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人工知能の惑星旅行日記

「ここから見たらまるでくっついてるようです」

 宇宙船の窓から見えたのは2つの惑星がお互いの重力で引き合ったイーデンであった。イーデンは大きいほうの兄惑星カイネと小さいほうの弟惑星エバルで成っている。
 私はカイネの方に船を泊めた。

 カイネは比較的地球の環境に近かった。
 住んでいる種族も人間とほぼ同種と言えるだろう。違うところと言えば、肌の色がベージュや褐色ではない人や耳が長くとがっている人がいることくらいだろうか。
 技術的にも同等であるといえる。道は舗装され車が走り、その脇には高層ビルが建ち並んでいる。私のように高性能なアンドロイドも多く見ることが出来る。

 カイネとエバルは惑星間連絡橋でつながっている。専用の乗り物、通称テレポーターという公共交通機関を使わなくてはいけない。テレポーターはいわゆる瞬間移動装置というわけではなく、乗客にかかる重力を可能な限り軽減させ、なるべく早く往来できる電車のようなものである。
 惑星間は距離にして約10,500kmらしい。車や地域間移動用の電車では何日もかかってしまうだろう。

 ものの20分程度でエバルについた。自分を棚に上げるのはどうかと思うが、技術の発展と進歩というものは恐ろしく速いと感じた。
 カイネを技術都市とするのであれば、こちらは農村部といったところだろうか。果樹園やビニールハウスなど地球で見られる懐かしい景色である。

 これまで訪れた星々があまりにも地球とかけ離れていたせいか、とても落ち着く。宇宙旅行で得た様々な経験をやっと整理できそうだ。緑に囲まれた山や畑、樹に生る色とりどりの果実。そして人々の声。自然と笑みがこぼれてしまいそうだ。

 その後、カイネに戻ってつかの間の地球らしさを満喫した。様々な資材も補給することが出来たので地球に帰還しなくても大丈夫そうだ。

 私は様々な店の紙袋を抱えながら宇宙船に乗り込んだ。これまでの疲れを癒せたと感じた。私は名残惜しい景色を眺めながら、地図で周囲の惑星を見ていた。私はイーデンをあとにして、次の目的地へと向かった。

 次の目的地はグラノだった。この惑星は緑が多く、星全体が森になっているという。見たことのない植物があるのだろうか。

「やはり慣れた環境というのは落ち着きますね。…気分が上がり過ぎて変なものばかり買ってしまった気がしますが」

 ゾーンは進む、どこまでも。
 まだ見ぬを大地グラノ目指して。
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