雨の雫か、彼の涙か
夢小説設定
この小説の夢小説設定12/25生まれのファーランの恋人。
王都の地下街で暮らしていたリヴァイの馴染み。リヴァイが調査兵団に入団した事を機に地上へ移住し一人暮らし(実際にはリヴァイと同棲)をしている。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ファーランが…、…結婚するそうよ…」
「………あ…?」
落ち着いた雰囲気の喫茶店。
その窓際に座るのは小柄な男女。
…彼女の言葉にティーカップを持とうとした手を止めた目つきの悪い黒髪の男は、伏し目がちに紅茶を啜る彼女の顔を凝視する。
彼女はカップの中で揺らぐ自分の顔を見つめたまま続ける。
「高校生の時にお付き合いしていた人なんですって…」
「…オイ」
「偶然再会して、縒りを戻したそうよ。…来年の春に式を挙げるみたい」
「オイオイオイオイ、待て待て。お前らは…そういう仲だったんじゃねぇのか?今世でも…」
「………そう、なれると思っていたわ…。彼はまた、私を愛してくれると…信じて疑わなかった…」
「そりゃそうだ。お前とファーランは、前の世でそうなるはずだったんだからな…」
「前の世………そんな記憶、ない方が普通なのよ、ここでは………」
「………」
「…リヴァイ、貴方はどうして前世の記憶があるの?」
「…知るか」
「…私はね、そう願ったわ…。生まれ変わったら今度こそ……一緒にいたい…って…。だから…彼を愛した気持ちを…忘れませんように…って」
「………」
「………どうして…彼には記憶がないのかしら…。どうして、今度は私を選んでくれなかったのかしら……どうして…。…私の…何がいけなかったのかしら………」
「お前は何も悪くない。自分を責めるのはやめろ」
「…でも…、私が何か…行動していれば、少しは違ったかも知れない…」
「…お前は我が強い方じゃねぇ。…前からそうだ。行動をしなかったんじゃなく、できなかった…違うか?」
「…だからもっと、私に勇気があれば…」
「相手の事を考えたはずだ。迷惑なんじゃねぇか…とかな。人を気遣える、それは伸ばすべき長所だ。それにな、無理に強引な行動をとったらとったで、またお前が自分を責めるのは目に見えてる」
「………。貴方ならよかったのに………」
「………」
「こんなに私を理解してくれている…。前からずっと…。…いつだって傍にいてくれるのは、話を聞いてくれるのは貴方だわ…」
「………」
「…でも、やっぱり………愛しているの。忘れかけていた顔を、声を…温もりを…今世で会ってはっきりと記憶を取り戻した時に…そう思ったの………」
「………、」
深い色の瞳からこぼれ落ちた雫は、彼女の頬を濡らしていく。
そんな彼女から視線を逸らした男は、眉間に皺を寄せたままそっとハンカチを差し出した―。