「…困ったわ…」
クローゼットの前でそう呟いた
ユーリア。
どうやら俺の存在には気付いてねぇらしい。
「どうした」
「あら、リヴァイ!」
部屋の入口で声をかければ驚いたように振り返った。
「帰ってたのね、ごめんなさい気がつかなくて…」
「何かあったのか」
「いえ…気にしないで」
「………」
困ったように笑う
ユーリア。
何かあるのは明確だ。何故隠す必要がある。
そう思いながら見ていると、
ユーリアはクローゼットに目をやった。
「…実はね、…下着の数が足りなくて…」
「は…?」
「そんなに多くないからすぐ分かるのよ。忘れて来てしまったのかしら…」
下着を…脱いで忘れてくる状況…?
「…やだわリヴァイ、今いやらしい事を想像した?」
「…」
「違うわよ。私がファーラン以外の人に脚を開くわけないでしょう?そもそも濡れないわ」
「そういう話はよさねぇか…」
「この間シャワーが壊れてしまってね、直るまでの間、隣の一人暮らしの奥方にお湯を借りていたのよ。でもその後も会っているし…忘れたとは思えないわ…」
「………」
「新しく買い揃えるにはけっこうかかるから困っていたのよ。ね、大したことなかったでしょ」
「待て待て。お前の下着は生きてるのか?」
「何その発想。怖いわ」
「生きてねぇ物が自ずからクローゼットを出ていくか?あり得ねぇ。なくなったのはいつだ?洗濯したもんはどこに干している?」
「気付いたのはさっきよ。洗濯物は外に干しているわ」
「お前そりゃあ…盗られてんじゃねぇのか」
「…何その発想。怖いわ…」
「気色わりぃから考えたくねぇが、その可能性は高い」
「…でも、盗むほど着る物に困っているなら咎められないわ」
「ちげぇだろ…盗ってんのは野郎だ」
「どうして分かるの?男性が女の下着を着るとは思えないわ」
「着るんじゃねぇよ…」
「着ないのに盗んでどうするの?」
「どうって………。…いや、まぁ…着るかもしれねぇな………」
「そういう趣味の人…?女性になりたいのかしら…」
そうじゃねぇよ…知らねぇけど…。
これ以上言っても無駄だと分かる。
ユーリアのこの解釈はある意味幸せだ。見ず知らずの野郎が妙な事に使ってるなんて知れたら寝込んじまいそうだ。…今は俺が寝込みたいくらいだが。
「とりあえず、お前の衣服は家の中に干せ。外には俺の服をかけておけ」
「お天気がいい日も外に干しちゃいけないの?」
「少しの間だ。我慢しろ」
「………」
「…五日もかからねぇ。すぐに始末する」
「え………何を…?」
下着泥に決まってる。
《相手が悪かったな》
喧嘩を売る相手は選んだ方がいいと思い知らせる必要がある。
Ende.