仲直りしよう、何度でも。
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……なにこれ」
動物たちに餌をやろうと開いたトランクを前に、リジーは愕然としていた。
蓋を開けて中にあったのは、動物たちのテリトリー兼ニュートの研究室に続く梯子でも、マグル用の旅行鞄でもなく――。
彼宛ての、大量のファンレターだった。
可憐な花の便箋の数々、どう見ても女性からのものだ。
中には月刊魔女の表紙を何度も飾っている人気モデルからのサイン入りの葉書や、キスマークが刻まれたものまで。
「ちょっとニュート……なんなのこれ!」
トランクの中に降りていくと、ニュートは机に向かい忙しなさげな様子でちらりと一瞥し、ああと腑抜けた声で答えた。
「ファンレターだよ、僕宛ての。思ってた以上に売れ行きがいいらしい」
「……この人知ってるわ、雑誌に載ってた。今人気のモデルさんよ」
こっちはキスマークつき。
葉書や手紙を机に叩きつける、ニュートは興味なさげに横目で見ることもせずせっせと何かを書き続けている。
「そうなんだ、よく知らないけど」
欲しかったらあげるよ。
はあ?!と言いたくなるのをリジーはぐっと堪える。
「……さっきから何を書いてるの?」
首に抱きついたドゥーガルにも目もくれず、ペンを走らせるニュートにリジーは若干の棘を滲ませつつも穏やかに尋ねた。
「ファンレターの返事書き」
リジーの中で「ぷつり」と何かが途切れる音がした。
ニュートは一瞬にしてその場がしん、と冷たくなるのを感じて、恐る恐る顔を上げた。
「……ファンレターですって?これが?」
まるで、恋人に宛てるような愛の言葉が朗々と綴られた手紙に目をやる。どう見てもラブレター以外のなにものでも無い。
「あー……リジー、なんて言うかこれはそのう……」
「あなたは魔法動物学者でしょ?それとも舞台俳優かなにか?」
「学者、です……」
「ファンレターの返事書きも学者の仕事なの?」
ニュートは自然と姿勢を正し、恐る恐る答えた。
「読者あっての本だから……と、編集長が」
ここにいない第三者に少し擦り付けてしまったのも許してほしい、本当の事なのだから。
ニュートは心の中でワームを呪った。
「考えて見てくれリジー……本は読者あってこその本、本が売れてこそ作家だ、分かるだろ?これが僕の仕事なんだ。君だって一社会人だ、君の仕事について僕が口出ししたりしたこと今までにあったかい?頼むから静かにしてくれ――」
不意にニュートは言葉を切った。
いつだったか、誰かが言っていた「喧嘩の時に、男には絶対やっちゃいけない三つのことがある。諭すこと、ムキになること、手を上げること」という忠告を今さら思い出す。
状況を取り戻すには、もう遅すぎた。
「っ……もういい!ニュートなんて知らない!」
「リジー……!」
弾かれたように梯子を駆け上がるリジーの背中をニュートは慌てて追い掛ける。
コートと杖を手に足早に玄関を目指すリジーの手を掴む。
「リジー待って!こんな時間からどこ行くんだよっ」
「クイニーちゃんのとこに行く!」
「ニューヨークは船で6日掛かる」
「じゃあ実家に帰る!」
「君の実家は汽車で3時間だ!」
ニュートの手を振りほどこうとリジーは勢いよく腕を振り上げたが、彼がそれを許さなかった。
「っ……もう、もう!じゃあリタのとこに行く!ニュートは来ないで!」
「ま、待って!兄さんのとこはダメだ!リジー話し合おう――っ」
全て言い終わらないうちにリジーは杖を振り上げ、姿くらましをした。
ニュートは走って外に出たが、彼女の姿はもうどこにもなかった。
動物たちに餌をやろうと開いたトランクを前に、リジーは愕然としていた。
蓋を開けて中にあったのは、動物たちのテリトリー兼ニュートの研究室に続く梯子でも、マグル用の旅行鞄でもなく――。
彼宛ての、大量のファンレターだった。
可憐な花の便箋の数々、どう見ても女性からのものだ。
中には月刊魔女の表紙を何度も飾っている人気モデルからのサイン入りの葉書や、キスマークが刻まれたものまで。
「ちょっとニュート……なんなのこれ!」
トランクの中に降りていくと、ニュートは机に向かい忙しなさげな様子でちらりと一瞥し、ああと腑抜けた声で答えた。
「ファンレターだよ、僕宛ての。思ってた以上に売れ行きがいいらしい」
「……この人知ってるわ、雑誌に載ってた。今人気のモデルさんよ」
こっちはキスマークつき。
葉書や手紙を机に叩きつける、ニュートは興味なさげに横目で見ることもせずせっせと何かを書き続けている。
「そうなんだ、よく知らないけど」
欲しかったらあげるよ。
はあ?!と言いたくなるのをリジーはぐっと堪える。
「……さっきから何を書いてるの?」
首に抱きついたドゥーガルにも目もくれず、ペンを走らせるニュートにリジーは若干の棘を滲ませつつも穏やかに尋ねた。
「ファンレターの返事書き」
リジーの中で「ぷつり」と何かが途切れる音がした。
ニュートは一瞬にしてその場がしん、と冷たくなるのを感じて、恐る恐る顔を上げた。
「……ファンレターですって?これが?」
まるで、恋人に宛てるような愛の言葉が朗々と綴られた手紙に目をやる。どう見てもラブレター以外のなにものでも無い。
「あー……リジー、なんて言うかこれはそのう……」
「あなたは魔法動物学者でしょ?それとも舞台俳優かなにか?」
「学者、です……」
「ファンレターの返事書きも学者の仕事なの?」
ニュートは自然と姿勢を正し、恐る恐る答えた。
「読者あっての本だから……と、編集長が」
ここにいない第三者に少し擦り付けてしまったのも許してほしい、本当の事なのだから。
ニュートは心の中でワームを呪った。
「考えて見てくれリジー……本は読者あってこその本、本が売れてこそ作家だ、分かるだろ?これが僕の仕事なんだ。君だって一社会人だ、君の仕事について僕が口出ししたりしたこと今までにあったかい?頼むから静かにしてくれ――」
不意にニュートは言葉を切った。
いつだったか、誰かが言っていた「喧嘩の時に、男には絶対やっちゃいけない三つのことがある。諭すこと、ムキになること、手を上げること」という忠告を今さら思い出す。
状況を取り戻すには、もう遅すぎた。
「っ……もういい!ニュートなんて知らない!」
「リジー……!」
弾かれたように梯子を駆け上がるリジーの背中をニュートは慌てて追い掛ける。
コートと杖を手に足早に玄関を目指すリジーの手を掴む。
「リジー待って!こんな時間からどこ行くんだよっ」
「クイニーちゃんのとこに行く!」
「ニューヨークは船で6日掛かる」
「じゃあ実家に帰る!」
「君の実家は汽車で3時間だ!」
ニュートの手を振りほどこうとリジーは勢いよく腕を振り上げたが、彼がそれを許さなかった。
「っ……もう、もう!じゃあリタのとこに行く!ニュートは来ないで!」
「ま、待って!兄さんのとこはダメだ!リジー話し合おう――っ」
全て言い終わらないうちにリジーは杖を振り上げ、姿くらましをした。
ニュートは走って外に出たが、彼女の姿はもうどこにもなかった。
1/3ページ