ライセンス藤原一裕の夢小説
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言えなかった一言
(夢主 視点)
“言えなかった一言”
なんて。
一言じゃ足りないぐらい。
沢山ある。
*****
私と藤原さんは、中学の同級生だった。
けれど、学校を卒業してからは会ってなくて。
再会したのは社会人になってからで。
偶然、吉本興業の本社で会った。
私はマネージャーとして。
藤原さんは芸人として。
再会してすぐ、私達は交際を始めた。
その数年後。
藤原さんは。
私以外の女 と。
結婚した──。
バレンタインの四日前の二十三時頃。
好き[[rb:だった>、、、]]人──藤原一裕の第二子が去年の四月に誕生していることを、スマホに映し出されるその人のSNSで知らされた。
本来ならば喜ばしい事なんだろう。
子供が産めれたわけだし。
けど。
私には、一生。
「喜べない」
本当なら、あー、とか、うー、とか叫びながら、のたうち回りたいキブンなのに。
夜中だから叫ばないし、のたうち回る所家族に見られたくないからのたうち回わらないけどね。
兎に角、私にとっては喜べない事実な訳であって。
それはどうしてかって言うと……。
好き[[rb:だった>、、、]]とは言え、私はまだ藤原さんに未練がある。
私の方が先に好きだったのに、って。
画面に映る、藤原さんの、父親の顔に。
虫唾が走った。
*****
「おはようございます」
「お……おはよ」
仏頂面の私に、藤原さんがたじろぐ。
「え……なんでそんな不機嫌なん……?」
「別に、いつもこうですけど?」
自分で言うのもなんだけど、事実、藤原さんが結婚してから、私の彼に対する辺りが厳しくなった。
だから、今更、なのだが……。
昨夜のこともあって、私の機嫌は最強に悪い。
マネージャーとしても、一端の社会人としても、間違った姿なのは分かってる。
けど、やっぱりどうしても私は、藤原さんのことが許せなかった。
第二子の事を知らされなかった事も腹立たしいが。
改めて、藤原さんが家族で売れて行こうとする方針が、その考え方が許せないと感じたから。
今日は、藤原さんに笑顔を見せる事は出来なさそうだ。
私と藤原さんしか居ない楽屋に、図書館張りの静けさが走る。
私はもちろん話しかける心算はないが、藤原さんも私にビビッて話しかけられないらしい。
相変わらず小心者め。
するとその静けさを破るように、少し遅れて来た井本さんが廊下に居るスタッフと談笑しながら楽屋のドアを開けた。
「あ、井本さん。おはよーございます」
藤原さんの時とは違って、明るい声で、笑顔で井本さんに挨拶する。
え、なんで!? と言いたげな藤原さんの視線が私に刺さってくるのを感じながら。
傍から見れば、大人気ない事をしているように見えるのは分かってる。
けど。
私は、苛つく相手に向ける笑みを持っていないし、井本さんには関係のない事だと思うから。
本番数分前になり、私はライセンスの二人と共にスタジオへと向かった。
スタジオの端にある溜まり場へとやって来ると、井本さんは早速先輩芸人さんのもとへ話しかけに行ってしまう。
私はプロデューサーさんやスタッフさん達に挨拶を済ませると、意外な人物が私のもとへやってきた。
「ミサ……ちょっとええ?」
「…………」
藤原さんだ。
この期に及んで下の名前で呼んでくるとか。
余計に腹が立つ。
「なんですか?」
「……その、棘のある話し方やめてくれへん?」
「本番まで時間ありませんよ? 早く本題に入ってください」
「……なに怒ってんの?」
「怒ってません」
「怒ってるやろ? ちかも俺に」
私はギロリと藤原さんを見上げた。
無駄に背が高いから、この人の顔見てると首凝るんだよなぁ。
「私、知りませんでした。藤原さんに第二子が産まれてたなんて」
「それは……しゃあなかってん」
私がライセンスのマネージャーに就いたのは、第二子が産まれた後だ。
たまたま産まれた事を知らされていなかったとしても無理はない。
そんなこと、分かっている。
分かっているけど。
腹が立つ。
「そんな事で怒ってんの?」
「そんなこと ……!?」
大事なことなんじゃないの!?
一大事でしょ!?
子供が産まれたなんて!?
「……一裕 にとって、私はどうでもいい存在なんだね。そりゃそっかぁ……もう別れてるんだし」
ついつい敬語を忘れてしまった。
いつまで彼女面する心算なんだろ、私。
もういい加減諦めなきゃ。
私はちゃんと藤原さんに向き直った。
「藤原さん」
「お、おん……」
「大人気ない言動をしました。反省して、仕事に集中します。申し訳ありませんでした」
藤原さんに向かって、私は深々とお辞儀をしてみせる。
「俺はっ、謝ってほしいんちゃうくて……」
その言葉を遮るように、収録の始まりをフタッフさんが告げた。
「ほら、本番ですよ」
続々とスタジオに入って行く出演者達の方へ、藤原さんの背中を押して誘う。
戸惑った様子で後ろ髪を引かれながらスタジオに向かう藤原さんの姿を、私は黙って見送った。
私は、藤原さんに。
好き、も。
大好き、も。
愛してる、も。
愛を伝える言葉を、幾度も言ってきた。
けれど。
“言えなかった一言”
なんて。
一言じゃ足りないぐらい。
沢山あって。
嫌い、も。
大嫌い、も。
憎たらしい、も。
憎悪の言葉は、今も言えずにいる。
でも。
今、私が藤原さんに言いたい言葉は。
たった一言。
“さようなら”
この言葉だけは。
いつになっても言えないだろう。
藤原さんが死亡でもしなければ──。
THE END
(夢主 視点)
“言えなかった一言”
なんて。
一言じゃ足りないぐらい。
沢山ある。
*****
私と藤原さんは、中学の同級生だった。
けれど、学校を卒業してからは会ってなくて。
再会したのは社会人になってからで。
偶然、吉本興業の本社で会った。
私はマネージャーとして。
藤原さんは芸人として。
再会してすぐ、私達は交際を始めた。
その数年後。
藤原さんは。
私以外の
結婚した──。
バレンタインの四日前の二十三時頃。
好き[[rb:だった>、、、]]人──藤原一裕の第二子が去年の四月に誕生していることを、スマホに映し出されるその人のSNSで知らされた。
本来ならば喜ばしい事なんだろう。
子供が産めれたわけだし。
けど。
私には、一生。
「喜べない」
本当なら、あー、とか、うー、とか叫びながら、のたうち回りたいキブンなのに。
夜中だから叫ばないし、のたうち回る所家族に見られたくないからのたうち回わらないけどね。
兎に角、私にとっては喜べない事実な訳であって。
それはどうしてかって言うと……。
好き[[rb:だった>、、、]]とは言え、私はまだ藤原さんに未練がある。
私の方が先に好きだったのに、って。
画面に映る、藤原さんの、父親の顔に。
虫唾が走った。
*****
「おはようございます」
「お……おはよ」
仏頂面の私に、藤原さんがたじろぐ。
「え……なんでそんな不機嫌なん……?」
「別に、いつもこうですけど?」
自分で言うのもなんだけど、事実、藤原さんが結婚してから、私の彼に対する辺りが厳しくなった。
だから、今更、なのだが……。
昨夜のこともあって、私の機嫌は最強に悪い。
マネージャーとしても、一端の社会人としても、間違った姿なのは分かってる。
けど、やっぱりどうしても私は、藤原さんのことが許せなかった。
第二子の事を知らされなかった事も腹立たしいが。
改めて、藤原さんが家族で売れて行こうとする方針が、その考え方が許せないと感じたから。
今日は、藤原さんに笑顔を見せる事は出来なさそうだ。
私と藤原さんしか居ない楽屋に、図書館張りの静けさが走る。
私はもちろん話しかける心算はないが、藤原さんも私にビビッて話しかけられないらしい。
相変わらず小心者め。
するとその静けさを破るように、少し遅れて来た井本さんが廊下に居るスタッフと談笑しながら楽屋のドアを開けた。
「あ、井本さん。おはよーございます」
藤原さんの時とは違って、明るい声で、笑顔で井本さんに挨拶する。
え、なんで!? と言いたげな藤原さんの視線が私に刺さってくるのを感じながら。
傍から見れば、大人気ない事をしているように見えるのは分かってる。
けど。
私は、苛つく相手に向ける笑みを持っていないし、井本さんには関係のない事だと思うから。
本番数分前になり、私はライセンスの二人と共にスタジオへと向かった。
スタジオの端にある溜まり場へとやって来ると、井本さんは早速先輩芸人さんのもとへ話しかけに行ってしまう。
私はプロデューサーさんやスタッフさん達に挨拶を済ませると、意外な人物が私のもとへやってきた。
「ミサ……ちょっとええ?」
「…………」
藤原さんだ。
この期に及んで下の名前で呼んでくるとか。
余計に腹が立つ。
「なんですか?」
「……その、棘のある話し方やめてくれへん?」
「本番まで時間ありませんよ? 早く本題に入ってください」
「……なに怒ってんの?」
「怒ってません」
「怒ってるやろ? ちかも俺に」
私はギロリと藤原さんを見上げた。
無駄に背が高いから、この人の顔見てると首凝るんだよなぁ。
「私、知りませんでした。藤原さんに第二子が産まれてたなんて」
「それは……しゃあなかってん」
私がライセンスのマネージャーに就いたのは、第二子が産まれた後だ。
たまたま産まれた事を知らされていなかったとしても無理はない。
そんなこと、分かっている。
分かっているけど。
腹が立つ。
「そんな事で怒ってんの?」
「
大事なことなんじゃないの!?
一大事でしょ!?
子供が産まれたなんて!?
「……
ついつい敬語を忘れてしまった。
いつまで彼女面する心算なんだろ、私。
もういい加減諦めなきゃ。
私はちゃんと藤原さんに向き直った。
「藤原さん」
「お、おん……」
「大人気ない言動をしました。反省して、仕事に集中します。申し訳ありませんでした」
藤原さんに向かって、私は深々とお辞儀をしてみせる。
「俺はっ、謝ってほしいんちゃうくて……」
その言葉を遮るように、収録の始まりをフタッフさんが告げた。
「ほら、本番ですよ」
続々とスタジオに入って行く出演者達の方へ、藤原さんの背中を押して誘う。
戸惑った様子で後ろ髪を引かれながらスタジオに向かう藤原さんの姿を、私は黙って見送った。
私は、藤原さんに。
好き、も。
大好き、も。
愛してる、も。
愛を伝える言葉を、幾度も言ってきた。
けれど。
“言えなかった一言”
なんて。
一言じゃ足りないぐらい。
沢山あって。
嫌い、も。
大嫌い、も。
憎たらしい、も。
憎悪の言葉は、今も言えずにいる。
でも。
今、私が藤原さんに言いたい言葉は。
たった一言。
“さようなら”
この言葉だけは。
いつになっても言えないだろう。
藤原さんが死亡でもしなければ──。
THE END