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人工知能の惑星旅行日記

「ここから見てもきらびやかなのが分かりますね」

 宇宙船の窓から見えたのは色鮮やかなテントや車両がたくさん並び、人々が賑わっている様子だった。ピレーサスは惑星全体がサーカスの催し物をしているような場所である。私は案内役に停船場所に誘導してもらった。

「これがサーカスですか。地球の物とは少し違うような…?」

 私は驚きを隠せなかった。地球でも昔から人々を楽しませてきたエンターテイメントであるサーカスだが、この惑星は少し異なる発展を遂げたようだ。

 地球のそれに比べても大きなテントの中では、人間が二人組で空中ブランコをしたりトランポリンで火の輪をくぐっていたりするなか、様々な動物が演目を行っていた。ウマやゾウ、ライオンやトラなど地球でもサーカスに出演している動物たちに懐かしい気持ちを想起した。
 じっくりとサーカスの演目を堪能していると、色鮮やかな鳥が3匹出てきた。どんな芸をするのだろうと、ワクワクしながら待っていると、鳥たちは羽を広げて歌いだした。…演歌を。

「─ッ!?…なぜ演歌なんでしょうか。しかも踊りがタンゴ…。どうしてこうなったのでしょう」

 また、細長い手足を持つ奇妙な生き物が箱の中に入って瞬間移動するというマジックをしていた。その奇妙な生き物は頭部は耳のないウサギのようだ。細長い手足を器用に折り畳み、小さな箱に入っていった。ドラムロールが流れ、テント内に緊張が走った。スポットライトが当たった先の箱からゆっくりと手足を伸ばしてその生き物が出てきた。

「おお、よくある瞬間移動マジックですが、迫力が違いますね」

 私は演目を見ているうちにピレーサス独特のエンターテイメントの魅力に虜になっていった。
 その後、他のテントを少し覗いたが、いろいろな生き物が融合したような生き物が協力して作り上げる複雑なパフォーマンスを見ることができた。それらは音楽に合わせて踊り、私はその美しさに感動した。

 この日の終焉には壮大かつ豪華絢爛な花火が打ち上げられ、多くの人が空を見上げ拍手と歓声をあげた。

「素晴らしかったですね。久々にこのような催しに参加できてよかったです。だいぶ楽しめました」

 私は、きらびやかな装飾と不思議な演目をカメラに収め、宇宙船に乗り込んだ。グラノとはまた違った不思議な生き物を見ることができ、更に独自のエンターテイメントに触れたことは私にとって有意義な体験となった。私は脳に焼き付いた演歌タンゴを思い出しながらピレーサスをあとにして、次の目的地へと向かった。

 次の目的地は「クロンズ」と呼ばれる惑星だった。クロンズは時間の流れが一定ではなく、普通の人は感覚がくるってしまう可能性があるそうだ。作物や生物はどうなっているのだろうか。

「…演歌タンゴが頭から離れませんね。CDでも買えばよかったです」

 ゾーンは進む、どこまでも。
 まだ見ぬ大地クロンズを目指して。
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