一緒にいて、すぐそばに。
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はじめまして、と言った彼女は写真で見たそのままの美人で、いかにも闇祓いらしい黒のパンツスタイルがスラッとした長身にとてもよく似合っていた。
「あの、会えて嬉しいよ、ティナ」
「ええ、こちらこそ……素敵な本をありがとう、スキャマンダーさん。妹もすごく喜んでた」
ニュートは嬉しそうに頬を綻ばせる。
握手を交わす二人の表情は親しみの中に、共に戦い成し遂げた旧い戦友のような、何か二人にしか分からないものがふわふわと漂っていた。
二人の間にちらりと視線を巡らせ、胸の奥がぎしぎし軋むような感情に気づかぬ振りをしてリジーは微笑む。
「……長旅とお仕事終わりで疲れてるでしょうに、ニュートもわたしも来てくれて本当に嬉しいわ。前から会ってみたかったの、オカミーをティーポットで退治した勇気ある女性がどんな人か」
「あれはわたし一人の力じゃないわ、チームだったから出来たの」
そうよね、スキャマンダーさん。
ティナに問いかけられ、ニュートはくつろいだ表情でグラスを傾けながらああ、と同調した。
「どうして闇祓いに?」
「両親を早くに亡くして……まだ小さかった妹の面倒を見るために、安定した職に就こうと思ったの」
「まあ、大変だったのね……」
そうでもなかったわ、ティナは明るく答えた。
「勉強は好きな方だったし、辛い時はあの子に支えられた」
「そうなの……学生の頃に、将来は闇祓いになりたいと言ったら家族に猛反対されたの」
「あら、どうして?」
「昔ながらの家だったから、娘が働きに出ること自体よく思われなかったのね。ホグワーツにも行かなくていいって言われたぐらい。歌やピアノや刺繍ばかりしていた」
そうだったの。
ティナは素っ気なく答えたが、同情するわけでも困惑するのでもない彼女の反応にリジーは安堵した。
「だからあなたに憧れる」
「わたしに?」
「すごくかっこいい、同じ女性として憧れるわ」
ティナは困ったように笑ってニュートを見た。
「嬉しいわ、どうもありがとうヴァンクスさん」
「……どうか、リジーと呼んで。お友達なのに変な感じでしょう?」
終始和やかな雰囲気の中、食事会は終わりを迎えた。
互いに微笑み合い、再会の約束を交わす二人をリジーは静かに眺めていた。
去っていく彼女の後ろ姿を見送りながら、リジーはぽつりと呟いた。
「……ニューヨークに、会いに行ってもいいのよ」
「え?」
「わたしの事は気にせずに、いつでも」
その言葉の意味がとっさに理解できなかったようで、ニュートは青い瞳を瞬かせた。
「それ、は……僕たち、別れるって意味?」
「……わたしなんかといても退屈でしょ」
「退屈ってどういう……」
「あなたには、もっと……綺麗で、賢くて、自立した人の方が似合ってる……彼女みたいに」
感情を殺して、声が震えないように努力したけど涙がまぶたの縁から零れて俯く。
長い沈黙のあとに、ニュートは声をつまらせて息をついた。
「僕は……鈍いし、周りに気がつかないし、話すのも下手だし……あとは、えっと、僕といるとろくな事にならないって思ってる人は大勢いる。もし君もそう思ってるなら、謝る。顔も見たくないって言うなら別れてもいい、でも――」
「ちがう!違うの……っ、そうじゃなくて、わたしは……あなたに愛してもらえるようなところなんて一つも……っ」
「……例えば、どんなとこ?」
「た……例えば?」
予想外の反応に、リジーは思わず涙を引っ込めて聞き返した。
ニュートがあまりにも澄んだ目で見つめてくるものだからリジーは困り果ててしまった。
「例えば、例えばそう……ニュートが浮気したのかと疑った……」
「僕が?君がいるのに。それに僕にはそんな器用なこと、いやちがう、そうじゃなくて……ねえ、分かるだろうリジー?」
「分かってる、でも……彼女は美人で賢くて、闇祓いだし……」
「ティナとはただの友人だよ……それに、僕がそういう……近づきにくい人が本当は苦手なの知ってるだろう」
「でもわたしは大きなオカミーを見たことない……っ!それってわたしが魔法が下手でのろまなお嬢様育ちだからでしょ?!」
「何を言ってるんだい、君は」
じわ、とまた涙がにじむ。
ニュートはリジーを抱きしめて、小さな体を腕の中に閉じ込めた。
「不安にさせたことは謝るよ……でもお願いだから、退屈とか、別れるなんてもう言わないでくれ……」
ぐす、と鼻をすすり、声を震わせるニュートの顔を見ようと、リジーは腕の中で身をよじらせた。
にじむ涙をおずおずと指先で拭う。
「ニュート、なんで泣いてるの……?」
「一瞬、嫌われたのかと思って……」
くしゃりと表情を歪ませて頬を濡らすニュートの首を背伸びして抱きしめると、小さな子を慰める母親のような気持ちで、柔らかい彼の髪を優しく撫でる。
「そんなこと、あるわけないじゃない……ああ、ごめんね、本当にごめんなさい……もうあんなひどいこと二度と言わないから……愛してるわ、ニュート」
「……僕も、愛してるよリジー」
ほかの誰よりも。
苦しいぐらいに力強く愛する人の腕に抱きしめられ、リジーは幸福な気持ちでいっぱいだった。
▶あとがき
「あの、会えて嬉しいよ、ティナ」
「ええ、こちらこそ……素敵な本をありがとう、スキャマンダーさん。妹もすごく喜んでた」
ニュートは嬉しそうに頬を綻ばせる。
握手を交わす二人の表情は親しみの中に、共に戦い成し遂げた旧い戦友のような、何か二人にしか分からないものがふわふわと漂っていた。
二人の間にちらりと視線を巡らせ、胸の奥がぎしぎし軋むような感情に気づかぬ振りをしてリジーは微笑む。
「……長旅とお仕事終わりで疲れてるでしょうに、ニュートもわたしも来てくれて本当に嬉しいわ。前から会ってみたかったの、オカミーをティーポットで退治した勇気ある女性がどんな人か」
「あれはわたし一人の力じゃないわ、チームだったから出来たの」
そうよね、スキャマンダーさん。
ティナに問いかけられ、ニュートはくつろいだ表情でグラスを傾けながらああ、と同調した。
「どうして闇祓いに?」
「両親を早くに亡くして……まだ小さかった妹の面倒を見るために、安定した職に就こうと思ったの」
「まあ、大変だったのね……」
そうでもなかったわ、ティナは明るく答えた。
「勉強は好きな方だったし、辛い時はあの子に支えられた」
「そうなの……学生の頃に、将来は闇祓いになりたいと言ったら家族に猛反対されたの」
「あら、どうして?」
「昔ながらの家だったから、娘が働きに出ること自体よく思われなかったのね。ホグワーツにも行かなくていいって言われたぐらい。歌やピアノや刺繍ばかりしていた」
そうだったの。
ティナは素っ気なく答えたが、同情するわけでも困惑するのでもない彼女の反応にリジーは安堵した。
「だからあなたに憧れる」
「わたしに?」
「すごくかっこいい、同じ女性として憧れるわ」
ティナは困ったように笑ってニュートを見た。
「嬉しいわ、どうもありがとうヴァンクスさん」
「……どうか、リジーと呼んで。お友達なのに変な感じでしょう?」
終始和やかな雰囲気の中、食事会は終わりを迎えた。
互いに微笑み合い、再会の約束を交わす二人をリジーは静かに眺めていた。
去っていく彼女の後ろ姿を見送りながら、リジーはぽつりと呟いた。
「……ニューヨークに、会いに行ってもいいのよ」
「え?」
「わたしの事は気にせずに、いつでも」
その言葉の意味がとっさに理解できなかったようで、ニュートは青い瞳を瞬かせた。
「それ、は……僕たち、別れるって意味?」
「……わたしなんかといても退屈でしょ」
「退屈ってどういう……」
「あなたには、もっと……綺麗で、賢くて、自立した人の方が似合ってる……彼女みたいに」
感情を殺して、声が震えないように努力したけど涙がまぶたの縁から零れて俯く。
長い沈黙のあとに、ニュートは声をつまらせて息をついた。
「僕は……鈍いし、周りに気がつかないし、話すのも下手だし……あとは、えっと、僕といるとろくな事にならないって思ってる人は大勢いる。もし君もそう思ってるなら、謝る。顔も見たくないって言うなら別れてもいい、でも――」
「ちがう!違うの……っ、そうじゃなくて、わたしは……あなたに愛してもらえるようなところなんて一つも……っ」
「……例えば、どんなとこ?」
「た……例えば?」
予想外の反応に、リジーは思わず涙を引っ込めて聞き返した。
ニュートがあまりにも澄んだ目で見つめてくるものだからリジーは困り果ててしまった。
「例えば、例えばそう……ニュートが浮気したのかと疑った……」
「僕が?君がいるのに。それに僕にはそんな器用なこと、いやちがう、そうじゃなくて……ねえ、分かるだろうリジー?」
「分かってる、でも……彼女は美人で賢くて、闇祓いだし……」
「ティナとはただの友人だよ……それに、僕がそういう……近づきにくい人が本当は苦手なの知ってるだろう」
「でもわたしは大きなオカミーを見たことない……っ!それってわたしが魔法が下手でのろまなお嬢様育ちだからでしょ?!」
「何を言ってるんだい、君は」
じわ、とまた涙がにじむ。
ニュートはリジーを抱きしめて、小さな体を腕の中に閉じ込めた。
「不安にさせたことは謝るよ……でもお願いだから、退屈とか、別れるなんてもう言わないでくれ……」
ぐす、と鼻をすすり、声を震わせるニュートの顔を見ようと、リジーは腕の中で身をよじらせた。
にじむ涙をおずおずと指先で拭う。
「ニュート、なんで泣いてるの……?」
「一瞬、嫌われたのかと思って……」
くしゃりと表情を歪ませて頬を濡らすニュートの首を背伸びして抱きしめると、小さな子を慰める母親のような気持ちで、柔らかい彼の髪を優しく撫でる。
「そんなこと、あるわけないじゃない……ああ、ごめんね、本当にごめんなさい……もうあんなひどいこと二度と言わないから……愛してるわ、ニュート」
「……僕も、愛してるよリジー」
ほかの誰よりも。
苦しいぐらいに力強く愛する人の腕に抱きしめられ、リジーは幸福な気持ちでいっぱいだった。
▶あとがき