが大好き。お兄ちゃんを愛してるの」
「……。俺は」
一旦唇を閉ざしたカズ兄は、苦しそうに表情を歪めると再び口を開く。
『想い出まで裏切った 冷たい言葉の雨』
どうして?
どうしてそんな事言うの?
どうしてしまったの……お兄ちゃん……。
止んだ筈の涙が再び溢れ出してくる。
やはり導かなくては……。
私が……お兄ちゃんを。
『幸せだった二人
「ねぇ何故変わってしまったの? あんなにも愛し合っていたのに……」
涙を微笑みに換え詰め寄る。
──愛憎の
その薄い胸に飛び込むように、カズ兄の左胸にナイフを突き立てた。
『さぁ、楽園へ還りましょう? お兄ちゃん……』
高笑う私の声が、その場に響き渡る──。
*****
(藤原 視点)
婚約者の山口美沙と会っている所を見られたあの日から、妹──ミサが家に帰って来んくなった。
いつも二人で過ごしていた夜を、独りで過ごす日々。
ミサ……何処に行ってもうてん。
一応、連絡はつくけど……。
数か月経ったある日。
俺はたまたまミサの姿を見つけた。
ミサは、最近有名な新興宗教団体の建物の中に居った。
『信じてたその人に裏切られた少女。
逃げ込んだ楽園は信仰という狂気。
新しい世界へと羽ばたける自己暗示。
澄み渡る覚醒は進行という凶器』
今すぐにでもミサを連れ出したい所やけど、門の前には警備員が居て関係者以外は入れてくれそうもない。
ミサの奴、一体どうやって此処に入ってん。
まさかこの教団の宣教師にでも騙されてんのか?
ええ解決策が見い出せへんまま、俺は手を拱く。
いつかミサが出て来てくれる事を信じて、俺はその教団へと通い詰めた。
ある雨の日。
やっとミサが教団の建物から出て来る。
俺と鉢合わせになったミサは、何故か俺に愛の告白をし始めた。
俺は、ミサを傷つけたなかった。
ホンマはその愛を受け入れたかった。
けど、とある言葉を思い出し口を閉ざす。
それは婚約者の美沙の言葉やった。
「まさか……本当に妹さんに恋してる訳じゃないよね?」
「それが本当だったとしたら……」
「マジでキモい」
俺は気が付いてしもた。
ミサへの愛は、汚れた気持ちやったって事を。
俺は口を開いた。
想い出まで裏切った、冷たい言葉の雨をミサへと降り注ぐ。
悲しそうなミサの表情が、忘れられへん。
ミサは俺の胸へと飛び込んで来た。
瞬間、左胸に鋭い痛みが走る。
ミサが持っていた何かに、胸を刺された。
俺はその場で膝を付く。
意識が遠退いて。
力を失い、地面へと倒れ込んだ。
『最期の瞬間に廻った 歪な愛の記憶』
ミサと初めて肌を重ねたあの夜から、今の今までの記憶が走馬灯のように駆け巡った。
婚約者と歩いている所をミサに見つかった時……。
俺は付き合っていると言うてしもた。
『脆弱な
ミサと愛し合う事。
それは許される事ちゃう。
そんな事わかっとった。
わかっとったけど……。
『律すれば律する程堕ちる 赦されぬ想いに灼かれながら
まぐわう傷は深く甘く 破滅へ誘う……』
──背徳の
『さぁ、楽園へ還りましょう? お兄ちゃん……』
ミサの悲し気な高笑いが、徐々に遠退いてく──。
THE END
1/6ページ