HAPPYEND
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ぱくり、と口を開くベルベットの小箱。
その真ん中で小さな輝きを放っているはずの指輪はない。
当然そこにあるべきはずなのに、何度見ても箱の中は空っぽ。
ニュートは深い深いため息をもらす、その足元でベイビー二フラーたちがお気に入りの宝物を抱えて楽しそうに転げ回っている。
恋人のリジーにプロポーズしようと決めて、指輪を買いに行ったのはほんの一か月前のことだった。
二フラーに赤ちゃんが産まれたのをきっかけに、ついに覚悟を決めたのだ。
振り返れば、リジーと付き合い始めてからそれなりに長い。
安定した魔法省勤めでもなく、本の調査旅行で留守ばかりで会える時間も少ない、なんの面白みもない自分のような男にはもったいないぐらいの人だ。
よくも飽きずに、見捨てずに、リジーには本当に感謝している。
彼女との未来へ、背中を押してくれた二フラーにも。
……しかし、何度見てもやっぱり指輪はなくなってる。
「勘弁してくれ、頼むよ二フラー……」
二フラーの巣の前でニュートはしゃがみこんで頭を抱える。
絶対にこの中にあるはずだ、この宝の山のどこかに。
「――何してるの?ニュート」
二フラーの巣の中に頭を突っ込んで宝の山をかき分けるニュートを見つけ、リジーは苦笑を浮かべる。
「今度は何をスられたの?」と笑って尋ねる彼女に、ニュートは慌てて指輪の入っていた小箱を後ろ背に隠した。
「リジー!や、その、なんていうか、なんでもないよ」
「あやしいー」
リジーはくすくす笑ってからかいながら、ベイビー二フラーたちを捕まえて手際よく檻の中に帰していく。
その中の一匹からころん、と探していた指輪が落ちるのをニュートは見逃さなかった。
リジーは特に気にする様子もなくポイッと巣の中に放り込む、シロクロ模様のベイビー二フラーが嬉しそうに飛びついた。
「分かった、まーた時計取られたんでしょう!もう、ちゃんと仕舞わないから~」
「リジー、違うんだ、違うんだけどその、ちょっと……」
ニュートはどぎまぎしながらベイビー二フラーの檻の中を覗き込む、その様子にリジーは訝しげにじっと彼を見つめた。
「なあに?あ、もしかしてテセウスから成人祝いに貰ったあのタイピン……」
「ああ、そういえばあれ最近見てないな……いや、違うよ、本当に」
「……まさか、へそくり?」
「え?いやいや、何でもないから大丈夫、心配しないで」
まさか婚約指輪をなくしたなんて言えるはずもない、ニュートは平静を装いながら必至にはぐらかす。
シロクロ模様のベイビー二フラーはすでに指輪をなくしてしまっていた。
一方で、リジーは彼の手の中にしっかりと握られた黒いベルベットの小さな箱に釘付けになっていた。
ベイビー二フラーの檻を覗き込もうとした時に彼女に背を向け、ニュートは後ろ背に握ったままの箱のことをすっかり忘れてしまっていたのだ。
はやる気持ちを抑えて徐ろに箱に手を伸ばす、あっとニュートが声を上げた時にはもう遅かった。
「ああ、ニュート……あなたのこういうところ、本当に、とても――」
「嘘だろ、最悪だ……」
「――大好きよ!」
リジーは喜びのあまりニュートに抱きついた、ニュートはすんでのところで彼女を受け止める。
一瞬、何が起こったのか理解するまでに数秒掛かった。
「カッコ悪いよ」
「たまにね、でもステキ」
「……指輪、見つけたらプロポーズしてもいい?」
「ええ、もちろん!」
ニュートは精一杯の愛しさを込めてリジーを抱きしめる、ふわりと持ち上げるとリジーは子どもみたいに笑った。
顔を近づけるとリジーは唇だけで「あいしてる」と囁いた。
キスまであと少し――「あいして……痛っ」
不意に指先に鋭い痛みを感じて見ると、構ってもらえずに拗ねたピケットが指に噛み付いたままぷらんとぶら下がっていた。
「ピケット、どうして噛むんだ!」
ガシャン、と金属のぶつかり合う嫌な音がしてリジーは恐る恐る振り返る。
檻の鍵が外され、中からベイビー二フラーたちが一斉に解き放たれ、リジーは思わず声を上げた。
「ああ!全くもう、イイとこだったのに~!」
▶あとがき
その真ん中で小さな輝きを放っているはずの指輪はない。
当然そこにあるべきはずなのに、何度見ても箱の中は空っぽ。
ニュートは深い深いため息をもらす、その足元でベイビー二フラーたちがお気に入りの宝物を抱えて楽しそうに転げ回っている。
恋人のリジーにプロポーズしようと決めて、指輪を買いに行ったのはほんの一か月前のことだった。
二フラーに赤ちゃんが産まれたのをきっかけに、ついに覚悟を決めたのだ。
振り返れば、リジーと付き合い始めてからそれなりに長い。
安定した魔法省勤めでもなく、本の調査旅行で留守ばかりで会える時間も少ない、なんの面白みもない自分のような男にはもったいないぐらいの人だ。
よくも飽きずに、見捨てずに、リジーには本当に感謝している。
彼女との未来へ、背中を押してくれた二フラーにも。
……しかし、何度見てもやっぱり指輪はなくなってる。
「勘弁してくれ、頼むよ二フラー……」
二フラーの巣の前でニュートはしゃがみこんで頭を抱える。
絶対にこの中にあるはずだ、この宝の山のどこかに。
「――何してるの?ニュート」
二フラーの巣の中に頭を突っ込んで宝の山をかき分けるニュートを見つけ、リジーは苦笑を浮かべる。
「今度は何をスられたの?」と笑って尋ねる彼女に、ニュートは慌てて指輪の入っていた小箱を後ろ背に隠した。
「リジー!や、その、なんていうか、なんでもないよ」
「あやしいー」
リジーはくすくす笑ってからかいながら、ベイビー二フラーたちを捕まえて手際よく檻の中に帰していく。
その中の一匹からころん、と探していた指輪が落ちるのをニュートは見逃さなかった。
リジーは特に気にする様子もなくポイッと巣の中に放り込む、シロクロ模様のベイビー二フラーが嬉しそうに飛びついた。
「分かった、まーた時計取られたんでしょう!もう、ちゃんと仕舞わないから~」
「リジー、違うんだ、違うんだけどその、ちょっと……」
ニュートはどぎまぎしながらベイビー二フラーの檻の中を覗き込む、その様子にリジーは訝しげにじっと彼を見つめた。
「なあに?あ、もしかしてテセウスから成人祝いに貰ったあのタイピン……」
「ああ、そういえばあれ最近見てないな……いや、違うよ、本当に」
「……まさか、へそくり?」
「え?いやいや、何でもないから大丈夫、心配しないで」
まさか婚約指輪をなくしたなんて言えるはずもない、ニュートは平静を装いながら必至にはぐらかす。
シロクロ模様のベイビー二フラーはすでに指輪をなくしてしまっていた。
一方で、リジーは彼の手の中にしっかりと握られた黒いベルベットの小さな箱に釘付けになっていた。
ベイビー二フラーの檻を覗き込もうとした時に彼女に背を向け、ニュートは後ろ背に握ったままの箱のことをすっかり忘れてしまっていたのだ。
はやる気持ちを抑えて徐ろに箱に手を伸ばす、あっとニュートが声を上げた時にはもう遅かった。
「ああ、ニュート……あなたのこういうところ、本当に、とても――」
「嘘だろ、最悪だ……」
「――大好きよ!」
リジーは喜びのあまりニュートに抱きついた、ニュートはすんでのところで彼女を受け止める。
一瞬、何が起こったのか理解するまでに数秒掛かった。
「カッコ悪いよ」
「たまにね、でもステキ」
「……指輪、見つけたらプロポーズしてもいい?」
「ええ、もちろん!」
ニュートは精一杯の愛しさを込めてリジーを抱きしめる、ふわりと持ち上げるとリジーは子どもみたいに笑った。
顔を近づけるとリジーは唇だけで「あいしてる」と囁いた。
キスまであと少し――「あいして……痛っ」
不意に指先に鋭い痛みを感じて見ると、構ってもらえずに拗ねたピケットが指に噛み付いたままぷらんとぶら下がっていた。
「ピケット、どうして噛むんだ!」
ガシャン、と金属のぶつかり合う嫌な音がしてリジーは恐る恐る振り返る。
檻の鍵が外され、中からベイビー二フラーたちが一斉に解き放たれ、リジーは思わず声を上げた。
「ああ!全くもう、イイとこだったのに~!」
▶あとがき
1/2ページ