世界一大きな額縁
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リジーは不思議な少女だった。
絵は普通、人格を持たない。生きている人間じゃないから。
言葉の意味を理解できなかったり、会話が噛み合わないことも多々ある。
ゴーストとは違い、彼らは実質コミュニケーションを取ることかできない。
五感を使い、思考し、何かを推し量ったり、行ったりすることはない。
昔、人として生きた記憶と経験から聞かれたことに対して受け答えするだけ。
でも、リジーは少し違った。
彼女は好奇心旺盛で、色々なことをニュートに尋ねてきた。
どうやら彼女は魔法使いではなく、普通のマグルだったようだ。
魔法のこと、この城のこと、今の時代のこと。
リジーは読書家であの本の続刊は出たのか、あの本の続きはどうなったのかと気にしていたがニュートはどれも知らない本ばかりだった。
数年前にヴィクトリア女王が亡くなって、今の国王はエドワード7世だと伝えると彼女はとても悲しんだ。
「一度でいいからお会いしたかったわ……毎年家にクリスマスカードが届いてたの、綺麗なカードに"良いクリスマスをお過ごしください"って。わたしの宝物よ」
「待って待って……女王からカード?毎年?」
「父が伯爵だから、お城で働いていたのよ。一度宮殿に家族で招待していただいたのだけど、わたしだけ連れて行ってもらえなかったの……でもその後に、女王様からお花が届いて、涙が出てくるぐらい嬉しかったわあ……」
途方もない話にニュートは圧倒されていた。
うちに国王からクリスマスカードなんて届いたら、どんなに大騒ぎになることだろう。
「どうして一人だけ宮殿に連れて行ってもらえなかったの?」
「わたしが六つの時にね、お兄様がふざけて家の中で凧を飛ばしてたの。わたし今でもすっごく怒ってるのよ!次会ったらいくら兄上と言えどほっぺたを一発こう、ぱちん!と――」
「う、うん、それで?」
「それでね、花瓶に凧を引っかけてしまって、わたしの頭の上に落ちてきたの。本棚の上に飾ってあったんだけど、びっくりして落ちてくるのをじいっと見てたら、空中でぴたっと止まって――」
「――え?君、マグルじゃなかったの?」
「まぐるって何だったかしら?」
「魔法が使えない人」
「違うわ。でも使えるか使えないかって言ったら使えないわね、自分で上手に制御できないもの」
「ホグワーツには入らなかったの?手紙が来たはずだ」
リジーはどこか寂しげな微笑みを浮かべながら静かに首を横に振った。
「伯爵家の娘が魔女だなんて、絶対あってはならない事なのよ。家の外に出たことがないの、わたしはいるのにいない幽霊みたい」
家族は娘の秘密を知られるのを恐れていた、家の名誉のために。
そして、リジーを家の中に隠した。
家族の中でもひとりぼっちで、どんなに寂しい思いをしたことか。
「君は……どっからどう見ても、幽霊なんかじゃないよ。普通の人間だよ、リジー」
ニュートの言葉にリジーは少し驚いて、おかしそうにくすくす笑った。
「普通って言われるのは初めてよ」
ニュートは彼女が伯爵家の令嬢だったということを思い出して慌てた。
高貴な生まれの人に普通とは、自分は何を言ってるんだ。
「あっ……ご、ごめんよ、僕そんなつもりは」
「気にしないで、嬉しいわ」
ずっとクレイジーって言われてきたから、彼女の一言にニュートは胸がぎゅうっと痛くなった。
「ねえ、ニュート……もしよければ、わたしのお友達第一号になってもらえる?」
「ああ……もちろん」
リジーは嬉しそうに、頬を綻ばせて咲った。
その笑顔に、ニュートは強く心を惹かれた。
どうして僕たちは違う時代に生まれてきてしまったのだろう。
「君は……僕と会ったことがあるんだよね?覚えてないんだけど……」
「当然よ、あなたと会ったことがあるのはわたしだけだもの」
ニュートは首を傾げた。
彼女の言っている意味がどういうことか、その時はまだ分からなかった。
絵は普通、人格を持たない。生きている人間じゃないから。
言葉の意味を理解できなかったり、会話が噛み合わないことも多々ある。
ゴーストとは違い、彼らは実質コミュニケーションを取ることかできない。
五感を使い、思考し、何かを推し量ったり、行ったりすることはない。
昔、人として生きた記憶と経験から聞かれたことに対して受け答えするだけ。
でも、リジーは少し違った。
彼女は好奇心旺盛で、色々なことをニュートに尋ねてきた。
どうやら彼女は魔法使いではなく、普通のマグルだったようだ。
魔法のこと、この城のこと、今の時代のこと。
リジーは読書家であの本の続刊は出たのか、あの本の続きはどうなったのかと気にしていたがニュートはどれも知らない本ばかりだった。
数年前にヴィクトリア女王が亡くなって、今の国王はエドワード7世だと伝えると彼女はとても悲しんだ。
「一度でいいからお会いしたかったわ……毎年家にクリスマスカードが届いてたの、綺麗なカードに"良いクリスマスをお過ごしください"って。わたしの宝物よ」
「待って待って……女王からカード?毎年?」
「父が伯爵だから、お城で働いていたのよ。一度宮殿に家族で招待していただいたのだけど、わたしだけ連れて行ってもらえなかったの……でもその後に、女王様からお花が届いて、涙が出てくるぐらい嬉しかったわあ……」
途方もない話にニュートは圧倒されていた。
うちに国王からクリスマスカードなんて届いたら、どんなに大騒ぎになることだろう。
「どうして一人だけ宮殿に連れて行ってもらえなかったの?」
「わたしが六つの時にね、お兄様がふざけて家の中で凧を飛ばしてたの。わたし今でもすっごく怒ってるのよ!次会ったらいくら兄上と言えどほっぺたを一発こう、ぱちん!と――」
「う、うん、それで?」
「それでね、花瓶に凧を引っかけてしまって、わたしの頭の上に落ちてきたの。本棚の上に飾ってあったんだけど、びっくりして落ちてくるのをじいっと見てたら、空中でぴたっと止まって――」
「――え?君、マグルじゃなかったの?」
「まぐるって何だったかしら?」
「魔法が使えない人」
「違うわ。でも使えるか使えないかって言ったら使えないわね、自分で上手に制御できないもの」
「ホグワーツには入らなかったの?手紙が来たはずだ」
リジーはどこか寂しげな微笑みを浮かべながら静かに首を横に振った。
「伯爵家の娘が魔女だなんて、絶対あってはならない事なのよ。家の外に出たことがないの、わたしはいるのにいない幽霊みたい」
家族は娘の秘密を知られるのを恐れていた、家の名誉のために。
そして、リジーを家の中に隠した。
家族の中でもひとりぼっちで、どんなに寂しい思いをしたことか。
「君は……どっからどう見ても、幽霊なんかじゃないよ。普通の人間だよ、リジー」
ニュートの言葉にリジーは少し驚いて、おかしそうにくすくす笑った。
「普通って言われるのは初めてよ」
ニュートは彼女が伯爵家の令嬢だったということを思い出して慌てた。
高貴な生まれの人に普通とは、自分は何を言ってるんだ。
「あっ……ご、ごめんよ、僕そんなつもりは」
「気にしないで、嬉しいわ」
ずっとクレイジーって言われてきたから、彼女の一言にニュートは胸がぎゅうっと痛くなった。
「ねえ、ニュート……もしよければ、わたしのお友達第一号になってもらえる?」
「ああ……もちろん」
リジーは嬉しそうに、頬を綻ばせて咲った。
その笑顔に、ニュートは強く心を惹かれた。
どうして僕たちは違う時代に生まれてきてしまったのだろう。
「君は……僕と会ったことがあるんだよね?覚えてないんだけど……」
「当然よ、あなたと会ったことがあるのはわたしだけだもの」
ニュートは首を傾げた。
彼女の言っている意味がどういうことか、その時はまだ分からなかった。