「よぉ……ハンジ」
「え………何、ずいぶんご機嫌だね。
ユーリアがどうしたの?」
「……………実はな、」
「もはや何故
ユーリアに関する事だと分かったのか疑問にすら思わないんだね」
「俺の機嫌がいい理由があいつの事以外に何かあるか?」
「ないよ。それで?」
「………あいつが…、」
「ああ、嫁が可愛すぎて呼吸困難に陥ったと」
「何故分かる」
「もう適当に言っても当たるよね」
「チッ…黙って聞け」
「ええ?こんな強気で惚気けるやつ見た事ないよ」
「お前は花占いというものを知っているか」
「花弁を一枚ずつむしり取るやつ?例えば好きか嫌いかの二択を交互に言って、最後の一枚に当たった方に決定する…みたいなやつだよね?」
「まぁそんなとこだ」
「花占いをするなんて相変わらず
ユーリアは可愛らしいね。でもそんな事しなくてもあなたは
ユーリアが大好きなのにね」
「………」
「というか何で知ってるの?普通相手がいない時にやるでしょ。こっそり見てたの?あなたに隠れてそんな占いをするならあの子もあなたが大好きで間違いないじゃないか。おめでとうリヴァイ!結婚祝いには巨人を模した可愛いぬいぐるみをあげよう!」
「いらねぇぞ。お前の可愛いの基準が分からねぇ。二度と
ユーリアを可愛いと言うな」
「え?何で?」
「巨人を可愛いと思うような感性で言われても気分が悪いだけだ。悪口と見なして削ぐ」
「おかしくない!?」
「おかしいのはお前の頭だけだ。…話を戻すぞ。その花占いだが、俺がやらされただけだ」
「………え?どういう事?」
「あいつが俺を好きか否か、それを占うよう強要されたんだが」
「おかしくない?」
「好きか嫌いかの二択で始めた所早々に中断させられてな。そうではないと」
「うん?」
「私が言っていくからあなたは黙って花弁を一枚ずつ取っていけと指示を受けた。…あいつの選択肢は三つだった。…これが何か、お前に分かるか?」
「好きか、嫌いか……あと一つは、どっちでもないとか?」
「馬鹿かクソムシが」
「クソムシ!?む、虫?さすがに酷くない?メガネどこ行ったの?」
「クソムシメガネ」
「それじゃクソな虫眼鏡じゃないか」
「可愛らしいとお前が言ったんだろう。そんなあいつが可愛げのねぇそんなクソみてぇな選択肢を思い付くとでも?」
「じゃあ何なんだよ」
「『好き、大好き、めっちゃ大好き!』…この繰り返しだ。つまりどこに当たろうが結果は同じという事だ…」
「ああ…そりゃ確かに可愛い……ちょっと削がないでよ!?誰が聞いても可愛いと思うような事を可愛いと言って何が悪いの!?」
「………」
「危ないなぁもう…。しかしあれだね、好きな子にそんな事言われたら呼吸の仕方を忘れてもしょうがないね」
「…それじゃ全部一緒じゃねぇかと言ったんだがな……でも嫌いなんてあり得ないのに嫌いに当たったら困る、と…」
「つまりあなたが大好きだと」
「………そうなるかもな」
「幸せそうで良かったよ。もちろんあなたも大好きだと伝えたんでしょう?そこまで言いやすいタイミングは珍しいからね。当然、その機を逃すなんてクソムシのような事はしなかったんだよね?」
「…言えるわけねぇだろうが」
「はぁ!?何で!?クソムシなの!?クソムシ以下なの!?」
「話を聞いていたかクソムシメガネ。俺は呼吸困難に陥ったと言ったんだ。それどころじゃねぇ」
「へたれクソムシ!」
「うるせぇクソ!」
「ムシメガネも付けろ!」
─────
「…じゃあいくわよ。私はあなたの事が…好き、大好き、めっちゃ大好き!好き、大好き、めっちゃ大好き!好き、大好き─…」
「………、」
「…めっちゃ大好き!ふふ、これに決まりね!…あら?どうしたの?何だか苦しそう…大丈夫?」
「っ……平気だ…、…心配する必要はない………、」
《嫁が可愛すぎて呼吸困難に陥った件について》
Ende.