揉めつつ花丸ビスケット
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ミエーレは…字がすごく下手くそだ。
「ミエーレ、もしかして手首痛いのかい?」
「え?痛くないです」
「あ…そう?そっか」
「どうしてですか?」
「字がふにゃふにゃで変だから…」
「え…!?わたしの字って変なんですか!?」
「うん。下手くそだよ」
「へ…へたくそ………」
スペルもよく間違うし…ミエーレはきっと学校に行った事がないんだ。兄貴が常識がねぇってよく心配してるけど、常識的な事だけじゃあなく一般教養もないんだ。兄貴に出会って初めて文字の読み書きを教えてもらったのかな…。
そういや前に兄貴が…人質が口で書かされたのか?ってくらいよれよれの汚ぇ字でプロシュートって書かれた紙切れを持っていた事があったっけ。ゴミかって聞いたら殴られた…。あれってもしかして字を覚えたばかりのミエーレが初めて書いたものだったのかも。字も汚ければスペルも間違ってたけど、兄貴大事そうに持ってたもんなぁ。
そうだ…字の読み書きもそうだけど簡単な計算もできないんだよなぁ。だから今日はホルマジオに足し算を教わるって言ってたっけ…。
「───ここにチョコラータが4個あるとするだろ。そこでプロシュートが5個入りのチョコラータを追加でくれた。今その場には全部で何個のチョコラータがある?」
「えっと…4、…5678…9個です!」
「おう、そうだ」
ホルマジオは頭も面倒見も良いから頼りやすいのかな。ただの数字じゃあなく分かりやすいようにお菓子に例えてくれてるあたり優しいなぁ。
「じゃあちょっと難しくなるぜ。次は指使わずに出来たらいいなァマンモーナ。9枚のビスケットがあるところにギアッチョが9枚のクッキーをくれた。全部で何枚だ?」
「ビスケットとクッキーは別物なので一緒には数えないです」
「そうか。じゃあ全部ビスケットだ。9に9足すといくつになる?」
「えっと…9…10………。………18です!」
「ベネ。じゃあ次な。ソルベとジェラートが36枚入りのビスケットの缶をくれた。すでに18枚持っているお前は全部で何枚のビスケットを手に入れた?」
「ソルベとジェラート…優しいです!」
「問題に集中しような、マンモーナのミエーレ」
「18たす36ですか…」
「うん」
「うーん………指が…足りないです。…ホルマジオ…指貸してください…」
「…はっ…しょうがねぇなぁ~」
「えっと…ホルマジオの10本指を足してもまだ足りない…。…メローネ!」
「ん?」
「指貸してください!」
「何本?切断してかい?」
「んなわけあるか!」
「ちょっとこっちに来ていただけません…?」
「あー…うん」
「えっと、メローネの10を足すと…まだ30?…あと6本足りない…」
「ただいまァ」
「ギアッチョ!」
「おう………何やっとんだ」
任務から帰って来たギアッチョにも手伝ってもらえないか声を掛けている。…言ってくれたらオイラも手伝ったのに…。書類整理をしているから忙しいと思ったのかな。…メローネも作業の途中だったみたいだけど…。
「ギアッチョの指を足すと全部で40です!…あれ、ソルベとジェラートがくれたのは…」
「36」
「…36よりも40の方が多い…ですよね?」
「いくつ多いと思うよ」
「え…」
………メローネもギアッチョも何も言わずに指だけ貸してやってるのはミエーレが自分で考えて答え出さないと意味ないからだよね。みんな優しいなぁ。…4人の大人が手並べて指の数に集中してるって状況がシュールだけど………。
でも大丈夫かな。そろそろギアッチョがキレ始めるんじゃあ………、
「オイ、オメーよォ〜」
あ、やっぱり…。
「足し算やってたんだよなァ?だが40は36よりなんぼ多いか、ってのは引き算じゃあねぇのか?ああ?足し算やらせてる中で引き算やらせてんじゃあねぇぞォ!そんなもんオレだって混乱するぜ!こいつはマンモーナだ!その辺の配慮はオメーの仕事だろうがァッ!!」
…できないミエーレじゃあなく、できない事をやらせてるホルマジオにキレた…。
「あー…指が疲れてきたな。4本だけ休憩させてもいいかい?」
「ごめんなさいメローネ…もうちょっとで分かりそうなんです…」
「ああ、いいよ。おや?4本休憩させると残りは6本だ。今がチャンスじゃあないか、ミエーレ?」
「あ…全部で36です!…何に36足すんでしたっけ…」
「…オレが聞いた時は18だったぜ」
「18!グラッツェ!数えますね!えっと…19、20、21………」
「「「………………」」」
…ミエーレが指を数えてる様子をただじっと見てる3人………シュールだなぁこの絵面。指で数えるなら18に36足すより36に18足した方が早いのに誰も教えてあげないのは何なんだ…?今誰か帰って来たらどう思うんだろう?
「52、53、54………答えは54!」
「ディ・モールト、良し!」
「順番通り数えられたじゃあねぇか、オメーはやれば出来んだぜ」
「しょうがねぇなぁ〜………」
計算…してないよね。ただ数かぞえただけだけど、それで良いのかな…。
「指を貸す仲間がいつも居るとは限らねぇからな。ミエーレ、大きい数の計算する時はこういう風に紙に書いて計算するんだぜ。見てろよ」
ホルマジオに筆算のやり方を教わってるミエーレは興味津々って感じだ。難しい事に悩むような顔じゃあない…知らない事を知れるのが楽しいのかな?知らない事の方が圧倒的に多い、世間知らずなんて言葉じゃ足りないくらいに。って、前に兄貴が言ってたっけ…。
「やってみな」
「えっと…これとこれを足したのを…ここ?に書くんですか?」
「そうだぜ」
…教えてあげてるホルマジオが見てるのは分かるけど、メローネとギアッチョも黙って見守ってるのは何なんだろう…?ちゃんと出来るか気になるのかな。
「ディ・モールト…!ディ・モールト…!!」
「メローネうるせぇ。…まぁ、ディ・モールト!上出来だがなァッ!!」
「上出来……ギアッチョ、それって褒め言葉ですか?」
「そうだろーが!!」
「ほ、褒められました!ホルマジオ!」
「ったくしょうがねぇなぁ〜〜おめーらうるせぇから向こう行ってろ」
「オレらだって指貸してやったんだからちゃんと出来んのか見ていい資格はあるよなァ〜!?」
「邪魔してないんだからいいじゃあないか」
「邪魔してんだろうが喧しいんだからよォ〜」
そんなに周りでギャーギャー騒いだら集中できないんじゃあないかな。ミエーレ……あ、でもなんか嬉しそう…かな?もしかしたら周りに人がいる事自体が嬉しいのかも…。兄貴がいつもミエーレをアジトに連れて来るのは寂しくないようになのかな。人と接する必要があるって理由だけじゃあない気がする。みんなもここは保育園じゃねぇって言いながらミエーレの為にドルチェ買い置きしたりして…結構受け入れてるよね。
「あの…ホルマジオ…これ、合ってますか?正解ですか?」
「ああ?どれどれ………おお、よく出来たな!合ってるぜ。ほらよ」
「わぁ~…ビスケット…」
「うめーだろ」
「はい!あの…これ…合ってたので、赤で丸付けてほしいです。ここに、丸…」
「はいはい」
「オイオイ ケチかァ~ホルマジオてめぇ~~ただの丸なんて味気ねぇだろうがよォ~~!!」
「あ?」
「どうせなら花丸を付けてやったら良いんじゃあないか?褒めて伸ばす事が教育にはスゴク重要だ」
「うるっせぇ~な~オメーら一々よォ!」
「ペン貸せ!オレが書き足してやっからよォ~!」
「ギアッチョ次ペン貸してくれ。マンモーナの好きなキリンさんを描いてやろう。学習したばかりなんだ。首が長いキリンさんをミエーレは特に気に入ったらしい」
「キリンも知らなかったのかよマンモーナよォ~~明日動物園行くか?」
「待てお前ら!勝手に色々書くんじゃあねぇ!次の計算の問題を書くスペースがなくなんだろうが!」
「だからケチくせーんだよオメーはッ!!」
「そんなもん新しい紙に書けばいいだろ」
さっきからミエーレを置いてけぼりにして三人で揉めてるなぁ…。たった一問当たっただけで花丸付けてあげるのも甘いけど、正解したご褒美にビスケットあげるホルマジオも相当甘いよなぁ~。
…兄貴に何て言おうかな?自分が居ない時チームのメンバーとどう過ごしているのか気になるから監視しとけって言われたから…ちゃんと報告しないと…。
えーっと…、ミエーレの字が変で簡単な計算もできなくて…ホルマジオとチョコラータやビスケットの数を数えて、ビスケットとクッキーは別物で…ギアッチョとメローネの指の数を足していって…足し算の中で引き算をして……って、ダメだ!言いたい事は簡潔にまとめろ!って前に兄貴に怒られたんだった…。要点だけまとめないと………!
兄貴へ、
《揉めつつ花丸ビスケット》
だったよ。
───見たままの事実なのにその書置きを見た兄貴に意味分かんねぇって殴られるのは数時間後の話…。
Fine.
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