ヤキモチ妬きのティータイム
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恋人でもないのに同僚と二人きりでコーヒーを飲みに行くのは浮気になるか。
この場合、答えを決める要素は二つある。
誘う方が相手に気がある場合、誘われる方も決して満更ではない場合。
ニュートは頭を抱えていた、通りを挟んだ向かい側のカフェではコーヒー片手に男と楽しそうに談笑するリジーの姿がある。
あの男のことなら知っている、前から彼女にしつこく言いよっていた男だ、要注意人物リストの1番上に名前がある。
彼女に知られたら「そんなリストをつけてるの?」と引かれそうだけど、だってしょうがないじゃないか。
彼女は人より美人で、可愛くて、賢くて、淑やかで……
魔法省はまるで、隙あらばかっさらってやろうと牙を向くハイエナの群れのど真ん中だ。僕はハイエナも好きだけど、そういう連中は好かない。
でも困ったことにリジーはそれを全っ然、これっぽっちも分かってないみたいだ。むしろ魔法省をファミリーだと思ってる。
とんでもない、ファミリーな訳があるか。
それよりも、いやまさかとは思うけど、問題は後者だ。
遠目からだけど、彼女は心から楽しんでいるように見える。僕には分かる。
ニュートはもうかれこれ数十分、頭を抱えていた。
きっと強引に誘われて断りきれなかったに違いない、でも本当にそうだとして、ほかの男とあんなに楽しそうに笑うものだろうか?
なんでロンドンにいないんだジェイコブ……教えてくれ、君ならこんな時どうする?
しばし葛藤した後に、ニュートは覚悟を決めて歩き出した。
通りを渡り、昼時で混雑した店の中を縫うように進む。
リジーはニュートの姿を見ても驚く様子もなく、珈琲の香りがする店で一人優雅に紅茶を飲んでいた。
「リジー、帰るよ」
「いやよ、帰らない」
天地がひっくり返ってもありえないと思っていた、全く予想外の反応にニュートは大いに狼狽えた。
「……なぜ?」
「ニュートと一緒に帰りたくないから」
お茶もまだ残ってるし。
リジーはティーポットを傾けて湯気のたつ紅茶をカップに注ぐ。
たっぷりのミルクと、角砂糖を一つ落としてゆっくりとティースプーンでかき混ぜる。
「僕と一緒に帰りたくないってどういう、」
「どうもこうも……バンティと動物たちが待ってるでしょ、早く帰ってあげたら?」
普段ニュートが感情的になることなどほとんどない、生来よく言えば温厚な性格なのも自覚している。
それでも、彼にだって叫び出したくなる時ぐらいあるのだ。
ニュートはまだ湯気のたつリジーのティーカップを取ると一気に飲み干した、喉を焼きつくすような熱さにぎゅっと顔を顰める。
「……ごちそうさま、行くよリジー」
「ちょっと!ニュートってば、離してっ!」
値段も見ずに金貨を数枚テーブルに叩きつけると、リジーの手を引いて足早に店を出、表通りを一本入った静かな通りに姿現わしした。
「もう!離してったら!」
リジーは思いっきり腕を振りあげ、ニュートの手を振り解いた。
「僕と一緒がいやだってどういうこと?」
「そのままの意味よ」
リジーはふいっと顔を逸らして答えた。
ニュートは深く息を吐いて少しでも冷静さを保たせる、感情的になるのはよくない。気持ちは伝染するもの。
落ちついて、冷静に、ゆっくり慎重に。
あちこちに視線をさ迷わせ逡巡したあと、静かな低いトーンで言った。
「彼と二人きりで会ってたのは、どういうつもり?あいつが君に気があることぐらい分かってるだろ、なのにどうして」
「それがなに?お茶ぐらいしたっていいでしょ?あなただって……っ!」
言いかけて、リジーは不意に声を詰まらせた。
「……僕だってなんだい?」
「いつも、バンティと二人きりでいるくせに……」
「バンティには動物たちの世話を頼んでるだけだ、彼女はいま関係ないだろう」
「関係なくない!同じことよ!」
リジーはヒステリックに声を上げる、その目には涙が滲んでいた。
「バンティは、ニュートが好きなのよ」
「彼女が、僕を?まさか」
ありえない、首を横に振るニュートに、リジーは「気づいてないのはあなたぐらい」
「なのに家に帰って二言目にはバンティ、バンティって……わたしの気持ちも、少しは考えてよ……っ」
ニュートにその気がないのは知っている、そんなこと百も承知だ。
でも何も知らずに、名前を呼ばれるたびに嬉しそうに僅かに頬を赤らめる彼女を見てるのは耐えられなかった。
ニュートは深くため息をついて、こめかみを押さえる。
その様子に「怒らせてしまった、嫌われた」と勘違いしたリジーは瞳から大粒の涙を零れさせ咽び泣いた。
「ああっ、どうしよう、ほら泣かないで~?怒ってないよ~?今のは違ってそのう、僕が僕に呆れてため息が出たって言うか……」
普段、動物たちを宥めるのには慣れてるはずのニュートが珍しく取り乱している。
リジーは涙で頬を濡らしたまま、真剣な眼差しでじっとニュートの目を見つめた。
「……わたしのことすき?」
「ああ、もちろん……」
「大好き?」
「だいすき」
「愛してる……?」
ニュートは一瞬、足元に視線を落とし口を噤んだ。
そして、顔が見えないように彼女のこめかみに優しい口づけをする。
「愛してるよ」
背中に腕を回される感覚がして、ニュートはリジーを抱き寄せた。
「わたしも、愛してる」リジーは赤くなった耳に囁く。
「うん、よかった……」
心の底から安堵のため息が溢れる。
腕の中の確かな温もりと存在を確かめるように強く抱きしめ、じゃあとニュートは口を開く。
「僕、ちょっと用事が出来たから……」
「え?」
「少しここで待ってて」
すぐ戻るから、そう言ってニュートは杖を片手に姿くらましをした。
要注意人物リストのNO.1から、彼女の記憶を消しに。
▶あとがき
この場合、答えを決める要素は二つある。
誘う方が相手に気がある場合、誘われる方も決して満更ではない場合。
ニュートは頭を抱えていた、通りを挟んだ向かい側のカフェではコーヒー片手に男と楽しそうに談笑するリジーの姿がある。
あの男のことなら知っている、前から彼女にしつこく言いよっていた男だ、要注意人物リストの1番上に名前がある。
彼女に知られたら「そんなリストをつけてるの?」と引かれそうだけど、だってしょうがないじゃないか。
彼女は人より美人で、可愛くて、賢くて、淑やかで……
魔法省はまるで、隙あらばかっさらってやろうと牙を向くハイエナの群れのど真ん中だ。僕はハイエナも好きだけど、そういう連中は好かない。
でも困ったことにリジーはそれを全っ然、これっぽっちも分かってないみたいだ。むしろ魔法省をファミリーだと思ってる。
とんでもない、ファミリーな訳があるか。
それよりも、いやまさかとは思うけど、問題は後者だ。
遠目からだけど、彼女は心から楽しんでいるように見える。僕には分かる。
ニュートはもうかれこれ数十分、頭を抱えていた。
きっと強引に誘われて断りきれなかったに違いない、でも本当にそうだとして、ほかの男とあんなに楽しそうに笑うものだろうか?
なんでロンドンにいないんだジェイコブ……教えてくれ、君ならこんな時どうする?
しばし葛藤した後に、ニュートは覚悟を決めて歩き出した。
通りを渡り、昼時で混雑した店の中を縫うように進む。
リジーはニュートの姿を見ても驚く様子もなく、珈琲の香りがする店で一人優雅に紅茶を飲んでいた。
「リジー、帰るよ」
「いやよ、帰らない」
天地がひっくり返ってもありえないと思っていた、全く予想外の反応にニュートは大いに狼狽えた。
「……なぜ?」
「ニュートと一緒に帰りたくないから」
お茶もまだ残ってるし。
リジーはティーポットを傾けて湯気のたつ紅茶をカップに注ぐ。
たっぷりのミルクと、角砂糖を一つ落としてゆっくりとティースプーンでかき混ぜる。
「僕と一緒に帰りたくないってどういう、」
「どうもこうも……バンティと動物たちが待ってるでしょ、早く帰ってあげたら?」
普段ニュートが感情的になることなどほとんどない、生来よく言えば温厚な性格なのも自覚している。
それでも、彼にだって叫び出したくなる時ぐらいあるのだ。
ニュートはまだ湯気のたつリジーのティーカップを取ると一気に飲み干した、喉を焼きつくすような熱さにぎゅっと顔を顰める。
「……ごちそうさま、行くよリジー」
「ちょっと!ニュートってば、離してっ!」
値段も見ずに金貨を数枚テーブルに叩きつけると、リジーの手を引いて足早に店を出、表通りを一本入った静かな通りに姿現わしした。
「もう!離してったら!」
リジーは思いっきり腕を振りあげ、ニュートの手を振り解いた。
「僕と一緒がいやだってどういうこと?」
「そのままの意味よ」
リジーはふいっと顔を逸らして答えた。
ニュートは深く息を吐いて少しでも冷静さを保たせる、感情的になるのはよくない。気持ちは伝染するもの。
落ちついて、冷静に、ゆっくり慎重に。
あちこちに視線をさ迷わせ逡巡したあと、静かな低いトーンで言った。
「彼と二人きりで会ってたのは、どういうつもり?あいつが君に気があることぐらい分かってるだろ、なのにどうして」
「それがなに?お茶ぐらいしたっていいでしょ?あなただって……っ!」
言いかけて、リジーは不意に声を詰まらせた。
「……僕だってなんだい?」
「いつも、バンティと二人きりでいるくせに……」
「バンティには動物たちの世話を頼んでるだけだ、彼女はいま関係ないだろう」
「関係なくない!同じことよ!」
リジーはヒステリックに声を上げる、その目には涙が滲んでいた。
「バンティは、ニュートが好きなのよ」
「彼女が、僕を?まさか」
ありえない、首を横に振るニュートに、リジーは「気づいてないのはあなたぐらい」
「なのに家に帰って二言目にはバンティ、バンティって……わたしの気持ちも、少しは考えてよ……っ」
ニュートにその気がないのは知っている、そんなこと百も承知だ。
でも何も知らずに、名前を呼ばれるたびに嬉しそうに僅かに頬を赤らめる彼女を見てるのは耐えられなかった。
ニュートは深くため息をついて、こめかみを押さえる。
その様子に「怒らせてしまった、嫌われた」と勘違いしたリジーは瞳から大粒の涙を零れさせ咽び泣いた。
「ああっ、どうしよう、ほら泣かないで~?怒ってないよ~?今のは違ってそのう、僕が僕に呆れてため息が出たって言うか……」
普段、動物たちを宥めるのには慣れてるはずのニュートが珍しく取り乱している。
リジーは涙で頬を濡らしたまま、真剣な眼差しでじっとニュートの目を見つめた。
「……わたしのことすき?」
「ああ、もちろん……」
「大好き?」
「だいすき」
「愛してる……?」
ニュートは一瞬、足元に視線を落とし口を噤んだ。
そして、顔が見えないように彼女のこめかみに優しい口づけをする。
「愛してるよ」
背中に腕を回される感覚がして、ニュートはリジーを抱き寄せた。
「わたしも、愛してる」リジーは赤くなった耳に囁く。
「うん、よかった……」
心の底から安堵のため息が溢れる。
腕の中の確かな温もりと存在を確かめるように強く抱きしめ、じゃあとニュートは口を開く。
「僕、ちょっと用事が出来たから……」
「え?」
「少しここで待ってて」
すぐ戻るから、そう言ってニュートは杖を片手に姿くらましをした。
要注意人物リストのNO.1から、彼女の記憶を消しに。
▶あとがき
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