仲直りしよう、何度でも。
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寒空の下、薄いコートを一枚羽織り、鼻先を赤く染めて訪ねてきたリジーに、リタは驚きつつも快く家に招き入れた。
「……喧嘩した」
「まあ……何が――」
「何があったんだ?」
リジーはぎゅっと唇を噛みしめ、大粒の涙をぽろぽろ零れ落ちさせる。
前のめりになって尋ねたテセウスを、リタは静かに窘めた。
「ニュート……ニュートのバカっ、わたしの気持ちなんて、全然考えてっ、うう……」
「ああ、かわいそうに……何があったのリジー?……ちょっとテセウス、あっち行って温かいものでも淹れてきてちょうだい」
「あ、ああ。ココアでいいかな」
「なんでもいいから早くお願いね」
リタはそっと近づき、彼女の肩を抱いて暖炉の前に座らせた。
突然泣き出してしまったリジーにおろおろするばかりのテセウスにリタはそっと耳打ちする。
テセウスがいそいそと部屋を出ていくのを見届けると、リタはリジーへと向き直った。
涙ながらにも彼女がひとしきり話し終えると、リタは深いため息をもらした。
「辛かったわねリジー、もう泣かないで……そうだ、今夜は泊まっていくでしょ?」
じわりとまた滲む涙を堪えながらリジーは小さく頷く。
リタは嬉しそうに頬を綻ばせて微笑んだ。
「素敵、嬉しいわ。たくさんお話ししましょ、女学生みたいに……夜食にケーキもあるわよ」
杖を一振すると、クリームのたっぷりのった背徳的なカップケーキがぽんっという音ともに現れた。
リタはいたずらっぽい笑みを浮かべて肩を竦めた。
――
「――やあニュート、遅かったな」
鼻先を赤くして息を切らながら訪ねてきたニュートを、テセウスはにやりとした笑みを隠そうともせず出迎えた。
リジー用の厚手のカーディガンとマフラーを持ったままニュートは真っ先に尋ねた。
「リジーは……」
「居間にいるよ」
「迷惑かけたね兄さん、どうもありがとう」
勝手知ったる足取りで上がり込むニュートをテセウスは止めた。
「まあ待て、まだ言うことがあるだろう」
「え?無いよ」
「忠告してやったじゃないか。諭すこと、ムキになること、手を上げること、これだけはやるなよ?」
絶対に。
念のこもった兄の言葉に、ニュートは苦い表情を浮かべた。
居間への扉をニュートは遠慮がちノックする、彼の姿を見た途端、楽しそうな笑い声が不意に途切れた。
「まあ……迎えが来てしまったわね」リタは残念そうに呟いて、ニュートに冷ややかな視線を送ると席を外した。
リジー、意地でもこちらを見ようとしない彼女の様子を伺いながら恐る恐る名前を呼ぶ。
「……ごめん、悪かったリジー。ひどいこと言って……不安にさせた」
ニュートは居た堪れない様子で俯く、沈黙の末、リジーはぽつりと口を開いた。
「……分かってる。ニュートが浮気なんてできるわけない、でも……」
一瞬、疑った。美しいものに惹かれない人間なんていない、隣の芝はいつだって青々としている。
彼女たちが見ているのは本じゃない、彼自身だ。
「ごめん、ごめんよリジー……知ってのとおり僕って鈍いから、全然気づかなくて……君の言うとおり学者の仕事じゃなかった。知識を残すための本なのに、あの手紙のほとんどは本を読んでもいない……次からは断るよ」
「……ほんとに?」
赤く泣き腫らした瞳が涙に滲む、ぐすり鼻を啜りリジーはニュートを見つめた。
「約束する、だから信じてくれ……僕には、もうずっと前から君しかいないんだ」
ニュートはおずおずとリジーの手をとる、あちこちペンだこや引っかき傷でささくれた大きな手を、彼女は遠慮がちに握り返した。
「……ごめんなさ、わたしっ、ぐす、ううん」
涙が堰を切って溢れ、子供のように嗚咽をもらす。
「……帰ろう、リジー」
ニュートは冷えた頬を指の背でそっと拭い、額に唇を寄せる。
彼女は小さくうん、と頷いた
▶あとがき
「……喧嘩した」
「まあ……何が――」
「何があったんだ?」
リジーはぎゅっと唇を噛みしめ、大粒の涙をぽろぽろ零れ落ちさせる。
前のめりになって尋ねたテセウスを、リタは静かに窘めた。
「ニュート……ニュートのバカっ、わたしの気持ちなんて、全然考えてっ、うう……」
「ああ、かわいそうに……何があったのリジー?……ちょっとテセウス、あっち行って温かいものでも淹れてきてちょうだい」
「あ、ああ。ココアでいいかな」
「なんでもいいから早くお願いね」
リタはそっと近づき、彼女の肩を抱いて暖炉の前に座らせた。
突然泣き出してしまったリジーにおろおろするばかりのテセウスにリタはそっと耳打ちする。
テセウスがいそいそと部屋を出ていくのを見届けると、リタはリジーへと向き直った。
涙ながらにも彼女がひとしきり話し終えると、リタは深いため息をもらした。
「辛かったわねリジー、もう泣かないで……そうだ、今夜は泊まっていくでしょ?」
じわりとまた滲む涙を堪えながらリジーは小さく頷く。
リタは嬉しそうに頬を綻ばせて微笑んだ。
「素敵、嬉しいわ。たくさんお話ししましょ、女学生みたいに……夜食にケーキもあるわよ」
杖を一振すると、クリームのたっぷりのった背徳的なカップケーキがぽんっという音ともに現れた。
リタはいたずらっぽい笑みを浮かべて肩を竦めた。
――
「――やあニュート、遅かったな」
鼻先を赤くして息を切らながら訪ねてきたニュートを、テセウスはにやりとした笑みを隠そうともせず出迎えた。
リジー用の厚手のカーディガンとマフラーを持ったままニュートは真っ先に尋ねた。
「リジーは……」
「居間にいるよ」
「迷惑かけたね兄さん、どうもありがとう」
勝手知ったる足取りで上がり込むニュートをテセウスは止めた。
「まあ待て、まだ言うことがあるだろう」
「え?無いよ」
「忠告してやったじゃないか。諭すこと、ムキになること、手を上げること、これだけはやるなよ?」
絶対に。
念のこもった兄の言葉に、ニュートは苦い表情を浮かべた。
居間への扉をニュートは遠慮がちノックする、彼の姿を見た途端、楽しそうな笑い声が不意に途切れた。
「まあ……迎えが来てしまったわね」リタは残念そうに呟いて、ニュートに冷ややかな視線を送ると席を外した。
リジー、意地でもこちらを見ようとしない彼女の様子を伺いながら恐る恐る名前を呼ぶ。
「……ごめん、悪かったリジー。ひどいこと言って……不安にさせた」
ニュートは居た堪れない様子で俯く、沈黙の末、リジーはぽつりと口を開いた。
「……分かってる。ニュートが浮気なんてできるわけない、でも……」
一瞬、疑った。美しいものに惹かれない人間なんていない、隣の芝はいつだって青々としている。
彼女たちが見ているのは本じゃない、彼自身だ。
「ごめん、ごめんよリジー……知ってのとおり僕って鈍いから、全然気づかなくて……君の言うとおり学者の仕事じゃなかった。知識を残すための本なのに、あの手紙のほとんどは本を読んでもいない……次からは断るよ」
「……ほんとに?」
赤く泣き腫らした瞳が涙に滲む、ぐすり鼻を啜りリジーはニュートを見つめた。
「約束する、だから信じてくれ……僕には、もうずっと前から君しかいないんだ」
ニュートはおずおずとリジーの手をとる、あちこちペンだこや引っかき傷でささくれた大きな手を、彼女は遠慮がちに握り返した。
「……ごめんなさ、わたしっ、ぐす、ううん」
涙が堰を切って溢れ、子供のように嗚咽をもらす。
「……帰ろう、リジー」
ニュートは冷えた頬を指の背でそっと拭い、額に唇を寄せる。
彼女は小さくうん、と頷いた
▶あとがき