アジト生活初月の揉め事
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………あれ?なんだこれ………。
カップの中の紅茶が固まっている…。これでは飲めない…。どうして………、………冷たい。触ったら冷たい…凍ってるんだ…。
「…どうしたんだよ、マンモーナよ〜」
あ…えっと、ギアッチョ…だっけ?この間ペッシが釣ってきたお魚を凍らせていた…。氷の能力を持っているみたい。じゃあ…このわたしの紅茶も………?
「………あ、あの…ギアッチョ…?わたしの…これ、飲み物………凍らせるのやめてもらう事って出来ますか…?」
「出来ねぇな」
「あ………じゃあ、溶けるまで待ちます…」
「オレが能力を解除しねぇ限りよォ〜いくら待ったって溶ける事はねぇんだぜ!」
「そ…そうなんですね…」
「どうだよ、ムカつくだろ?」
「え?いえ…」
「ああッ!?」
ひっ…こ、怖い…。怒ってる…。これは…きっとわたしの事が気に食わないから…アジトのカップでアジトにある物を勝手に飲むなって事なんだ。
「す、すみません…」
「何をッ!謝ってんだおめーはッ!!謝るような事なんてなーんもしてねえだろーがッ!!」
ど、どうしてこんなに怒ってるんだろう?どうしよう…。や、やっぱりわたし、ここに居たらダメなんだ…。プロシュートがお仕事の間ここに居るしかないんだけど…ただ居るだけでも迷惑なんだ…。
「オイ、どこ行くんだァ?」
「ごめんなさい…邪魔にならないようにすみっコにいるので、怒らないでください…」
「はああ?」
プロシュートには床に座るなって言われたけど、少しでも目立たないように…皆さんの邪魔にならないように、ホコリのようにすみっコで大人しくしていなくては…。
「っ………!」
何かに躓いて転んでしまった…。だけど、ちょうどいい所に大きなクッションがあって良かった…。床に膝を付いていたらプロシュートにもらったタイツに穴が空いてしまうところだった…。
「オイオイ、痛ぇぞマンモーナ。いくらオレの脚が長ぇからってよく見てりゃあ躓いたりなんてしねぇよなァ?」
「あっ、す、すみません…っ」
えっと…長い髪を結んでいるこの人は…えっと、
「…ソルベ………?」
「ソルベ?…誰がソルベだって?今おれに言ったよなァ?」
ソルベじゃあなかった…。じゃあ…、
「イル……イル………?」
「イルーゾォだ!オメーまさかオレが脚引っ掛けて転ばせたからってわざと名前を間違えて言ってるんじゃあねぇだろうなァ!?」
「ん…?え…わざと転ばせたんですか…?」
「そうだよ」
「な、なぜ…」
「ムカつくだろ?」
「え………」
ムカつく…?わたしの存在がムカつくから…転ばせたって事…?この人…、イ…イルーゾォ……怖い人だ………。
「ごめんなさい…」
「…おい、何してんだ?オメー部屋の隅で床に座ったらプロシュートの野郎に怒鳴られるんじゃあねぇのか?ええ?」
「そ、そうですけど…ここが一番皆さんの邪魔にならないと思うので…」
「はぁ?」
メガネのギアッチョ…髪の長いイルーゾォ…。ここには怖い人がいっぱいいるけど、この二人は特にわたしの事がムカつくみたいだから気を付けないと…。
「音も出さないし出来るだけ動かないようにするので…息をする事だけは許してください…お願いします…」
「…そうじゃあねぇだろマンモーナァ…」
そうじゃないって…何がだろう?ギアッチョが言葉を続けないのはこの部屋に誰かが入って来たから…?扉の音が聞こえたけど誰が来たんだろう?プロシュートが帰って来たのかな?
出来るだけ動かないって言ったから…顔を上げて扉の方を向く事が出来ない…。
「何してんだ。誰がそんな隅に居ろと言った?」
こ、この声は………リーダー…だ…。怒ってるみたいな声…こ、怖い………。
「オイ…聞こえているだろ。顔を上げろ」
「………、」
「………何で震えてる?寒いのか?そんな隅に居るからじゃあねぇのか。こっちに来なさい」
「あ…あの、でも……わ、わたし………」
「何をそんなにビビってる。取って食ったりしねぇからこっちに来てソファーに座れ」
で、でも……ギアッチョとイルーゾォが…またわたしにムカついてしまうかも…。苛立たせたくない…迷惑をかけたくない…。
「また二人に虐められるのが怖いんじゃあないのか?」
「ああッ!?」
「メローネてめぇ…ッ!」
「虐め………だと?詳しく話せ」
そう言えばこの部屋にはもう一人…ずっとパソコンをいじくってた人がいた。今喋ったのはその人…?
「ギアッチョはマンモーナの飲み物を凍らせる地味な嫌がらせ、イルーゾォはわざと転ばせる陰湿な嫌がらせをしていたぜ」
「………事実か?」
「……………」
「だ、だがよォ…おれは怪我しねぇようにちゃんとクッション用意しといたんだぜ」
「何だその矛盾した行動は。お前ら…どういうつもりだ」
大きなクッション、わざわざ置いてくれていたんだ…。後でお礼を言わなくちゃ。おかげでプロシュートにもらったタイツに傷が付かずに済んだから…。
「………」
「ギアッチョ、話せ」
「いや…、マンモーナ………この、ミエーレがよォ…まともじゃあねぇから…」
「何だと?」
まともじゃあない………。
「感情ってもんがねぇじゃあねぇか。笑いもしねぇ怒りもしねぇ泣きもしねぇ!何があったらそういう人間らしさを忘れられるってんだァー?」
「つまり?」
「…理不尽なムカつく事がありゃあよォ、その怒りで人間に近付くんじゃあねぇかって…思っただけ」
「…怒らせたかっただけだって言いてぇのか。感情を思い出させようとしただけだと?」
「………おう」
「イルーゾォ、お前もか」
「………まぁ…暇だったしな」
「暇潰しに弱い者を虐めるな」
「……………」
「はぁぁ………くだらねぇ」
「「……………、」」
…なんか、わたしのせいでリーダーに怒られてる…?どうしよう…謝った方がいいかな…。
「ミエーレ」
「あ……」
リーダーは壁に向かって蹲っていたわたしを立ち上がらせるとソファーに座るように誘導してくれた。
「お前らの言い分は分かった。…だがもう余計な事はするな。可哀想だろうが」
「「……………」」
可哀想…?わたし、可哀想だったの…?リーダー…優しい。肩に置かれた大きな手が温かい。さっきまであんなに怖かったのに…。リーダー、見た目は一番怖いのに…一番優しいです。
《アジト生活初月の揉め事》
この日から何かあるとすぐにリゾットの背に隠れるようになったマンモーナだった──。
Fine.
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