兄貴に言ったら怒られそうなので内緒にしておくこんばんの悪酔い
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「………ん…」
重い瞼を上げたリゾットは雑魚寝状態のチームのメンバーが視界に入った事で夕方から酒盛りをしていた事を思い出した。時計に目をやろうと視線をずらしたところで、一人ぽつんと座ってグラスを傾けている彼女と目が合い少し驚いたような表情を浮かべた。
「起きていたのか、ミエーレ」
「あ…はい」
ミエーレはすぐ傍で豪快な寝相を披露しているプロシュートを見ると小さく息を吐いて目を細めた。
「みなさんはまだ起きそうにないですよ。リゾットはどうして起きちゃったんですか?おしっこですか?」
「いや………。お前は?眠いなら寝ろ」
「ん…………今日は土曜日なのでプロシュートに絵本を読んでもらわないと眠れないのです…」
ギアッチョが聞いたら「幼稚園児かァ〜おめーはよォォ〜!!」と怒鳴りそうだな、と心の中で思い小さく「そうか」と答えたリゾットは、すぐ側にあった瓶を傾け手に持っていたグラスに注ぎ足したミエーレを見て疑問の言葉を投げかける。
「ずっと飲んでいたのか」
「あ………これ、飲んじゃダメでしたか?」
「ここにあるものは何を飲んだっていい。全員潰れた後も一人で飲んでいたのかって聞いてんだ」
「あの………はい………」
「…………それは?」
「これ?飲みますか?…どうぞ」
「………アルコール度数40…。これをずっと飲んでいたのか?何時間も?」
「あ、いえ…これとか、こっちも…ちょっとずつ色々飲んでますよ」
「お前………酔いは?」
「ん…?」
「…………もうやめておけ。体に悪い」
「悪いんですか?」
「そんな飲み方は悪酔いを招く。どれもこれもキツい酒ばかりじゃあねぇか。何で酔ってねぇんだ?」
「何で…って聞かれても分かんないです…」
「…だろうな」
「じゃあこれ…最後の一杯にしますね」
そう言って先程注ぎ足した分を一気に飲み干すとまた空になったグラスを満たし始めたミエーレ。リゾットは"手元のが最後じゃあないのか"と思いながら、喉の渇きを潤そうと目に付いた中で一番強い酒に手を伸ばした。
「あ、乾杯…乾杯しましょうリジョット」
「…リジョット?」
ゆっくりと立ち上がると距離を取らずにぴったりとくっついて隣に座ったミエーレを見て、何かを見極めるように目を細めたリゾットはミエーレの頬に手を添えて口を開いた。
「酔ってるな」
顔色に変化はないが言動から見て取れる酔いが回っている様子に小さく溜息をついたリゾットは彼女の手からグラスを取り上げる。
「あ…飲み物…」
「飲み物という認識はやめろ。見境なく飲んでいいもんじゃあないんだからな」
「でも飲める物だから…飲み物ですよね」
「屁理屈を言えるとはな。酔ってると生意気じゃあねぇか」
「なま…」
「生意気」
「なまいき……怒ってる?」
「いや、怒ってはいない。いいか、酒は喉が渇いた時に飲む飲み物とは違うと覚えろ」
「すぃ…」
リゾットの手にあるグラスを物欲しそうに見つめるミエーレ。その視線に気付いたリゾットはもう一滴も飲ませないとでも言うようにそれを飲み干した。
「っ……オレですらキツいと思うものをお前…どれほどの量飲んだんだ…」
「…………」
「…おい、ミエーレ?」
「リゾット………唇から血が…。乾燥してるから切れちゃったんでしょうか…」
「あ?…そうだろうな。気にするな」
「舐めたら早く治りますよ。じっとしててください」
「お…お前が舐めるのか」
「え?」
「切れたのは唇だぞ」
「はい…」
「……………、」
「傷は舐めたら早く治るって言ってプロシュートがいつもしてくれるんですが……違う時もあるんですか?」
「…基本的にプロシュートとする事を他の野郎とするのはまずい」
「ふーん…」
「……理由が分かるか?」
「分かんないです」
「少しは考えろ…」
「怒ってる?」
「怒ってない」
お互いが思っている関係性に相違があるのではないかと考えたが、彼女の答えが分かるリゾットはそれを口に出すのをやめ目元を手で覆った。恋人だと思っているプロシュートに対して、ミエーレは酔いが回り思考能力が低下している事も相まって、おそらくよく分からないと答えるだろうと想像がつく。
「…眠いんですか?」
「………いや」
「…また酔いが回ってきちゃいました?」
「………」
「横になってください」
少し距離を置いて自分のスカートを整えると、膝をぽんぽんと叩いて「どうぞ」と言ったミエーレ。膝を枕の代わりにして横になれという合図だと分かるが、プロシュートがすぐ傍で寝ているのに他の男にそれを許す彼女を見てリゾットはやはり関係性の認識に違いがありそうだと思い眉を寄せた。
彼女の考えがどうであれプロシュートが特別視している事は明らかな為リゾットの認識も部下の恋人ではあるが、人の女の膝を借りる事へ後ろめたさを感じるには酔いが回り過ぎているらしく彼女に素直に応じ横になった。
「リゾット………」
「何だ………顔が近ぇ」
「あ、すみません…つい…。リゾットのお目目は綺麗ですね」
「…何だと?…当て付けか?」
「当て付け…?自分の目の色が好きではないのですか?」
「……………」
「こんなに…珊瑚みたいに綺麗な色なのに…。リゾットの目は夜の海で光る珊瑚みたいでとっても綺麗です」
「……………、」
ミエーレの細い指が前髪を避ける動きに心地良さを感じていたリゾットは、真っ直ぐに見据えてそんな事を言う彼女から顔を背けて目を閉じた。
「寝ちゃいました?リゾット」
前髪を避けていた手が徐々に頭を撫でる仕草に変わっていく。その慣れない感覚に表情を硬くするリゾットをよそにミエーレは穏やかな口調で言葉を降らせる。
「…リゾットは偉いですね」
「は…?」
「とても難しいお仕事を頑張っていて偉いです。生きているだけで偉いのに…とってもとってもスゴいです」
「生きているだけで…?」
「すぃ!もちろんです!」
「……………」
「だからあんまり一人で頑張り過ぎてはダメですよ。仲間を頼って甘えられる時は甘えなくてはいけません」
「………ああ」
「本当は生きているだけでいいんです。ただ、生きてさえいれば…それだけで…」
「………偉いのか?」
「はい!…よしよし…いい子いい子」
まるで子供を寝かし付けるかのように頭を撫でながらそんな事を言うミエーレ。普段の怯えてまともに会話も出来ない様子からは想像も出来ないその行動に、リゾットは寝言のような力ない声で呟いた。
「…相当酔っているな。オレも、お前も………」
「…そうですね…。…眠って酔いを醒ましましょう。…おやすみなさい、リゾット…」
「ああ………おやすみ、ミエーレ」
それを最後の会話とし二人は同時に目を閉じた───。
《兄貴に言ったら怒られそうなので内緒にしておくこんばんの悪酔い》
Fine.
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