「リヴァイ、一緒にお風呂に入らない?」
唐突な
ユーリアの言葉に、ティーカップを口に運ぼうとしていた動きを止めた。
中で揺らめいていた紅茶は口に到達する前にカップから零れ落ち、リヴァイの首に巻かれたスカーフを染めていく。
「あら…そこは口じゃないわよ。スカーフがシミになってしまうわ。貸して?洗ってくる…」
「………」
ユーリアの言葉が耳に入っていないのか、リヴァイは微動だにせず紅茶をスカーフに注ぎ続けている。
「リヴァイ?」
「………」
「目を開けたまま眠ってしまったの?ねぇ、リヴァイ」
目を見開き、独特なカップの持ち方のまま固まっている。
数秒後、すでに空になったカップに口を付け、ないものをずず…と啜った。
「
ユーリアよ」
「あ、おはよう?」
「寝てねぇよ…。…お前は…俺をからかうのが好きなようだが…、…期待に副える反応は返せねぇ。だからよく分からん冗談を言うのはよせ」
「あなたの反応はいつも最高よ」
「やめてくれ」
「でも私、冗談なんて言った覚えはないわ」
「………」
「ねぇ、私とお風呂に入るのは嫌?」
「げほっげほ…げほ…っ!」
カップをソーサーに置くこともままならず、目を血走らせて咳き込んだ。
「大丈夫?」
テーブルを挟んで向かい側の椅子に腰かけていた
ユーリアは、リヴァイの傍まで来て彼の背中を優しく擦る。
「ごめんなさい。あなたがこんなにびっくりするとは思わなくて…。でも、ちゃんと理由があるのよ?」
「理由…?」
彼女には、リヴァイと入浴したいれっきとした理由があるらしい。
「あなた…日頃からとても疲れが溜まっているでしょう?人類最強なんて心にも重い荷を抱えているし…。だからね、少しでも楽になってもらいたくて…」
「………」
「人に髪の毛を洗ってもらうのってとても気持ちがいいらしいの。…あなたの髪の毛を洗ってあげたいわ」
「……………」
──────────「…で?洗ってもらったの?」
会議室の机に身を乗り出して興味津々な様子でそう聞いたのは、メガネをかけた長身の女性。
団長のエルヴィンから少し遅れるとの連絡があり、暇を持て余していたハンジは最近
ユーリアとはどうなの?とリヴァイに聞いていた。
昨晩の事をそれとなく話すと、その場にいた幹部の面々は興味を惹かれたように話に聞き入っている。
「…人の厚意を無下にはできねぇだろうが」
「うひゃーー!」
奇声を上げながら腹部を抱えて転げ回る勢いのハンジを、リヴァイはまるで軽蔑するかのような冷ややかな目で見下ろす。
「うるせぇぞ、奇行種が…」
「いやいやあなたも十分奇行種だって!」
「あ?」
「あの人類最強のリヴァイ兵士長が!潔癖のリヴァイが!彼女にはデレデレで髪洗ってもらって上機嫌!!あひゃひゃひゃひゃー!!ひー!お腹痛いーーー!!!」
「…削ぐ」
「あー、待って待って!!質問!髪以外も洗ってもらった!?」
「洗わせるわけねぇだろ。召使いじゃねぇ」
「あーだよねー。え、…二人とも…全裸?」
「んなわけねぇだろクソが!」
「えー!?お互いどういう恰好!?すっごい気になるんだけど!!」
「チッ…」
「っていうかさ…あなた、無事だったの…?」
「あ?」
「ほら…ね?あなたも男なわけじゃない。好きな人に尽くしてもらって…こう…、反応するものがさ。大丈夫だった?」
「………んなもん、気合でどうにでもなる」
「そうなの!?すっげーーー!!リヴァイのリヴァイちょーつえぇぇーーー!!人類最強マジ最強だな!!」
「うるせぇ!黙ってろクソメガネ!!」
《人類最強マジ最強》
Ende.