バイオレント・バイオレンス
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今日は堅苦しい授業が無いせいか浮き足立つ生徒たちの雰囲気に、最早学校全体が呑まれきっていた。
おまけに性別関係なく男子も女子も、教師さえも盛り上がりを見せ、そこら中を熱気が駆け巡る。
至るところから甲高い声と野太い声、またはそれらがおり混ざった声が上がり、耳を通り抜けていく。
今日は何といっても球技大会、その日であった。
一般に、同じ運動が関わる体育祭とは違い、球技大会は何となく盛り上がりに欠けるイメージではあるが、うちはそれとは程遠くそもそも正反対と云えるだろう。元々運動部が盛んなこともあり、身体を動かすことには何かと力を入れる学校だ。そうすれば当然そんな校風に相応しい生徒が集まるわけで、そんな生徒が多く居れば盛り上がるのは当然なのかもしれない。何処のクラスも優勝目指し試合に応援にと活気づいている。
うちのクラスもその例外ではなく、俺はそんな彼らの声援が飛び交う試合の真っ最中であった。
競技はサッカーで、小学生の頃に昼休み級友と、その後は体育の授業でやったくらいのそれは普段やらない足でのボール回しに慣れない感じが何処か否めなかった。いまいち気も入らず、適当にボールを蹴り、目だけでコート周辺を見回す。するとクラスの面々の中に紛れる見覚えのある派手な髪色を見つけた。しかしおそらく試合前だったのだろう。程なくして同じクラスと見られる人間に連れて行かれた。
少し視線を外し、今度はさらに奥のほうの校舎へ目を向けると何処に視線をやっているかはそれぞれだが窓から顔を出し校庭を見ている生徒がちらほら見えた。奥から手前へと視線を動かすうち、学年ごとに異なる色のジャージのなか、その人は居た。一瞬にして吸い込まれるように眼は捕らえられ、離されない。
同色のジャージ。袖を捲り上げ、露出した肘下を窓縁に凭れさせ手の中の缶を傾ける。缶の中身は多分いつも飲んでいるオレンジジュースだ。隣の友人と見られる女子生徒と楽しそうにやり取りをしながら、時折ねめつけるような視線で此方を貫く。この位置からでは表情は窺えず、また確証などただの一つも無いが、そうであると言い切れる自信が俺にはあった。あの一種撫でるような無機質な視線を、俺が間違うはずが無い。間違いなくあれはその身体の裏で息をする彼女の視線だ。
思わず乾いた笑いが込み上げてくる。
あれは彼女の美徳でもあったが、それと同時に悪徳でもあった。それを俺は、よく知っていた。
その後、試合終了の笛が鳴り響き、再びあの窓に目を向けたがもう其処に彼女の姿は無かった。
おまけに性別関係なく男子も女子も、教師さえも盛り上がりを見せ、そこら中を熱気が駆け巡る。
至るところから甲高い声と野太い声、またはそれらがおり混ざった声が上がり、耳を通り抜けていく。
今日は何といっても球技大会、その日であった。
一般に、同じ運動が関わる体育祭とは違い、球技大会は何となく盛り上がりに欠けるイメージではあるが、うちはそれとは程遠くそもそも正反対と云えるだろう。元々運動部が盛んなこともあり、身体を動かすことには何かと力を入れる学校だ。そうすれば当然そんな校風に相応しい生徒が集まるわけで、そんな生徒が多く居れば盛り上がるのは当然なのかもしれない。何処のクラスも優勝目指し試合に応援にと活気づいている。
うちのクラスもその例外ではなく、俺はそんな彼らの声援が飛び交う試合の真っ最中であった。
競技はサッカーで、小学生の頃に昼休み級友と、その後は体育の授業でやったくらいのそれは普段やらない足でのボール回しに慣れない感じが何処か否めなかった。いまいち気も入らず、適当にボールを蹴り、目だけでコート周辺を見回す。するとクラスの面々の中に紛れる見覚えのある派手な髪色を見つけた。しかしおそらく試合前だったのだろう。程なくして同じクラスと見られる人間に連れて行かれた。
少し視線を外し、今度はさらに奥のほうの校舎へ目を向けると何処に視線をやっているかはそれぞれだが窓から顔を出し校庭を見ている生徒がちらほら見えた。奥から手前へと視線を動かすうち、学年ごとに異なる色のジャージのなか、その人は居た。一瞬にして吸い込まれるように眼は捕らえられ、離されない。
同色のジャージ。袖を捲り上げ、露出した肘下を窓縁に凭れさせ手の中の缶を傾ける。缶の中身は多分いつも飲んでいるオレンジジュースだ。隣の友人と見られる女子生徒と楽しそうにやり取りをしながら、時折ねめつけるような視線で此方を貫く。この位置からでは表情は窺えず、また確証などただの一つも無いが、そうであると言い切れる自信が俺にはあった。あの一種撫でるような無機質な視線を、俺が間違うはずが無い。間違いなくあれはその身体の裏で息をする彼女の視線だ。
思わず乾いた笑いが込み上げてくる。
あれは彼女の美徳でもあったが、それと同時に悪徳でもあった。それを俺は、よく知っていた。
その後、試合終了の笛が鳴り響き、再びあの窓に目を向けたがもう其処に彼女の姿は無かった。