Gretna Green
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八月、初めてリジーと出会った日のように暑い夏の日。
リジーはホグワーツを首席で卒業し、約半年ぶりに故郷に帰ってきた。
卒業証書を手に向かったのはニュートの家、ルリハコベの咲く庭でヒッポグリフがのんびりと日向ぼっこしていた。
「リジー!」
今からプロポーズをすると言うのにニュートはいつも通りボサボサの前髪とヨレヨレのスーツで走って出迎え、まだホグワーツのローブ姿のリジーを抱きしめる。
「卒業、おめでとう」
「うう、ぐす、ニュート……っ」
「ああ、まだ泣いてるのかい?卒業式ってそんなに感動的だったかな」
ニュートは小さな子にするように膝をついてリジーと視線を合わせ、濡れた頬をそっと手のひらで包み込む。
リジーはぼろぼろ涙を零しながらしゃくりあげて言った。
「結婚、できなくなった」
「……え?」
訳が分からず、ニュートは愕然としつつ自分の聞き間違えであることを願いながら問い返す。
結婚できなくなった、とリジーは声を震わせながらもはっきりと繰り返した。
「ホグワーツに戻って、九月から教師になる」
「どうして急にそんな……」
「知らない……っ、わたしの知らないうちにそういうことになってたの!」
リジーは貰ったばかりの卒業証書をくしゃくしゃになるほど握りしめ、ペンダントにして肌身離さず首から下げていたニュートに貰った婚約指輪に手をやる。
「パパとママが、不釣り合いだって……」
「十も年が離れてるから?」
「……ええ、そう」
ニュートは俯いて視線を彷徨わせる、リジーは悔しげに唇を噛んだ。
「……わたしが二十歳になるまで待てば、結婚を許すって言ってた」
「……きっと一生許してもらえないよ」
「わたしもそう思う……」
「それにそんな悠長なこと言ってたら、あなたすぐにお爺さんになっちゃう」とリジーはヒステリックに言った。
そんなすぐにはならないよ、とニュートは苦笑いする。
「わたしたち、ほんとに結婚できないの……?」
「それは……」
ニュートは一瞬言い淀んだ。
結婚なんていつでも出来る、焦らずとももう少し待って、みんなから祝福される日まで。社会経験も必要だと諭すのがきっと正解だ。
彼女の将来を願う年長者の一人として。
「――ごめん、僕は……すごく悪い大人かも」
「……女子の生着替え覗いてる時点でサイテーな大人だと思う」
「だからこうして責任取ろうとしてる」
ニュートはリジーの手をとって指を絡める。
こんなことを自分の口から言うのはとても狡いことかもしれない。
でも何をしても埋められないものなら、何もかもを捨てるしかない。
「……駆け落ちしよう」
「え……」
「今から教会に行って、そのまま二、三日旅行に行こう。リタならきっと証人になってくれる、あと一人は誰か君の友達に頼めばいい。誓いさえ立ててしまえば、反対されようが君がホグワーツに行こうが関係ない」
「でも、わたし……」
リジーの目には不安の色が浮かんでいる。
彼女が家族を愛していることをニュートはよく知っていた、できるなら自分との結婚を喜んでほしいと望んでいたことも。
「……かわいい一人娘を心配してるだけだよ、生きてさえいればまた会える」
リジーは涙ながらにこくこくと何度も頷いた。
「一緒になろう、リジー」とニュートは愛情と敬意を込めて、リジーの左手の甲に口づけをした。
▶︎あとがき
リジーはホグワーツを首席で卒業し、約半年ぶりに故郷に帰ってきた。
卒業証書を手に向かったのはニュートの家、ルリハコベの咲く庭でヒッポグリフがのんびりと日向ぼっこしていた。
「リジー!」
今からプロポーズをすると言うのにニュートはいつも通りボサボサの前髪とヨレヨレのスーツで走って出迎え、まだホグワーツのローブ姿のリジーを抱きしめる。
「卒業、おめでとう」
「うう、ぐす、ニュート……っ」
「ああ、まだ泣いてるのかい?卒業式ってそんなに感動的だったかな」
ニュートは小さな子にするように膝をついてリジーと視線を合わせ、濡れた頬をそっと手のひらで包み込む。
リジーはぼろぼろ涙を零しながらしゃくりあげて言った。
「結婚、できなくなった」
「……え?」
訳が分からず、ニュートは愕然としつつ自分の聞き間違えであることを願いながら問い返す。
結婚できなくなった、とリジーは声を震わせながらもはっきりと繰り返した。
「ホグワーツに戻って、九月から教師になる」
「どうして急にそんな……」
「知らない……っ、わたしの知らないうちにそういうことになってたの!」
リジーは貰ったばかりの卒業証書をくしゃくしゃになるほど握りしめ、ペンダントにして肌身離さず首から下げていたニュートに貰った婚約指輪に手をやる。
「パパとママが、不釣り合いだって……」
「十も年が離れてるから?」
「……ええ、そう」
ニュートは俯いて視線を彷徨わせる、リジーは悔しげに唇を噛んだ。
「……わたしが二十歳になるまで待てば、結婚を許すって言ってた」
「……きっと一生許してもらえないよ」
「わたしもそう思う……」
「それにそんな悠長なこと言ってたら、あなたすぐにお爺さんになっちゃう」とリジーはヒステリックに言った。
そんなすぐにはならないよ、とニュートは苦笑いする。
「わたしたち、ほんとに結婚できないの……?」
「それは……」
ニュートは一瞬言い淀んだ。
結婚なんていつでも出来る、焦らずとももう少し待って、みんなから祝福される日まで。社会経験も必要だと諭すのがきっと正解だ。
彼女の将来を願う年長者の一人として。
「――ごめん、僕は……すごく悪い大人かも」
「……女子の生着替え覗いてる時点でサイテーな大人だと思う」
「だからこうして責任取ろうとしてる」
ニュートはリジーの手をとって指を絡める。
こんなことを自分の口から言うのはとても狡いことかもしれない。
でも何をしても埋められないものなら、何もかもを捨てるしかない。
「……駆け落ちしよう」
「え……」
「今から教会に行って、そのまま二、三日旅行に行こう。リタならきっと証人になってくれる、あと一人は誰か君の友達に頼めばいい。誓いさえ立ててしまえば、反対されようが君がホグワーツに行こうが関係ない」
「でも、わたし……」
リジーの目には不安の色が浮かんでいる。
彼女が家族を愛していることをニュートはよく知っていた、できるなら自分との結婚を喜んでほしいと望んでいたことも。
「……かわいい一人娘を心配してるだけだよ、生きてさえいればまた会える」
リジーは涙ながらにこくこくと何度も頷いた。
「一緒になろう、リジー」とニュートは愛情と敬意を込めて、リジーの左手の甲に口づけをした。
▶︎あとがき