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特別が普通の日常

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ヒロイン




「………おいマンモーナ」

「ん………はい?………イルーゾォですか?どこです?」

「よく見ろ。後ろだ」

「………あ、こんなところに鏡があったんですね」

「おめー寒くねぇのか。どうしてもって言うなら鏡の中に入れてやってもいいぜ。冷気は許可しない。おまえだけを許可してやる」

「えっと……寒くないです…。イルーゾォ、寒いんですか?」

「寒くねぇのか。本当に?」

「はい…」

「何でか知らねぇがギアッチョの奴がキレてやがる。気味が悪いのが静かにキレてるってところだ。見ろ。スタンドの冷気が漏れてやがる」

「………、本当だ………」

「ああいうのには関わらねぇ方が利口だぜ。距離をとって鏡の中に…」

「ギアッチョ、どうして怒っているんですか?」

「話聞けよミエーレおい」

「ああ?あー………ミエーレよぉ、おめープロシュートくせェんだが」

「プ、プロシュートくさい…っ?どういう事ですか?」

「そりゃあこっちのセリフだ。どういう事だァ〜?なァ!なんでおめーから今ここにいねぇプロシュートの匂いがすんだよ!おい!!」

「ご、ごめんなさい…怒鳴らないでください…っ」

「オレが納得する説明をしてみろよなァおいミエーレ~~!!」

「落ち着けよギアッチョ。泣かしたって誇張してモンペに言っちまうぜ?」

「勝手に鏡から出て来てんじゃあねぇ!許可してねぇぞ!」

「なんでおれが鏡から出る際におまえの許可が必要なんだァ!?おれに許可を下すか否かの権限を勝手に持つ事は許可しなァァーい!!」

「イルーゾォ……ギアッチョにくさいと言われてしまいました…」

「ああ?まぁ聞いてたが。仮にも女にひでぇ事言いやがるぜ」

「くさいですか?わたし…」

「………」

「嗅ぐな嗅ぐな!仮にも女だぜこいつはよォ!」

「言われてみりゃあ…確かにプロシュートくせぇ」

「あの…それってどういう事なんでしょうか…プロシュートは別に臭くないです…」

「だからよォ~~何でおめーからプロシュートの匂いがすんのかって聞いてんだよッ!!」

「プロシュートの…匂い………??」

「近くに居過ぎるせいで分からねぇのかもな。ギアッチョ、おめーだって自分の匂いなんか分からねぇだろ」

「何普通の奴みてぇな事言ってんだァ?鏡に帰れおさげ野郎!」

「どういう喧嘩の売り方だ!おれは至って普通の奴だろうが!八つ当たりしてんじゃあねぇぞ!」

「とにかく臭くて敵わんから着替えろミエーレ

「替えの服…持って来てないです………」

「…おらよ」

「………えっと…お借りしてもいいんですか?」

「なんだおめー女物の服なんか持つ趣味あったのかよ気色悪ィ」

「ギアッチョとおそろいみたいで可愛いです!」

「ギアッチョとおそろいみてぇだったら可愛いわけねぇだろうが。気ぃ使ってテキトーな事言うと後々面倒だぜミエーレ

「でもほら…見てください!しましまのスカート可愛いです!」

「あー…良かったな」

「さっさと着替えろマンモーナァ…」

「あ…はいっ」

「あ"?おいおいおい!おいッ!!ここで着替えるんじゃあねぇ!何考えてんだァ!?向こうの部屋で着替えろボゲェッ!!」

「えっ…ど、どうしてそんなに怒るんですか…?」

「ははっプロシュートの性癖が垣間見えるな」

「性癖…?」

「目の前で着替える事を強要されてんだろ?それが当たり前になっちまってるから今野郎が二人もいるって状況なのに服を脱ごうとした」

「チッ!気持ち悪ぃジジイの趣味に付き合ってんじゃあねぇぞ!」

「………、」

「何訳分かんねぇみてぇな顔してんだァ?いいか!普通女は人前で着替えたりなんてしねぇんだぜ!特に野郎の前なら恥じらいってもんを持つのが普通だ!」

「普通………。すみません…普通、というものが分からなくて………。でも、覚えました。教えてくれてありがとうございます。隣の部屋で着替えてきますね」

「……………この程度の”普通”が分からねぇってどういう事だァ~~~?」

「…育った環境が”普通”じゃあなかった…って事だろ。別に珍しい事じゃねぇ」

「……………」

「………あ、あの………す…すみませんギアッチョ………後ろの…背中のぴーに手が届かないです…」

「背中のぴー?」

「これ…」

「…ファスナーを上げ下げする時によォ……ぴーなんて音が鳴った事あるかァ?ねぇよなぁ?そんな音が鳴るように作られてねぇんだからよォ!それなのにファスナーをぴーって呼ぶのはどういう事だァァ?全然納得いかねぇぞォ!!」

「プロシュートの奴がぴーって口で言うんじゃあねぇか?」

「んな事あってたまるか気色悪ぃ!」

「だがよォ、ミエーレは8割プロシュートの言動で構成されてる訳だからあり得るぜ」

「考えたくもねぇッ!」

「あの…ギアッチョ………イルーゾォでもいいので…服、脱がしてください………」

「服も一人で脱げねぇなんて手の掛かるバンビーナだなまったく…」

「つーかよォ…手が届かねぇならそもそもどうやって着………いや、言わなくていい」

「プロシュートが着せてくれました」

「言わなくていいっつったんだがなァァ!?」

「ひっ……ギアッチョはどうしていつも大きな声を出すんですか…」

「おめーがイラつかせるからだろうがッ!まったく普通じゃねぇぞ!異常だ!おめーの言動は全部な!!」

「………ごめんなさい………。ギアッチョの”普通”は…ちょっぴり難しいです………わたしの常識…教えてもらった”普通”とは違うので………」

「そりゃあプロシュートが普通じゃねぇ事教えてるんだぜ」

「え…」

「プロシュートの言う事を何でも鵜呑みにするのは良くねぇってこったな」

「そんな………。………でもわたしはプロシュートを信じるしかないです…プロシュートがわたしの全てですから………」

「……………」

「プロシュートが教えたものを頭に入れておくのはいいが、それが全てだっつーのは視野が狭いってもんだぜ。普通ってのは一人の常識じゃあねぇ。色んな奴の共通認識だ。ま、今すぐどうこうなる話じゃあねぇ。これから学んでいくんだな」

「………はい…」




─────




…結局、着替える前にプロシュートが帰って来たのでギアッチョとおそろいみたいなお洋服は着る事が出来なかった…。しましまのスカート可愛かったなぁ…。…だけど、着替えたとしてその理由をプロシュートに聞かれたら答えに困ってしまうので良かったのかも知れない…。くさいと言われたから着替えた…なんて本当の事は言えない…。プロシュートくさい、って言うのがよく分からないけど…きっと傷付いてしま………いやプロシュートは傷付かなそう…。………きっと怒ってしまう………。怒らせるのは…嫌です。


「部屋着に着替えるか?ミエーレ

「あ、はい…」

「ほらよ」

「ありがとうございます」


ひらひらのネグリジェ…。プロシュートはレースのお洋服が好きなのかも知れない。用意してくれるのはひらひらのレースのものが多い気がする…。可愛いので好き…。だけどしま模様や水玉もたまには………なんて、贅沢な事を言っては嫌われてしまうかも…。お洋服を着せてもらえるだけで十分だというのに…こんな事を思っては罰が当たってしまいそう…。

………あ、ついいつもの癖で服を脱ごうとしちゃったけど…ダメだった。人前…特に男性の前で着替えをするのは普通じゃないんだ…。………隣のお部屋で着替えなければ………。


「あ?おいミエーレどこ行くんだ」

「あの……隣の部屋で着替えてきます………」

「はあ?ここで着替えりゃあいいじゃねぇか」

「あ…えっと、ギアッチョに怒られました。男性の前で着替えをするものではないと…」

「そいつはよぉミエーレ…ギアッチョの前で着替えたって事で良いよな?ええ?ミエーレ。どういう状況か詳しくオレの納得のいく説明をしてもらおうか。なぁ、ミエーレよォ~」


大変だ………どうしよう。プロシュートくさいと言われ着替えろと服を渡されたので着替えようとした…?そんな正直に……面と向かってくさいだなんて言えない………そもそもプロシュートは別にくさくないし………。


「あの………、今日は………ギアッチョとイルーゾォと…普通が何かについて話をしました」

「普通?」

「はい…それで、普通…女は人前で着替えたりなんてしねぇんだぜ!特に野郎の前なら恥じらいってもんを持つのが普通だ!…と、言われて………」

「それでオレの目に入らねぇところで着替えようとしたって事か」

「はい…」

「まぁ…そうだな。おめーには0から10までちゃんと言葉にして教える必要があるのを忘れていたぜ。いいか?躊躇いも恥じらいもせずに服を脱ぎ始めるのは普通じゃあねぇ。異常だ。そんな事を人前でやっちゃあいけねぇ」

「あ…はい、」

「だが今までオレの前ではそれを普通にやっていたな」

「すみません………」

「何故それをオレが注意しなかったか分かるか?オレの前でならそれが許されるからだ。オレの前でだけは、それが普通であっていいんだぜ」

「………どうして、ですか?」

「どうしてもだ。相手がオレ一人である場合のみ、普通に着替えりゃあいい。大体おめー一人じゃ着れねぇし脱げねぇだろうが。ほら脱がしてやるから後ろ向け」


0から10まで言葉にして教えてもらわなきゃ分からない…。どうしてプロシュートだけは良いんだろう?普通はしない事をプロシュートの前でだけはして良い………プロシュートの前では普通はしない事を普通にしていた………。………普通、って………なんだか分からなくなってきてしまった………。


「普通って…何ですか………?」

「オレが教える事以外だ」

「え…っ!?プロシュートが教えてくれない事…?それって…わたしの知らない事です…!」


わたしはプロシュートが教えてくれる事しか知らないから…、


「オレがおまえに教える事は特別だ。つまりそれ以外は全部普通なんだぜ」

「………え、」

「だが日常的にやってる事はそりゃあもうオレとおまえの中では普通になる」

「特別なのに普通…?」

「普通じゃねぇもんが普通になる時があれば、普通だと思ってるもんが普通じゃねぇ場合もあるんだぜ。オレとおまえの普通が他の奴の異常なんて事は珍しくねぇ。結局広く知れ渡ってるもんだけが普通とは限らねぇって事だ。大体これは普通かそうじゃねぇかなんて一々気にしてる方が普通じゃねぇぜ」

「えっと、つまり…?」

「しょうもねぇ事ごちゃごちゃ抜かしてねぇで飯にすんぞ」


腕まくりをしてキッチンに向かってしまった………。謎は深まるばかり………。

美味しいごはんを食べて軽く体を洗ってもらってホットミルクを飲んでベッドに入ってもまだどこかもやもやする…。普通って何なのか分からないしプロシュートの言う事が難しくて混乱してしまった。もう、普通じゃねぇ!って怒鳴られるの嫌だなぁ………。



「───どうしたミエーレ。眠れねぇのか」


あ…寝返りを打ち過ぎたかも………プロシュートを起こしてしまった…。


「ごめんなさい…」

「まだくだらねぇ事考えてやがるのか」


お…怒っている…かな?眠る邪魔をしてしまったし、いつまでもぐるぐる考えているから………、


「普通が何か…だったっけか?おめーが気になってんのは」


あ……でも口調は不機嫌そうではないように感じるし、ほっぺを撫でてくれる手付きが優しいから怒ってはいない…と思う…。


「すみません……何だか混乱してしまって………」

「考えるだけ無駄だって事に早く気付ければいいなァマンモーナのミエーレ

「むだ…ですか?」

「そりゃあそうさ。誰の匙加減か知れねぇ普通の基準なんざその時々、人それぞれ違うんだからな」

「そうなんですか…」

「そうなんだぜ。大事なのは一般的な普通じゃあねぇ。おめーが何を優先したいかだ。考えるなら正解のねぇ”普通”なんかじゃなく、おまえが何を重要だと思うかを考えな」


わたしが重要だと思うもの………、


「………プロシュート、」

「ん?」

「プロシュートだけです。重要なのは」

「………おう、答えが見つかって良かったじゃあねぇか」


プロシュートの考え、基準がわたしにとってはとても重要で、わたしはそれに倣いたい。普通というのは一人の常識ではないとイルーゾォは言っていたけれど、わたしの中の常識はプロシュート一人のもので築かれ、わたしはそれが良いと思っている。プロシュートの普通がわたしの普通で、それが他の人と違っていてもプロシュートとおんなじだったらそれでいい。他の人に普通じゃないって怒られたら、その時はまたプロシュートに相談しよう。今すぐどうこうなる話じゃあねぇってイルーゾォ言ってたし……一個ずつ経験して覚えていこう。


「そもそもおまえは知らない事が多すぎる。オレを基盤にものを知って広い目を持つんだ。”だいたいこうだ”っつー普通の感覚はそうなって初めて見えてくるもんだからな。だが普通にこだわる必要はねぇ。誰かに普通じゃねぇと咎められたとしてそれが何だってんだ。おまえはおまえがしたいようにすりゃあいいんだぜ」

「わたしがしたいように…」

「おまえは自由なんだからな」


……………そんな事、…初めて言われた………。わたしは…自由なんだ…。壊れれば捨てられる物のような扱いしか受けてこなかった。自分の思い通りにならなければ暴力を振るう…身勝手な人しかわたしの周りにはいなかった…。自由を与え、人として接してくれる…プロシュートは、わたしを物から人間にしてくれた…。


「おい………何泣いてんだ、おめー…」

「え………」


どうして………悲しくないのに、涙が………?


「っ、ごめんなさい…」


シーツが濡れてしまう……買ってもらった洋服が汚れてしまう……。汚したら怒らせてしまうかも…嫌われてしまうかも………、


「ごめんなさい、嫌いにならないでください…っ」

「は?…おめーの思考回路はよく分からねぇな。何で嫌いになると思う?」

「だ…って、涙が………、汚れてしまうから………、」

「…オレは嬉しいぜ。おまえが泣いたところは初めて見たからな」

「………、」

「泣きたい時は泣けばいい。おめーは人形じゃあねぇ。感情がある人間だ。会った時は表情筋が死んでる喜怒哀楽のねぇ奴だと思ったぜ。やっと人間らしさを取り戻してきたじゃねぇか」


…本当に、嬉しそう…。どうしてそんな…優しい顔を向けてくれるんだろう…?人間らしさを取り戻してきた……わたしが良い方向に変わっていく事を嬉しいと思ってくれるのは…どうしてなんだろう…。
…細められた目が、頭を撫でてくれる手が温かくて…嬉しい、というか…上手く言えない不思議な気持ちになる。心臓から指先までじんわりとぽかぽかしてくるような感覚…?


「もう寝るぞ、マンモーナ」


毛布を掛け直してからギュッと優しく抱き締めてくれた…。プロシュートの温もりと香りに包まれて、とても心地が良い…。………あ、ギアッチョが言っていたプロシュートの匂いってこの事かな?プロシュートくさいなんてひどい言い方していたけど………いい香り…すごく安心する………。こうして抱き締められて眠る事は普通なんだろうか……わたしにとってはこれ以上ないほど特別な事だけど…。プロシュートがくれるものは全部特別だ…。いつかこの特別な気持ちを普通だと思う時が来るのかな…。こうして隣で眠れる事も、一緒にごはんを食べられる事だって…全部、プロシュートのそばにいられる事は特別で、とても心が満たされて………もしもこれを普通だと思えたら、当然の事だと思えるようになったら………、………なんて、もう考えるのはやめて眠ろう。普通かそうじゃねぇかなんて一々気にしてる方が普通じゃねぇぜ、ってまたプロシュートに言われてしまう前に………。



《特別が普通の日常》

その幸せに気付いて笑顔を溢すまであと少し───。
Fine.
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