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誘拐犯と小学生

夢小説設定

この小説の夢小説設定
12/25生まれのファーランの恋人。
 王都の地下街で暮らしていたリヴァイの馴染み。リヴァイが調査兵団に入団した事を機に地上へ移住し一人暮らし(実際にはリヴァイと同棲)をしている。
名前
名字




「ねぇ、おじさん」


赤いランドセルを抱きかかえながら流れる窓の外の風景を見ていた少女は、赤信号に進行を阻まれ景色が止まった事で窓から運転手へと視線を向けた。
おじさんと呼ばれた事が気に障ったのか、険しい表情の運転手は横目で少女を見る。


「おじさんじゃねぇ。リヴァイだ」

「…リヴァイさん」

「リヴァイ」

「………リヴァイ」


気温が高くなってくる季節。外を歩く人のほとんどが半袖のTシャツを着て歩いている。そんな中でハイネックの長袖Tシャツを着ている少女は、服を引っ張る癖があるのか袖の部分が伸びてよれよれになっていた。


「いたっ…」


腕まくりをさせようと少女に手を伸ばしたリヴァイは、少し触れただけでそう言った少女に驚いて目を開く。


「…すまない」

「………うん」


兄妹にしては年が離れているが、親子にしては近すぎる。そんな彼らを乗せた車両は信号の指示で動き始めた。


「どこへ行くの?」

「…お前の知らない場所だ」

「お山に埋めるの?」

「何だその発想……お前いくつだ?」

「小3」

「小3が言う事じゃねぇぞ」

「刑事ドラマが好きなの」

「そうか」

「おじ……リヴァイは何が好きなの?」

「………」


好きなものと言われてもすぐには思い浮かばないらしい。ただ一つ頭に浮かんだのは、隣でこちらをじっと見つめている少女。


「………、」


彼女に目を向け、何かを言いかけて口を噤んだ。そんなリヴァイを見て少女は怒ったように言う。


「運転中はよそ見しない!」

「…うるせぇな…」


注意を受け前を向いたリヴァイ。彼を見つめていた少女もまた窓の外へと視線を戻した。


「私はね、あとはオカルトが好き!」

「…そんなもん何が面白いんだ」

「得体の知れない不気味さ!」

「変わってるな…相変わらず」

「変なおじさんに変わっていると言われてしまった」

「誰が変なおじさんだ」

「そこはね、そうです、わたすが変なおじさんです。って認めるところよ!」

「………お前いくつだ?」

「小3」

「小3が知ってる事じゃねぇぞ」

「昔のバラエティー番組が好きなの」

「…そうか」


変なお~じさんだから、変なお~じさん…と歌い出した少女にリヴァイはうるせぇ…と言いつつも小さく笑った。


「…他には?」

「ん?」

「お前が好む物を教えろ。…食い物とかな」

「食べ物か~…色々あるけど、ん~………芋!」

「………芋?」

「じゃがいもが好き!」

「………ほう、」


丁度目と鼻の先にファーストフード店がある事を思い出したリヴァイは、そこへ立ち寄ると人気のセットを一人分注文した。
店員に手渡された袋をそのまま少女に渡し、車を発進させる。


「芋、入ってるだろ。食え」

「わー!いいのー!?いただきます!」


美味しーい!と言って頬張る少女は、その一つをリヴァイに差し出す。


「リヴァイも!あーん!」

「………」


一瞬悩んだリヴァイだったが素直に口を開けた。美味しいね!と言う少女にああ。と短く返しながら、こうして物を食べさせてもらうのは後にも先にもこの子だけだろうと考えた。

車を走らせること数時間…、都会を離れた車窓には田園風景が広がる。


「うわぁ~!私都会っ子だからこんな景色見たの初めて!」

「そうか」

「くねくねいるかなぁ!」

「何だそれは」

「都市伝説!見たら精神崩壊しちゃうんだって!」


元気よくそんな事を言う少女にリヴァイは眉を寄せる。そういう話が好きだと言うのなら仕方がないが、あまり健全ではない気がしてならなかった。

茜色に染まった西空をバックミラーに映しながら車は走り続ける。学校帰りにそのまま来たことで疲れが出始めたのか、少女の口数が減ってきた。


「…眠いか」

「…平気」

「寝てろ。着いたら起こす」

「目的地あったんだ」

「まぁな」

「ずいぶん遠くまで来たけど…明日学校行ける?」

「…無理だな」

「…そっか。じゃあ、お休みするって電話してね。進撃小学校3年2組。担任の先生はスミス」

「スミス…?…エルヴィンか?」

「知り合い?」

「………いや、」

「リヴァイはお仕事大丈夫?」

「問題ない。ネットと宅配便さえあればどこでも働ける」

「作家さん?」

「…聡いな」

「締め切りは守らなきゃダメよ。みんなが不幸になってしまう。印刷所に嘘付くのも大変なんだからね」

「編集かお前は……何だってそんな詳しいんだ…」

「どんなの書いてるの?」

「お前には早い」

「エロか」

「サスペンスだ」

「殺人事件?私好きよ!」

「………お前にはまだ早い…」


そんな会話の途中からうとうとし始めていた少女は、本ちょうだい。読んでみたい…と言った後、背もたれに寄りかかり完全に目を閉じてしまった。

すっかり陽が落ち暗い夜道を走っていた車は、目的地に到着したのかようやくエンジンの音を止ませた。


「…ユーリア。起きろ。着いたぞ」


声を掛けても全く起きる気配がない。体を揺らして起こそうとしたその時、昼間少し触れただけで痛がっていた事を思い出した。よれよれに伸びた袖をそっと捲れば、少女の白い腕が露わになる。


「………、」


腕にある真新しい青あざと小さな火傷の痕を見て、リヴァイは酷く顔を顰めた。
少女の頬に手を添え、もう一度名前を呼ぶ。


ユーリア

「ん…」


薄目を開けたユーリアは、リヴァイの顔を見てへらっと笑った。


「変なおじさんだー」

「誰が変な…」


そこまで言いかけて咳払いをしてから、そうです、私が変なおじさんです。とやる気なさげに認めたリヴァイ。それを聞いた少女は嬉しそうにノリ良い!と言って上体を起こした。


「ここどこ?」

「…旅館だ。行くぞ」


リヴァイが車から降りたのを見てユーリアもドアを開ける。降り立った直後に、暗いから気を付けろ。と言ったリヴァイの手をそっと握った。


「暗くてよく見えない…怖いから手繋いでもいい?」

「………」


返事はせずに握られた手を優しく握り返した。
二人はそのまま旅館の受付へ顔を出す。

案内された部屋には露天風呂が付いているようで、ユーリアは興奮気味に室内を駆け回る。


「走るな。埃が立つだろうが」

「すごーい!おっきいお風呂が付いてるわ!」

「オイ、ユーリア

「え?どうして名前知ってるの?」


リヴァイは何かを考えるように一拍置いてから、ユーリアの胸元を指差した。そこにはユーリア・シュヴァーンと丁寧にフルネームが記された札が付けられていた。


「あ…外すの忘れてた…」


防犯の為か、登下校の際は名札を外す決まりがある学校らしい。


「学校の規則を破るとは悪い子だな」

「…ごめんなさい…」


思いの外その言葉を重く受け止めてしまった様子のユーリア。俯いてしまった少女に近寄るとリヴァイはぽんと頭に手を置いた。


「悪い輩に名前を覚えられちまっても知らねぇぞ」

「…悪い輩?」

「ああ、俺みたいな…な」


わしゃわしゃと少し手荒く頭を撫でたリヴァイを見上げ、ユーリアはぽつりと呟くように言う。


「リヴァイは悪い人じゃないよ…。…こんな風に頭を撫でてくれる人…私の周りにはいないわ。車で遠くまで来たの初めてなの…ドライブ、楽しかった。たくさんお話してくれて、…ありがとう」

「………」


伸びきった袖を引っ張りながらそう言ったユーリア。リヴァイはユーリアの頬を両手で包み込むとこつん、と額を重ねた。


「…家に帰りたいか?」

「え?」

「まぁ…帰す気はねぇが…」


リヴァイはユーリアの腕にそっと触れると優しく擦った。


「お前に傷を負わせるような場所に、帰すわけにはいかねぇ…」

「え………」


驚いたような顔をしているユーリアは服を捲られても抵抗しない。露わになった上半身には、案の定腕にあるものと同じような痕が残っていた。リヴァイは強く目を閉じ顔を顰めると、ユーリアの体を抱き寄せた。


「だからお前を攫う。…残念だがお前は、これから俺に拘禁される。…お前に選択肢はない。覚悟を決めてもらおうか…」


返事をしないユーリアの表情が気になり体を離して見てみれば、ぽろぽろと大粒の涙を流していた。


「っ……、」


眉間に皺を寄せて顔を背けたリヴァイ。後悔の念がこみ上げてくる。今ならまだ間に合うかも知れない。でも、どういう家庭環境か分からないが、ユーリアの体を見れば愛されていない事は明確だった。どうするべきか、何が彼女にとって最善か思考を巡らせようとしたその時…ユーリアが首に腕を回してきた。小さな体で、精一杯の力を込めて抱き着いてくる。


「…、オイ…」

「私はお姫様じゃない…」

「…あ?」

「だけど…辛くても苦しくても…寂しくて泣きたくても…笑顔で明るく振る舞うの。そうすればいつか王子様がやって来て、私を連れ出して幸せにしてくれる…。そう信じてた…」

「………」

「私の王子様は…あなただったのね。…おうじ様というよりおじ様だけど…」

「…確かに王子ではねぇがな、…俺はこれでもまだ20代だ。成人して間もない」

「そうなの?30代かと思ったわ。…老け顔ペド野郎」

「急に毒突くな」


目に涙を溜めつつも嬉しそうに笑っているユーリアに、いつの間にかリヴァイの眉間の皺も消えていた。
ユーリアの体の痛々しい痣一つ一つにそっと唇を付けていく。それにどんな意図が含まれているのか、聞いたところで答えてはくれないだろう。そう思ったユーリアは別な疑問を投げかける。


「ねぇ、リヴァイ…。どうして私なの?小学生の女の子なら誰だってよかったんでしょ?」

「馬鹿が。そんなわけねぇだろ。お前じゃなきゃ犯罪に手を染めたりしねぇ」

「…私だから…?」

「ああ。お前だから攫った」

「………どうして…」

「決まってんだろ。お前を守る事は、前世から引き継がれている俺の責務だからだ」

「意味分かんない…」

「分からなくていい。…この話はもういいだろ、風呂入るぞ」

「…一緒に?」

「体洗ってやる。…痛くしねぇから安心しろ」

「………ロリコンペド野郎」

「だから急に毒突くな…」


悪態をつきながらも誰かと一緒に入浴する事が嬉しいらしいユーリアは、リヴァイの手を引きながら脱衣所に向かった―。



「―――泳げそうなくらい広いわね!」


興奮気味に湯船に浸かろうとしたユーリアを引き留める。


「バカか。体を洗ってから入れ」

「えー!早く入りたい!」

「いいから来い」


手招きをされて仕方なく檜の椅子に腰掛けたユーリア。痣だらけの小さな背中を見て眉間に皺を寄せたリヴァイは、その体に優しくお湯を掛けてからボディーソープを泡立て始める。
刺激しないように細心の注意を払いながら、泡で撫でるように慎重に洗っていく。


「ふふっ、くすぐったい」

「動くな。痣に触れたらどうする」


ユーリアが身を捩ると彼女の体から離れたリヴァイ。痣に触れたら…そんな心配をされた事がなかったユーリアは少し戸惑ったように俯いた。


「リヴァイは…優しいね」

「あ?」

「…あんまり優しくされると、…泣いちゃいそう!」


無理に明るく振る舞う事に慣れてしまった少女は、また無理をしているようだった。それを察したリヴァイは、その小さな背中を優しく包み込む。


「この程度で泣いてちゃ…これから先、持たねぇぞ」

「…え?」

「お前が何をどう感じるか知らねぇが、俺は俺の持てる全ての物を使ってお前を甘やかすつもりだ。…お前はただ笑ってりゃそれでいい。それが代償だ。だが、…泣きたい時は泣いていい。…今のお前は、ただのガキなんだからな…」

「……………やっぱり、変な人…」


小さく震えながら鼻を啜る少女の頭を優しく撫でた―。



チャプン…と湯船に浸かったユーリアは、あったかーい!…というかちょっと熱い!と文句じみた事を言いながら、バシャバシャと飛沫を上げて泳ぐように動き回る。


「オイ、少しはじっとしてられねぇのか」

「だって広い!」

「だってじゃねぇ。こっち来い」


リヴァイに窘められ、不服そうな表情を作りつつも素直に彼に従う。隣にちょこんと座ったユーリアの頭にタオルと乗せると、それをぽんぽんと優しく叩いた。嬉しそうに見上げたユーリアにリヴァイの顔も綻ぶ。片手でお湯を掬い少女の肩に掛けてやると、体をすり寄せるように距離をつめてきた。


「あったかい」

「そうだな」

「…心も」

「………そうか」


ぴたりと体をくっ付けながら目を閉じたユーリア。リヴァイは少女の頬に手を添えるとつんつんと指で突いた。


「オイ、寝るなよ」

「ん…」

「もう上がるか」

「…うん、あっつい」


首に腕を回してきた少女を横抱きにしてその場を離れる。
柔らかいタオルで優しく体を拭き、子供用の浴衣を着せてやればまた嬉しそうに笑った。

座卓に置かれたお茶を湯呑茶碗に注ぐとリヴァイの前にそっと出したユーリア。すっと伸ばされた手が頭撫でたのには、ありがとうという意味が込められているように思える。


「腹減ったか?」

「ちょっと」

「悪いな。来る途中に買った惣菜しかねぇ。だがまぁ、明日の朝は旅館のいい飯が食えるぞ」

「いい飯っ楽しみ!」


にこにこと笑いながらリヴァイを見つめていたユーリアだったが、彼がある物を取り出した途端表情が曇った。そして小さな箱を振りその一本を咥えて火を付けたのを見てか細い声で言う。


「っ…ご、…ごめんなさい、…」

「あ?」

「ごめんなさい、…ごめ…っ、」

「オイ…何を謝っている?」


今にも泣き出しそうな顔のユーリア。どうした?と言って手を伸ばすとびくっと震えて両手を後ろに隠した。その酷く怯えた様子を見て、彼女の腕にある小さな火傷の痕を思い出したリヴァイは持っていた箱を握り潰し咥えた物の火を消した。


「すまない…無神経だった」


煙草の箱をゴミ箱に放り投げ、小さく震える少女の体を抱き締める。


「二度と見せない…悪かった」


ごめんなさい…と、かすれた声で呟いたユーリアの顔を自分に向けさせると額を付けた。


「俺を見ろ…」

「…っ、」

「俺はお前の嫌がる事はしねぇ…絶対に。…お前を傷付けた奴とは違う。………得体の知れねぇ変なおじさんかも知れねぇがな、これだけは信じていい。俺はお前の味方だ………」


ユーリアの手を取ると、腕に残る火傷の痕に優しく唇を付ける。すまなかった…気を付ける。と眉を顰めて申し訳なさそうに言ったリヴァイの頬にユーリアはそっと手を添えた。


「リヴァイ………」

「………何だ」

「泣かないで…」

「…泣いてねぇよ」

「でも、辛そう…」

「辛いのはお前だろうが…」


リヴァイの隈を細い指でなぞったユーリア。擽ったそうに片目を閉じたリヴァイも少女の頬に手を当て、その目元をそっとなぞる。


「…こんなに優しくしてくれる人…初めて…」


どうして優しくしてくれるの…?というユーリアの問いに少女の髪を掬いキスをすると、お前だからだ…と答えた。


「いつの世も、何よりお前が大事だからだ…」

「…じゃあ私…、私に生まれてよかった。…あなたが大切に思ってくれるなら…ユーリアでよかった。この世に生まれて…よかった」


彼の大きな手を握り、指にキスをするユーリア。僅かに眉頭を上げたリヴァイの深い色の瞳には、泣き出しそうにもはにかんでいるようにも見える少女の顔が映る。


「…この時代はおかしい。本来お前は人に愛されるべきだ。いつの時代もそうだったんだからな…」

「いつの時代も………?」

「そうだ。…ずっとそうだった」

「………なんか、あなたが私の全てを知ってるような気がして不思議。今日初めて会ったのにね。でも一番不思議なのは、それを当然だと思ってる自分…」


リヴァイが私の全てを知ってるのは当然の事なの…。そう続けた少女の前髪を撫でるように耳にかける。


「その通りだ。俺がお前を知る事もお前の味方でいる事も、当然で揺るぎない。…何度死のうが、何度でもお前を見つけ出し、…またこうしてお前に触れるだろう」


真っ直ぐに瞳を見据えゆっくりと瞬きをしたユーリアに、不器用な笑顔を作って見せたリヴァイ。寄り添うように彼の胸板に頭を預けたユーリアが、目に涙を浮かべながらも目尻を下げた表情はリヴァイの位置からは確認できなかった。


「…ガキは寝る時間だ。…来い」


一組の布団を敷くと、そこに寝そべり手招きをする。


「一緒に寝るの?」

「嫌なのか」

「嫌じゃないけど…。…えっちするの?私まだ赤ちゃん産めないわよ…」

「どこで覚えたそんな事…。今のお前にできるわけねぇだろ…犯罪だ」

「…もう犯罪、犯してる」


誘拐犯…と呟いたユーリアに、ばつが悪そうに顔を顰めてから自分の目元を覆った。いいから来い、何もしねぇよ…。リヴァイのその言葉を聞いて、両手と両膝をつき畳を這うようにゆっくりと近付いてきたユーリアは、布団に入るとまた彼の胸に頭を付けた。


「…これが夢で、明日になったらまた独りぼっちになってない事を祈るわ…。…勝手にいなくならないでね…?」

「………離しやしねぇよ…。安心して寝ろ…」

「うん…おやすみなさい、リヴァイ…」

「ああ、…おやすみ」


リヴァイの浴衣を握りながら目を閉じたユーリア。優しく頭を撫でていた手は、微かな寝息を聞いて止まった。彼女を見ている顔がどんな穏やかなものになっているのか、彼が自分の表情を知る術はない。
彼女の額にそっと唇を付けると、優しく抱き締めながら目を閉じた―――。



《誘拐犯と小学生》

少女を傍に置く為に手段を選ばなかった男と、攫われる事を望んだ少女のお話。
Ende.
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