微熱
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ぞくり、不意に背筋を駆け抜ける悪寒に身震いした。
内臓まで粟立つような吐き気にごくりと生唾をのむ。
トイレに行かなきゃ、理性に突き動かされふらつく身体に必死で鞭を打つ。
匂い消しのハーブの香りがいやに鼻につく。
雑巾を絞るみたいに、空っぽの胃を大きな手でぎゅうぎゅう握り締められてるみたい。
吐いたものを見て、また吐き気が沸き起こってくる。
辛くて苦しくて、涙が溢れ出た。
書斎で締め切り間近の原稿に追われていたニュートが物音に気づいて出てみると、寝室でまだ寝ていたはずのリジーが青ざめた顔で廊下に蹲っていた。
「ぐす、うぅ、ニュート~……」
「え……え?!ど、どうしたんだいリジー……?気持ち悪いの?」
こくこくと頷く彼女に、とりあえず自分のカーディガンを羽織らせた。
抱き上げて、逸る気持ちを抑えながら極力揺らさないように足早にリビングのソファーに寝かせる。
脱水症状になっているだろうから水を飲ませた方がいいだろうと思ったが、杖を書斎に忘れてきたことに気づく。
戻るよりも取りに行った方が早いと慌ててキッチンに走った。
水を飲ませてもリジーの顔色は戻らない、涙のあとを拭いてやりながらふと熱っぽいような気がして額に手を当てた。
「……熱があるんじゃない?」
「え……?ないわよ熱なんて……」
「ちゃんと計ったの?」
ないのに普通計らないでしょ、力なく首を横に振るリジーの手に体温計を握らせる。
彼女は渋々と言った様子で熱を計った。
「食欲は?」
「今は食べたくない……」
「生理はちゃんと来てる?」
「……え、何?」
「OK、分かった。病院に行こうリジー」
その瞬間、彼女はまるで石になってしまったかのようにぴくりとも微動だにしなくなった。
長い沈黙の末、リジーは切羽詰まった様子で声を上げた。
「い、医者はいや!」
「ダメだよ。そうだ、テセウスに車を借りよう、あとリタに来てもらえないか聞いて……君の実家にも連絡しないと……」
「少し休んだらきっと良くなるわ!それにニュートは締め切り近いんでしょ、原稿やらないと」
「ダメダメダメ、もう大人なんだから腹をくくろう」
リジーは絶望と恐怖に身を竦めた、彼女にとって病院ほど恐ろしいものなどこの世に存在しない。
頭の中で何とかこの状況を脱する方法を考え、ふと名案を思いつき手を叩いた。
「OK、じゃあ熱があったら行く、無かったら屋根裏部屋の掃除」
「よし来た、あったら行くんだね?本当に」
「ええもちろん、わたしも大人なんだから」
リジーは深呼吸して、祈るような気持ちで体温計を裏返した。
……しかし、現実は彼女に味方してくれなかった。
ニュートはリジーの手からひょいっと体温計を奪い取り、にやりといじわるな笑みを浮かべた。
「36度9分、まあまあ微熱だね。病院に行くよリジー」
「……血液検査はないよね、さすがに」
「じっとしてたらすぐ済むよ……ほらほら泣かないの、もうすぐママになるんだから。僕ちょっと電話してくるから、下手に動いちゃダメだよ」
「マ……え、ちょっと、嘘でしょニュート――!」
呆然とするリジーを一旦置いて、ニュートは急いで玄関に行き、震える手でダイヤルを回した。
コール音が何回か響き、すぐにテセウスと繋がった。
「テセウス、どうしよう……車貸して、あとできればリタと……ちなみに兄さん、産婦人科ってかかったことある?」
▶あとがき
内臓まで粟立つような吐き気にごくりと生唾をのむ。
トイレに行かなきゃ、理性に突き動かされふらつく身体に必死で鞭を打つ。
匂い消しのハーブの香りがいやに鼻につく。
雑巾を絞るみたいに、空っぽの胃を大きな手でぎゅうぎゅう握り締められてるみたい。
吐いたものを見て、また吐き気が沸き起こってくる。
辛くて苦しくて、涙が溢れ出た。
書斎で締め切り間近の原稿に追われていたニュートが物音に気づいて出てみると、寝室でまだ寝ていたはずのリジーが青ざめた顔で廊下に蹲っていた。
「ぐす、うぅ、ニュート~……」
「え……え?!ど、どうしたんだいリジー……?気持ち悪いの?」
こくこくと頷く彼女に、とりあえず自分のカーディガンを羽織らせた。
抱き上げて、逸る気持ちを抑えながら極力揺らさないように足早にリビングのソファーに寝かせる。
脱水症状になっているだろうから水を飲ませた方がいいだろうと思ったが、杖を書斎に忘れてきたことに気づく。
戻るよりも取りに行った方が早いと慌ててキッチンに走った。
水を飲ませてもリジーの顔色は戻らない、涙のあとを拭いてやりながらふと熱っぽいような気がして額に手を当てた。
「……熱があるんじゃない?」
「え……?ないわよ熱なんて……」
「ちゃんと計ったの?」
ないのに普通計らないでしょ、力なく首を横に振るリジーの手に体温計を握らせる。
彼女は渋々と言った様子で熱を計った。
「食欲は?」
「今は食べたくない……」
「生理はちゃんと来てる?」
「……え、何?」
「OK、分かった。病院に行こうリジー」
その瞬間、彼女はまるで石になってしまったかのようにぴくりとも微動だにしなくなった。
長い沈黙の末、リジーは切羽詰まった様子で声を上げた。
「い、医者はいや!」
「ダメだよ。そうだ、テセウスに車を借りよう、あとリタに来てもらえないか聞いて……君の実家にも連絡しないと……」
「少し休んだらきっと良くなるわ!それにニュートは締め切り近いんでしょ、原稿やらないと」
「ダメダメダメ、もう大人なんだから腹をくくろう」
リジーは絶望と恐怖に身を竦めた、彼女にとって病院ほど恐ろしいものなどこの世に存在しない。
頭の中で何とかこの状況を脱する方法を考え、ふと名案を思いつき手を叩いた。
「OK、じゃあ熱があったら行く、無かったら屋根裏部屋の掃除」
「よし来た、あったら行くんだね?本当に」
「ええもちろん、わたしも大人なんだから」
リジーは深呼吸して、祈るような気持ちで体温計を裏返した。
……しかし、現実は彼女に味方してくれなかった。
ニュートはリジーの手からひょいっと体温計を奪い取り、にやりといじわるな笑みを浮かべた。
「36度9分、まあまあ微熱だね。病院に行くよリジー」
「……血液検査はないよね、さすがに」
「じっとしてたらすぐ済むよ……ほらほら泣かないの、もうすぐママになるんだから。僕ちょっと電話してくるから、下手に動いちゃダメだよ」
「マ……え、ちょっと、嘘でしょニュート――!」
呆然とするリジーを一旦置いて、ニュートは急いで玄関に行き、震える手でダイヤルを回した。
コール音が何回か響き、すぐにテセウスと繋がった。
「テセウス、どうしよう……車貸して、あとできればリタと……ちなみに兄さん、産婦人科ってかかったことある?」
▶あとがき
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