「
ユーリアさんのお悩み相談~!」
食堂の一角に陣取った
ユーリアさんが急に声を上げた。休憩中だったリヴァイ班の先輩方は
ユーリアさんに視線を向けて苦笑いしている…。
「グンター?」
「…はい」
「傍にいらっしゃい」
「………いえ、…ちょっと、足をくじいているので動けません」
「あら、大変…。安静にしてなきゃね…」
嘘付いてる!
そんな嘘付いてまで悩みを打ち明けるのが嫌なんですか!?…いや、まぁ…気持ちは分かりますけど…。
「エールドっ」
「ぅ…はい」
「何でも聞いてあげるわよ!ほら、彼女の事とかね!」
「………いえ…今日は、大丈夫です…」
「遠慮しなくていいのに…」
…順番的に次のターゲットはペトラさんかな。
「ペトラ~!」
「はい」
「おいでおいで!」
「あ~…いや、………」
「女の子特有の悩み、色々あるでしょう!」
そんな事この場で言えないんじゃ…?
ユーリアさんとペトラさん以外野郎なわけだし………。
「あ、オルオ〜!ほら、話してごらんなさい。悩みしかないでしょう?あなたみたいな子は!」
「そんな事ねぇっすよ!?なんて事言うんすか!!」
さすがに失礼ですよ
ユーリアさん…。
「エレンエレーン!」
ついにオレにも回って来たか…。
「思春期野郎特有の悩みを聞いてあげるわよ〜!」
「いや、特にないです…」
「…もう、…みんな今日に限ってどうして遠慮してるの?」
「……………」
…確かにいつも、先輩方は何かと
ユーリアさんに相談を持ち掛けている。外部の人間で年上ってのが話しやすいんだと思う。…だから
ユーリアさんもこうして悩みを聞く時間を設けたんだろう。…けど、………。
「……………」
ユーリアさんのすぐ傍であんな風に兵長に居られたら…相談なんてできるわけがない…。何で直属の上司にプライベートな悩みを聞かれなきゃならないんだ…。兵長が嫌だとかじゃなくて、単純に意味分かんねぇだろ。
ユーリアさんに聞いてもらいたい悩みを兵長も聞いてるってどんな状況だよ…。
「つまらないわね…。…ねぇ、審査委員長」
「何だ」
審査委員長?何の?
「あなたの悩みを聞かせてちょうだい」
兵長の悩み…?悩みなんかあるのか?
ユーリアさんが鈍感すぎるとか、そんな事しかないんじゃねぇの?
「………飯が不味い」
「わ、私の…っ!?」
「お前以外のだ」
えー…ただのオレ達に対する苦情じゃねぇか。
「兵団で支給されている調味料が原因だ。誰が作っても同じ味で美味くない」
「それは困ったわねぇ…」
「だがお前が作った時は違った。何か特別な物を入れているならこいつらに教えてくれ。…飯は美味いに越した事ねぇだろ」
「分かった!秘密の隠し味を教えてあげるわね!」
「俺の悩みはそれだけだ」
「まさか!他にも色々あるでしょう!?」
「…いや、特にねぇが」
「そんな…っ」
どんだけ意外なんだよ。兵長どんだけ悩み抱えてる人だと思われてんだ。
「こんにちはーリヴァイ班の皆さん。お昼ご飯はもう済ませたかな?」
ハンジさん…。この空気にこの人が混ざって大丈夫なのか…?
「ハンジ!久しぶり!」
「
ユーリア!来てたんだね!ってゆーか、これはどういう席順?リヴァイと
ユーリアだけ離れ小島のように座っているね」
「ここはお悩み相談コーナーよ!私がみんなの悩みを聞いてあげようとしていたの!」
「それならリヴァイは邪魔だね。そこにいられたら気軽に相談なんて出来ないよ」
それなんですよ。さすがハンジさん。
「…まぁいいや。じゃあちょっと悩みを聞いてくれる?」
「喜んで!一悩み1コインよ!」
「金とるの?」
「冗談!」
「よかった。…えっとまず…、ずーっと一人の子に片想いし続けるオッサンをどう思う?」
「………」
「一途なオッサンなのね。いいと思うわ。応援したい」
「…そう?じゃあ…そういう人に告白されたら…あなたならどうする?ちなみに、ものすごーく親しい間柄ね。あなたの認識としては多分…家族くらい近しい人」
…もうそれって兵長の事ですよね。さすがの
ユーリアさんも気が付くんじゃ…?
「ん~…ちょっと難しいわね…。私にはそんな親しい人ってリヴァイしかいないから…」
「……………じゃあそのリヴァイに…」
「オイ、クソメガネ。てめぇ…」
「あー!分かった分かった!じゃあ質問を変えよう!」
「質問をするな。趣旨が変わってる。こいつは悩みを打ち明けろと言ったんだ」
「…誰かさんの代わりに相談してるんじゃないか。答えによっては未来は明るいよ」
「お前は何をしに来た?余計な事しかしねぇなら帰れ」
「じゃあ最後に一つ聞かせて!これだけ聞いたら帰るから!」
「うん?」
「恋人になるとしたら…この場にいる男性陣の中なら誰がいい?」
なんって事聞いてくれてんですかハンジさん…!万が一兵長じゃなかったら、オレ達の誰かが地獄を見る事になるんですけど…!?
…あ、先輩方も苦虫を噛み潰したような顔でハンジさんを見てる…!
「
ユーリアの好みで言ったらエルドかな?背が高くて髪の色が明るい…」
ユーリアさんの恋人はそういう人だったのか?だが今エルドさんの名前が出た事で、逆にエルドさんの線はなくなった…!先に言われると認めたくなくなる人間の心理を突いているんだな。そうか、さすがハンジさんだ。あえて兵長以外の名前を出して否定させていく事で、最終的に残った兵長を選ばざるを得ない状況にする…!
「そうね。エルドは素敵よね。頼りになるのに親しみやすいわ」
あっさり認めた!そうだった…意地になるって事を知らないこの人にその心理戦は全く意味をなさない…。
「え?え?じゃあグンタは?」
「うん!やっぱり真面目で堅実な人はいいわよね。安心感が違うわ」
グンタさんもいいの?
「オルオは?」
「うんうん!一緒にいて楽しいっていうのは一番大事だと思うわ!オルオはそういう子よね!」
…結局誰でもいいのか…?いや、みんなに気を使ってる…?…そうも見えないな。…ただ思った事を言ってるだけか…?………いい人だな、やっぱり………。
「でも私は…この中だったらエレンがいいかな?」
「えっ!?」
嘘だろここに来て何で…!?
うわ!兵長すげーこっち見てる!怖ぇー!!
「な…何でエレンなの…?」
「一番若いから。何にも知らないでしょう?大人が教えてあげなくちゃ。…それに…」
「それに…?」
それに…何ですか。何でオレを見るんですか…やめてくださいよ…もう勘弁してください………!
「何も知らない子供だからこそ………」
「…え………?」
「ううん、何でもないわ。教え甲斐があるなって思っただけ」
「………はぁ。調教するな」
「何も言ってないじゃない」
「お前の考える事は大体分かる」
「やだ…怖いわ」
「お前の方が怖いが。…エレン。真に受けるなよ。ただのいつもの冗談だ」
「あ……はい…」
「…え?リヴァイは?てっきりリヴァイって答えるかと思ったよ…一番付き合いが長くて親しいわけだから…」
「リヴァイも入れて考えなければいけなかったの?」
「そりゃそうだよ。この場の男性陣って言ったじゃないか」
「んー…だけど、リヴァイは違うかな?」
「……………」
……………え…?
今…、兵長が振られた瞬間を目の当たりにしている…?違うって、そういう意味だよな…?
「もしも恋人になるなら…とか、その場の盛り上がりでするお話でしょう?そういうのに候補としてあげるのは違うわ。…リヴァイは特別なの」
恋人候補に挙がらないのが特別?裏を返せば論外って事だけど…。兵長はそれでいいのか…?
「………」
…よさそうな顔だな…。うん。とりあえずこの場の誰よりも特別だって事が分かって嬉しそうだ………。
…よかった。一時はどうなることかと思ったぜ…。何でオレがこんな冷や汗かかなきゃならねぇんだ?
「ねぇ、エレン!」
「はい…?」
「さっきのは冗談だけど…、でも少しなら…教えてあげられる事、あるわよ…?」
「………え…?」
え…?どういう意味だ…?
「じゃあ私は帰るよ!」
ハンジさん…?何でそんな急いで…あんた本当に何しに来たんだよ。
「……………」
っていうか、先輩方のこの顔は何なんだ…?
何で目を合わせてくれないんだよ…。何で………、
…何で兵長、…そんな顔で見るんですか………?
ユーリアさんの優しい笑顔の後ろで、目を見開いている兵長がオレを凝視する。息ができない。…よく分からねぇ緊張で、さっき食った昼飯をぶちまけちまいそうだ………。
「ねぇ?リヴァイ」
「…あ?」
「私達が教えてあげられる事よ。…まぁ、地上じゃ必要ないかな?…犯罪だしね」
「……………ああ、…そっちか…」
「ん?そっちじゃないなら…こっちにする?」
「馬鹿が。ファーランが泣くぞ」
「冗談よ、怒らないで」
そっちとかこっちとか…何の話だよ…。
…結局今日も、オレ達は…オレは、
ユーリアさんの暇潰しにおちょくられたって事か………。
疲れた………。
《ある昼休みの暇潰し》
Ende.