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「リジー……僕は闇祓いという安定した職に就いたし、貯金もしてきた、君との将来のために。だからリジー、僕と……僕と結婚してください」
「ニュート……っ!」
ニュートはリジーの手のひらにそっと、小さなものを握らせる。
リジーは喜びのあまりニュートを抱きしめた。
今までの人生の中で最高の瞬間、愛する人とこれから先ずっと共に生きていけるという幸せ。
リジーは必ず幸福な家庭を築くことを胸に誓った――。
「……んんっ、あっははは!ひい、もうムリっ!」
「ちょっとニュート!真面目に、ふふっ、あははは!」
二人は同時に吹き出して笑い転げる。
ニュートがリジーに渡したものは、小さなおもちゃの箒だった。
「ほら、早く僕のニンバスに乗って」
「んっ……!ちょっと笑わさないで、あははは!ニンバス!」
小さな箒に、細い棒に丸い頭をくっつけただけのニュートの青い人形が乗っている。
リジーはその後ろに自分を示す赤い人形を乗せた。
それを羊皮紙に描かれた「結婚」のマスの上に戻すと、「ニュート & リジー、結婚おめでとう!」という文字がバラの花の絵とともに浮かび上がってきた。
最近、魔法使いの間で熱狂的な人気を博している「人生ゲーム」
サイコロや箒の駒や、おもちゃのガリオン硬貨を使い、羊皮紙に描いたマス目を人生になぞらえて遊ぶ。
より幸せな一生を歩めば勝ち、一番お金持ちだったら勝ちなど勝敗のつけ方は様々。
今回の二人の勝負は「どちらが最後までゴールせずに残れるか長生き勝負」だった。
リジーはドキドキしながらサイコロを振る、コロンっと出た目に従ってリジーの箒がふわりふわりと浮かんでマスの上に着陸した。
「あら、わたしも結婚」
ニュートは当然恋人である自分とだと思いながら、リジーに青い人形を渡す。
リジーはうーんと唸りながら数秒悩んだあと、自分の箒に夫となる人形を乗せてニュートの駒の隣に置いた。
「よろしくね、わたしのギャツビー」
「……へ?ギャツビー?!」
「なによぅ」
たった今永遠の愛を誓い合ったはずの女性が選んだのは、よりによって小説の中の大富豪。
あまりの衝撃にニュートは飲んでいたギグルウォーターのグラスを少し零してしまった。
リジーは不満げに唇を尖らせる。
「君は今、僕の妻として僕の箒に乗っているのに、どうして君の箒には、ジェイ・ギャツビーなんかが乗っているんだ?」
「いいじゃない別に~、たかがゲームなんだから」
「よくない、全然よくない」
「もう~次ニュートの番よ、早くして」
僕はプロポーズの真似までしたのに、何がいいのか全然理解できない。
ニュートは渋々サイコロを振る、「そこそこの闇祓い」から「闇祓い局局長」に昇格した。
「やった、テセウスに勝った」
「えっと、局長の年収は……あら、思ったより……」
「僕の本の売り上げの方が高い」
リジーは苦笑いしながらサイコロを転がす。
出たマスは「第一子誕生」だった。
ニュートは目を瞬かせて読み間違えではないかと何度も文字の意味を反芻する。
「女の子がいいわ、名前は……メアリー!」
リジーは箒に小さな赤い人形を乗せながら、王女の名前からとって最初の女の子にメアリーと名付けた。
「リジー & ギャツビー夫妻、メアリーちゃん誕生おめでとう!」の文字をつまらなさそうにむすっとして睨みつけるニュート。
「メアリーは僕の子だ」
「何言ってるの、わたしたちにまだ子供はいないでしょ」
リジーはニュートの駒を指さして笑う。
拗ねた振りをしながらもニュートはこのゲームを大いに楽しんでいた。
本来、大人数で遊ぶ人生ゲームは二人では少し味気ないが、それでも酒のグラス片手にほろ酔いで、くだらないことでも大笑いする二人だけの時間が何よりも心地よく幸せだった。
その後ニュートは魔法大臣にまで昇りつめ、リジーとの間に二人の子供、エドワードとジョージを授かり、五人の友人に貸した金を持ち逃げされるも、順風満帆幸せな生涯を送った。
一方、何不自由なく幸せと思われたリジーとギャツビーの結婚生活には、徐々に暗雲が漂い始めていた。
「あっ、離婚した」
「気にすることないよ、そもそも二人の結婚が間違いだったんだ」
「えー、わたしは好きよ?ギャツビー」
短い間とはいえ十数年間連れ添った夫をリジーは何の感慨もなしに箒から降ろしてポイッと箱の中にしまった。
呆気ないものだと、たくさんの青い人形の中に埋もれたギャツビーをニュートは心の中で憐れむ。
人生も残りあと少ない、ニュートはサイコロを振る。
「定年退職、僕は余生を楽しむことにするよ」
「お疲れさまです!大臣閣下!」
カチン、とグラスを鳴らして乾杯する。
二人とももう大分酔っていて、ニュートは眠そうにくあ~っと欠伸をして背中をもたれさせる。
コロコロとサイコロが転がる、リジーの駒が浮かび上がりゴールを迎えてしまった。
「あらあら、ニュートの勝ちよ」
「……え、なに?」
「ほらわたし、あなたより先に早死してしまったわ」
「あーあ……」
睡魔が限界に達し、重いまぶたが勝手にずり落ちてくる。
こつん、と肩に触れる温かい何かにリジーが目をやると、すでに安らかな寝息を立てながらニュートは眠りに落ちてしまっていた。
そっと体を近くに寄せて、杖を振りゲームを片付けながら毛布を一枚呼び寄せる。
「もう……風邪引くよ」
うーん、聞こえてるのか聞こえてないのか分からない生返事にリジーは愛おしげに微笑んで、大人二人を覆うには少し小さな毛布にぎゅうぎゅうにくっついて包まる。
「おやすみなさい、ニュート……」
朝起きたら背中が痛くなってるだろうなと予想しながら、リジーは静かに目を閉じた。
▶あとがき
「ニュート……っ!」
ニュートはリジーの手のひらにそっと、小さなものを握らせる。
リジーは喜びのあまりニュートを抱きしめた。
今までの人生の中で最高の瞬間、愛する人とこれから先ずっと共に生きていけるという幸せ。
リジーは必ず幸福な家庭を築くことを胸に誓った――。
「……んんっ、あっははは!ひい、もうムリっ!」
「ちょっとニュート!真面目に、ふふっ、あははは!」
二人は同時に吹き出して笑い転げる。
ニュートがリジーに渡したものは、小さなおもちゃの箒だった。
「ほら、早く僕のニンバスに乗って」
「んっ……!ちょっと笑わさないで、あははは!ニンバス!」
小さな箒に、細い棒に丸い頭をくっつけただけのニュートの青い人形が乗っている。
リジーはその後ろに自分を示す赤い人形を乗せた。
それを羊皮紙に描かれた「結婚」のマスの上に戻すと、「ニュート & リジー、結婚おめでとう!」という文字がバラの花の絵とともに浮かび上がってきた。
最近、魔法使いの間で熱狂的な人気を博している「人生ゲーム」
サイコロや箒の駒や、おもちゃのガリオン硬貨を使い、羊皮紙に描いたマス目を人生になぞらえて遊ぶ。
より幸せな一生を歩めば勝ち、一番お金持ちだったら勝ちなど勝敗のつけ方は様々。
今回の二人の勝負は「どちらが最後までゴールせずに残れるか長生き勝負」だった。
リジーはドキドキしながらサイコロを振る、コロンっと出た目に従ってリジーの箒がふわりふわりと浮かんでマスの上に着陸した。
「あら、わたしも結婚」
ニュートは当然恋人である自分とだと思いながら、リジーに青い人形を渡す。
リジーはうーんと唸りながら数秒悩んだあと、自分の箒に夫となる人形を乗せてニュートの駒の隣に置いた。
「よろしくね、わたしのギャツビー」
「……へ?ギャツビー?!」
「なによぅ」
たった今永遠の愛を誓い合ったはずの女性が選んだのは、よりによって小説の中の大富豪。
あまりの衝撃にニュートは飲んでいたギグルウォーターのグラスを少し零してしまった。
リジーは不満げに唇を尖らせる。
「君は今、僕の妻として僕の箒に乗っているのに、どうして君の箒には、ジェイ・ギャツビーなんかが乗っているんだ?」
「いいじゃない別に~、たかがゲームなんだから」
「よくない、全然よくない」
「もう~次ニュートの番よ、早くして」
僕はプロポーズの真似までしたのに、何がいいのか全然理解できない。
ニュートは渋々サイコロを振る、「そこそこの闇祓い」から「闇祓い局局長」に昇格した。
「やった、テセウスに勝った」
「えっと、局長の年収は……あら、思ったより……」
「僕の本の売り上げの方が高い」
リジーは苦笑いしながらサイコロを転がす。
出たマスは「第一子誕生」だった。
ニュートは目を瞬かせて読み間違えではないかと何度も文字の意味を反芻する。
「女の子がいいわ、名前は……メアリー!」
リジーは箒に小さな赤い人形を乗せながら、王女の名前からとって最初の女の子にメアリーと名付けた。
「リジー & ギャツビー夫妻、メアリーちゃん誕生おめでとう!」の文字をつまらなさそうにむすっとして睨みつけるニュート。
「メアリーは僕の子だ」
「何言ってるの、わたしたちにまだ子供はいないでしょ」
リジーはニュートの駒を指さして笑う。
拗ねた振りをしながらもニュートはこのゲームを大いに楽しんでいた。
本来、大人数で遊ぶ人生ゲームは二人では少し味気ないが、それでも酒のグラス片手にほろ酔いで、くだらないことでも大笑いする二人だけの時間が何よりも心地よく幸せだった。
その後ニュートは魔法大臣にまで昇りつめ、リジーとの間に二人の子供、エドワードとジョージを授かり、五人の友人に貸した金を持ち逃げされるも、順風満帆幸せな生涯を送った。
一方、何不自由なく幸せと思われたリジーとギャツビーの結婚生活には、徐々に暗雲が漂い始めていた。
「あっ、離婚した」
「気にすることないよ、そもそも二人の結婚が間違いだったんだ」
「えー、わたしは好きよ?ギャツビー」
短い間とはいえ十数年間連れ添った夫をリジーは何の感慨もなしに箒から降ろしてポイッと箱の中にしまった。
呆気ないものだと、たくさんの青い人形の中に埋もれたギャツビーをニュートは心の中で憐れむ。
人生も残りあと少ない、ニュートはサイコロを振る。
「定年退職、僕は余生を楽しむことにするよ」
「お疲れさまです!大臣閣下!」
カチン、とグラスを鳴らして乾杯する。
二人とももう大分酔っていて、ニュートは眠そうにくあ~っと欠伸をして背中をもたれさせる。
コロコロとサイコロが転がる、リジーの駒が浮かび上がりゴールを迎えてしまった。
「あらあら、ニュートの勝ちよ」
「……え、なに?」
「ほらわたし、あなたより先に早死してしまったわ」
「あーあ……」
睡魔が限界に達し、重いまぶたが勝手にずり落ちてくる。
こつん、と肩に触れる温かい何かにリジーが目をやると、すでに安らかな寝息を立てながらニュートは眠りに落ちてしまっていた。
そっと体を近くに寄せて、杖を振りゲームを片付けながら毛布を一枚呼び寄せる。
「もう……風邪引くよ」
うーん、聞こえてるのか聞こえてないのか分からない生返事にリジーは愛おしげに微笑んで、大人二人を覆うには少し小さな毛布にぎゅうぎゅうにくっついて包まる。
「おやすみなさい、ニュート……」
朝起きたら背中が痛くなってるだろうなと予想しながら、リジーは静かに目を閉じた。
▶あとがき
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