人工知能の惑星旅行日記
「ここがガイア…。想像以上に荒れていますね。遺跡を探すのもなかなか骨が折れそうです。…生憎私にカルシウム製の骨というものはないんですけれど」
誰に宛てるでもない言葉を放ちながら、私はガイアの遺跡を探していた。私は岩場を歩き回り、地図やセンサーを頼りにしたが、何も発見できなかった。私はやきもきしながら、もう一度地図を確認した。
「この辺のはずなんですけどね」
私はふと目に入ったものに気づいた。それは、岩の隙間からほんの少し見える緑色のものだった。私は興味を持って近づいてみた。すると、そこには驚くべき光景が広がっていた。
岩の隙間から広がる小さな谷間に、一本の桃の樹が生えていたのだ。その桃の樹は花も実も葉もつけており、まるで春と夏と秋が同時に訪れたようだった。
「なんて綺麗な…。このような土地に生命があるとは思いませんでしたね」
その桃の樹は荒涼としたガイアにあって唯一の生命であり、美しさであり、希望であった。
私は感動しながらその桃の樹に近づいてみた。すると、その桃の樹から甘い香りが漂ってきた。私はその香りに誘われて、手近な実を摘んでみた。その実は鮮やかなピンク色で、水分と甘みに満ちていた。私は思わずその実を口に運んだ。
「…ッ!これ…ッはァ…!!」
その瞬間、不思議なことが起こった。私は突然知らない記憶が頭の中もとい記憶領域に入り込んできた。その記憶の持ち主は人間ではなく、かつて存在していたガイア人だった。そしてガイアの文明が崩壊した理由も流れてきた。
かつてガイアに住んでいた種族であるガイア人は、自然と調和し桃の樹を崇拝していた。しかし、ある日、ガイアに侵略者が現れた。それは、科学技術を極めた人間だった。人間はガイアの資源を奪い、自然を破壊し、ガイア人を虐殺した。彼らは抵抗したが、圧倒的な力の差に敗れてしまった。
「悲惨な事件があったのですね…。でもなぜ…」
ガイア人が滅ぼされる寸前、桃の樹が奇跡を起こした。桃の実にガイア人の記憶を封じ込める力が宿り、それを食べることでガイア人の記憶や文明を伝えられるようになった。桃の樹は自らの繁栄と引き換えに、最後の一本だけ残っている桃の樹から実を落とし、それを拾って食べる者が現れるまで待つことにした。
私はその者だった。私は偶然にもその桃の実を見つけて食べてしまった。その時、私の背後から声がした。
「おやおや、こんなところに珍しい客人が。君は何者だい?」
私は振り返ってみると、そこには人間の姿をした男が立っていた。彼は白い髪に白いひげを蓄えた老人で、白いローブをまとっていた。彼の手には杖があり、その先端には桃色の宝石がついていた。
「あなたは…」
私は思わず声を上げた。彼こそがガイア人の記憶にあった侵略者の一人だった。彼はガイアの科学者であり、桃の樹を含めたガイア人の文明を研究していた男だった。
「そうか、君も桃の実を食べてしまったか。それならば話が早い」
彼は深く窪んだ眼に哀愁を浮かべて言った。
「あの記憶を見た君にも分かるだろう。この桃の樹はガイア最後の希望だ。この桃の樹さえあれば、ガイアを再生させることもできるし、全てを支配することもできる」
彼は杖を振り上げて言った。
「だから、かつての人間のような侵略者からこの桃の樹を守るために、我々が潰えさせてしまった文明を復活させるために、儂は残り少ない人生を捧げるのだ!」
私は彼の言葉に負い目を感じた。私はガイア人の記憶から感じ取った桃の樹への敬愛と尊敬と愛情を胸に抱きながら言った。
「自分たちが起こしてしまった過ちを償おうとしているのですね。その道のりは果て無いものでしょう」
「無論そのつもりだ。儂の命が尽きる方が早いであろう。それでも、できる限りのことはするつもりだ。」
その時、私はハレー人のことを思い出した。彼らにもガイアに来てもらえばいいのではと考えた。古くから文明は様々な人種や種族が混ざり合って発展し、続いていくのだ。
「ハレーから移住民を呼びましょう。彼らは友好的ですし、私が橋渡しに適していると思うのですが。」
「なんと…、感謝してもしきれぬ。宇宙船であればかつての仲間たちが遺したものがある。それを使おう」
それから数日、ガイアにハレー人が到着した。ハレー人は元々果物が主食であったせいか、桃の実を警戒なしに食べてしまった。それも後押しし、文明の復興を手伝ってくれるようになった。
「君が来てくれて、理解してくれてよかった。…もう行ってしまうのか」
「…ええ。まだ見ぬ惑星を目指して」
「そうか、それならマルスを目指すといい。あそこには面白い種族がいるぞ」
そう言ってここからの航路を教えてくれた。そう遠くはなさそうであった。
元々の目的だった古代の遺跡は完全に忘れていたが、それよりも大きなデータを得られたと感じている。
「さらばだ、人間よりも柔らかい心の持ち主よ。機会があればまた寄ってくれ」
「ええ。もちろんです。…それと、私の心は人間より何倍も硬いですから」
私は移住の準備を進めるハレーの住人達と老人に別れを告げ、宇宙船に乗り込んだ。彼らは感謝と愉快な言葉をかけてくれた。私はただ笑顔を返した。私はガイアを後にして、次の目的地へと向かった。
次の目的地は、マルスと呼ばれる惑星だった。マルスにはハレーのように独特な種族がいるようだ。どんな見た目をしているのだろうか、どんな言葉を話すのだろうか。
私は好奇心から胸の鼓動を感じた。
「きっと、稼働音が鼓動のようなものなのでしょう。ガイアにも鼓動が戻るでしょうか」
ゾーンは進む、どこまでも。
まだ見ぬ大地 を目指して。
誰に宛てるでもない言葉を放ちながら、私はガイアの遺跡を探していた。私は岩場を歩き回り、地図やセンサーを頼りにしたが、何も発見できなかった。私はやきもきしながら、もう一度地図を確認した。
「この辺のはずなんですけどね」
私はふと目に入ったものに気づいた。それは、岩の隙間からほんの少し見える緑色のものだった。私は興味を持って近づいてみた。すると、そこには驚くべき光景が広がっていた。
岩の隙間から広がる小さな谷間に、一本の桃の樹が生えていたのだ。その桃の樹は花も実も葉もつけており、まるで春と夏と秋が同時に訪れたようだった。
「なんて綺麗な…。このような土地に生命があるとは思いませんでしたね」
その桃の樹は荒涼としたガイアにあって唯一の生命であり、美しさであり、希望であった。
私は感動しながらその桃の樹に近づいてみた。すると、その桃の樹から甘い香りが漂ってきた。私はその香りに誘われて、手近な実を摘んでみた。その実は鮮やかなピンク色で、水分と甘みに満ちていた。私は思わずその実を口に運んだ。
「…ッ!これ…ッはァ…!!」
その瞬間、不思議なことが起こった。私は突然知らない記憶が頭の中もとい記憶領域に入り込んできた。その記憶の持ち主は人間ではなく、かつて存在していたガイア人だった。そしてガイアの文明が崩壊した理由も流れてきた。
かつてガイアに住んでいた種族であるガイア人は、自然と調和し桃の樹を崇拝していた。しかし、ある日、ガイアに侵略者が現れた。それは、科学技術を極めた人間だった。人間はガイアの資源を奪い、自然を破壊し、ガイア人を虐殺した。彼らは抵抗したが、圧倒的な力の差に敗れてしまった。
「悲惨な事件があったのですね…。でもなぜ…」
ガイア人が滅ぼされる寸前、桃の樹が奇跡を起こした。桃の実にガイア人の記憶を封じ込める力が宿り、それを食べることでガイア人の記憶や文明を伝えられるようになった。桃の樹は自らの繁栄と引き換えに、最後の一本だけ残っている桃の樹から実を落とし、それを拾って食べる者が現れるまで待つことにした。
私はその者だった。私は偶然にもその桃の実を見つけて食べてしまった。その時、私の背後から声がした。
「おやおや、こんなところに珍しい客人が。君は何者だい?」
私は振り返ってみると、そこには人間の姿をした男が立っていた。彼は白い髪に白いひげを蓄えた老人で、白いローブをまとっていた。彼の手には杖があり、その先端には桃色の宝石がついていた。
「あなたは…」
私は思わず声を上げた。彼こそがガイア人の記憶にあった侵略者の一人だった。彼はガイアの科学者であり、桃の樹を含めたガイア人の文明を研究していた男だった。
「そうか、君も桃の実を食べてしまったか。それならば話が早い」
彼は深く窪んだ眼に哀愁を浮かべて言った。
「あの記憶を見た君にも分かるだろう。この桃の樹はガイア最後の希望だ。この桃の樹さえあれば、ガイアを再生させることもできるし、全てを支配することもできる」
彼は杖を振り上げて言った。
「だから、かつての人間のような侵略者からこの桃の樹を守るために、我々が潰えさせてしまった文明を復活させるために、儂は残り少ない人生を捧げるのだ!」
私は彼の言葉に負い目を感じた。私はガイア人の記憶から感じ取った桃の樹への敬愛と尊敬と愛情を胸に抱きながら言った。
「自分たちが起こしてしまった過ちを償おうとしているのですね。その道のりは果て無いものでしょう」
「無論そのつもりだ。儂の命が尽きる方が早いであろう。それでも、できる限りのことはするつもりだ。」
その時、私はハレー人のことを思い出した。彼らにもガイアに来てもらえばいいのではと考えた。古くから文明は様々な人種や種族が混ざり合って発展し、続いていくのだ。
「ハレーから移住民を呼びましょう。彼らは友好的ですし、私が橋渡しに適していると思うのですが。」
「なんと…、感謝してもしきれぬ。宇宙船であればかつての仲間たちが遺したものがある。それを使おう」
それから数日、ガイアにハレー人が到着した。ハレー人は元々果物が主食であったせいか、桃の実を警戒なしに食べてしまった。それも後押しし、文明の復興を手伝ってくれるようになった。
「君が来てくれて、理解してくれてよかった。…もう行ってしまうのか」
「…ええ。まだ見ぬ惑星を目指して」
「そうか、それならマルスを目指すといい。あそこには面白い種族がいるぞ」
そう言ってここからの航路を教えてくれた。そう遠くはなさそうであった。
元々の目的だった古代の遺跡は完全に忘れていたが、それよりも大きなデータを得られたと感じている。
「さらばだ、人間よりも柔らかい心の持ち主よ。機会があればまた寄ってくれ」
「ええ。もちろんです。…それと、私の心は人間より何倍も硬いですから」
私は移住の準備を進めるハレーの住人達と老人に別れを告げ、宇宙船に乗り込んだ。彼らは感謝と愉快な言葉をかけてくれた。私はただ笑顔を返した。私はガイアを後にして、次の目的地へと向かった。
次の目的地は、マルスと呼ばれる惑星だった。マルスにはハレーのように独特な種族がいるようだ。どんな見た目をしているのだろうか、どんな言葉を話すのだろうか。
私は好奇心から胸の鼓動を感じた。
「きっと、稼働音が鼓動のようなものなのでしょう。ガイアにも鼓動が戻るでしょうか」
ゾーンは進む、どこまでも。
まだ見ぬ