聖なる死
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旅先で、とある女の子と出会った。
背中に鳩羽色の大きな翼を持った女の子、名前はリジー。
人間と魔法生物との混血なのか、先祖にマレディクタスがいるのか出自は分からないけど、数年前までその町では彼女は「天使」と崇められていたらしい。
小さな町の教会で育ち、人々に愛され、敬われていた。
けれど流行り病が町を襲い、その翼に斧を振り下ろされようとしているところをニュートが助けた。
艶のある羽根が一枚ふわりと、指先から舞い落ちる。
もう一枚、もう一枚と、一枚ずつ翼から剥ぎ取られていく。
無表情で淡々とその身を傷つけるリジーを見て、ニュートはぎょっとして思わずその手首を掴んだ。
ほんの少し力を込めれば簡単に折れてしまいそうなほど細く、あまりの頼りなさに驚き、ニュートは慌てて手を離す。
「?……なんですか?」
「そんなことしちゃいけないよ、痛いだろう」
リジーは不思議そうにちょこんと首を傾げる、どうやら意味が分かってないらしい。
「羽根はお守りになるんですって、一枚1ポンド」
「……ここではもう、そんなことしなくていいんだよ」
十八か十九といってもまだあどけない、ほんの子供だ。それなのに。
彼女を殺そうとしただけでなく、幼い少女を傷つけてあまつさえ金儲けの道具にしていた人間にニュートは憤りを覚えざるを得なかった。
「……ミスター・スキャマンダー、」
「ニュートでいいよ」
でも、と戸惑うリジーにニュートはぎこちなく微笑みを浮かべて「ニュート」と繰り返した。
「……ニュート、わたしご迷惑ですよね、なるべく早く出ていくのでそれまで――」
「――迷惑なんて、気にしないで。よければずっとここにいるといい。動物たちの世話を手伝って欲しいんだ」
「……でも、それではお礼になりません」
「お礼なんて、本当に気にしないで……そうだ、お茶でもどうだい?お腹空いてるだろう、クッキーしかないけど……あー、あとで何か作るよ、食べたいものある?」
温かいミルクティーの入ったマグカップがふよふよ飛んできてリジーの手の中にすっぽりと収まり、クッキーをねだりに小さなもぐらのような生き物の親子がぞろぞろとどこかから現れて、一枚ずつ大事そうに小脇に抱えて逃げていった。
その愛らしい姿に思わず頬を緩め、リジーはぽつりと呟く。
「……まるで親切なサマリア人みたい」
「そんな、好きでやってるだけだよ……」
「本当です、嘘はつきません」
ニュートはどこか居心地わるそうに視線を落とす。
年の離れた女の子と二人きり、どこかぎこちない空気がただよう中ニュートは話題を変えようと試みた。
「あ、あの……羽根があるって、どんな感覚?」
「……夏は暑いし、寝づらいし、色々と邪魔です」
十代の少女らしい身も蓋もない感想に、ニュートは思わず笑みをこぼす。
リジーははにかんで微笑んだ。
「触ってみますか?」
「え、いいのかい?」
ニュートは好奇心に駆られて遠慮がちに手を伸ばす、触れた感触もないほどに柔らかな羽根をそっと指の背で撫でる。
リジーはそっとニュートの頬を抱いて、唇のはしに口づけした。
ニュートは呆気にとられて咄嗟に身を離す。
「なにを――」
「わたしには、あげられるものがこれくらいしか無いので」
衣服のボタンに手を掛けようとするリジーを慌てて制する。
彼女は訳が分からないといった様子でニュートを見つめた。
「どうして?教会でさえ寄付金を集めるのに、どうしてわたしなんかに優しくしてくれるんですか?」
「こんなの間違ってる……」
「教会とは本来そういうものですよ」
やんわりと手を握られて柔らかな膨らみへと導かれる、薄い布越しに指先から心臓の鼓動が伝わってくる。
ニュートは思わずごくりと喉を鳴らす。
もう一度リジーの唇が自身の乾いた唇に重ねられる、ニュートは彼女の後頭部を捕らえてぐいっと自身の方へ引き寄せ、ベッドの上に押し倒した。
大人二人分の重さに小さなベッドがぎしりと悲鳴をあげる。
少し開いた唇のすき間から舌を滑り込ませて本能のままに口内を犯す、恐らく無意識にニュートの胸板を押し返す手を掴んでシーツに縫い止めると恐怖から僅かに身を竦ませた。
「……怖いかい?なら僕を突き飛ばせ、君がそんなことする必要はどこにもないんだ……!」
ニュートは静かな熱を込めて訴えかける、リジーは息を呑む。
「……あなたになら、何をされてもいい」
「やめろ、よしてくれリジー……」
リジーはニュートの目を見つめてうっそりと微笑む。
きて、彼女の囁き声が理性と良心をどろどろに溶かしていく。
翼を生やした少女を組み敷いている自分は到底、善人にはなれそうもないなと、ニュートは心の中で嘯いた。
▶あとがき
背中に鳩羽色の大きな翼を持った女の子、名前はリジー。
人間と魔法生物との混血なのか、先祖にマレディクタスがいるのか出自は分からないけど、数年前までその町では彼女は「天使」と崇められていたらしい。
小さな町の教会で育ち、人々に愛され、敬われていた。
けれど流行り病が町を襲い、その翼に斧を振り下ろされようとしているところをニュートが助けた。
艶のある羽根が一枚ふわりと、指先から舞い落ちる。
もう一枚、もう一枚と、一枚ずつ翼から剥ぎ取られていく。
無表情で淡々とその身を傷つけるリジーを見て、ニュートはぎょっとして思わずその手首を掴んだ。
ほんの少し力を込めれば簡単に折れてしまいそうなほど細く、あまりの頼りなさに驚き、ニュートは慌てて手を離す。
「?……なんですか?」
「そんなことしちゃいけないよ、痛いだろう」
リジーは不思議そうにちょこんと首を傾げる、どうやら意味が分かってないらしい。
「羽根はお守りになるんですって、一枚1ポンド」
「……ここではもう、そんなことしなくていいんだよ」
十八か十九といってもまだあどけない、ほんの子供だ。それなのに。
彼女を殺そうとしただけでなく、幼い少女を傷つけてあまつさえ金儲けの道具にしていた人間にニュートは憤りを覚えざるを得なかった。
「……ミスター・スキャマンダー、」
「ニュートでいいよ」
でも、と戸惑うリジーにニュートはぎこちなく微笑みを浮かべて「ニュート」と繰り返した。
「……ニュート、わたしご迷惑ですよね、なるべく早く出ていくのでそれまで――」
「――迷惑なんて、気にしないで。よければずっとここにいるといい。動物たちの世話を手伝って欲しいんだ」
「……でも、それではお礼になりません」
「お礼なんて、本当に気にしないで……そうだ、お茶でもどうだい?お腹空いてるだろう、クッキーしかないけど……あー、あとで何か作るよ、食べたいものある?」
温かいミルクティーの入ったマグカップがふよふよ飛んできてリジーの手の中にすっぽりと収まり、クッキーをねだりに小さなもぐらのような生き物の親子がぞろぞろとどこかから現れて、一枚ずつ大事そうに小脇に抱えて逃げていった。
その愛らしい姿に思わず頬を緩め、リジーはぽつりと呟く。
「……まるで親切なサマリア人みたい」
「そんな、好きでやってるだけだよ……」
「本当です、嘘はつきません」
ニュートはどこか居心地わるそうに視線を落とす。
年の離れた女の子と二人きり、どこかぎこちない空気がただよう中ニュートは話題を変えようと試みた。
「あ、あの……羽根があるって、どんな感覚?」
「……夏は暑いし、寝づらいし、色々と邪魔です」
十代の少女らしい身も蓋もない感想に、ニュートは思わず笑みをこぼす。
リジーははにかんで微笑んだ。
「触ってみますか?」
「え、いいのかい?」
ニュートは好奇心に駆られて遠慮がちに手を伸ばす、触れた感触もないほどに柔らかな羽根をそっと指の背で撫でる。
リジーはそっとニュートの頬を抱いて、唇のはしに口づけした。
ニュートは呆気にとられて咄嗟に身を離す。
「なにを――」
「わたしには、あげられるものがこれくらいしか無いので」
衣服のボタンに手を掛けようとするリジーを慌てて制する。
彼女は訳が分からないといった様子でニュートを見つめた。
「どうして?教会でさえ寄付金を集めるのに、どうしてわたしなんかに優しくしてくれるんですか?」
「こんなの間違ってる……」
「教会とは本来そういうものですよ」
やんわりと手を握られて柔らかな膨らみへと導かれる、薄い布越しに指先から心臓の鼓動が伝わってくる。
ニュートは思わずごくりと喉を鳴らす。
もう一度リジーの唇が自身の乾いた唇に重ねられる、ニュートは彼女の後頭部を捕らえてぐいっと自身の方へ引き寄せ、ベッドの上に押し倒した。
大人二人分の重さに小さなベッドがぎしりと悲鳴をあげる。
少し開いた唇のすき間から舌を滑り込ませて本能のままに口内を犯す、恐らく無意識にニュートの胸板を押し返す手を掴んでシーツに縫い止めると恐怖から僅かに身を竦ませた。
「……怖いかい?なら僕を突き飛ばせ、君がそんなことする必要はどこにもないんだ……!」
ニュートは静かな熱を込めて訴えかける、リジーは息を呑む。
「……あなたになら、何をされてもいい」
「やめろ、よしてくれリジー……」
リジーはニュートの目を見つめてうっそりと微笑む。
きて、彼女の囁き声が理性と良心をどろどろに溶かしていく。
翼を生やした少女を組み敷いている自分は到底、善人にはなれそうもないなと、ニュートは心の中で嘯いた。
▶あとがき
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