世界一大きな額縁
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数年後、ニュートは出版された自身の本を持って母校のホグワーツを訪れた。
あれから十数年も経つというのにこの古城は何も変わらず、思い出とともにニュートを出迎えてくれた。
思い返してみれば学生時代はあまり楽しいものではなかったが、それでも大人になるとあの頃が一番良かったと気づくものらしい。
恩師、ダンブルドアは本の前書きの執筆を快く引き受けてくれた。
なんと言っても、彼はニューヨークでの一件でニュートに借りがある。
正式に「魔法生物飼育学」の設立についても協力してくれるとの約束も取り付けた。彼の協力を得られれば将来、魔法動物の未来も大きく変わるだろう。
「心配せずとも、今回は真面目に書くよ」
これでも未来の若者に教育を授ける教師だ、とスコーンにジャムとクロテッドクリームを塗りつけながらダンブルドアは言う。
ニュートは怪訝な顔で小さく息をついた。
「わざわざ呼びつけなくとも……フクロウを飛ばせば済む話でしょう」
「いいじゃないか、久しぶりのホグワーツだ。懐かしいだろう?わたしの客人なら、君は堂々と正門から入れる」
「六年もここにいたんだ、もううんざりしてますよ」
ニュートは目を伏せて、紅茶のカップに口をつける。
「まあ、散歩でもしてくるといいさ。最近、城の中の改装を行ってね、部屋をなくしたり増やしたり、絵画も何枚か売り払ったり……君のいた頃とはまた雰囲気も変わってるだろう」
「……絵画を?」
さあっと血の気が引いていくのを感じた。
ニュートは思わず身を乗り出す、ガシャンとテーブルの上の食器たちが揺れる。
「あの、六階の南側に日曜だけ通じる空き部屋があったでしょう、そこに女の子の肖像画が……」
「六階?……さてどうだったかな、あちこち弄り回しちゃったからねえ、気になるのなら確かめてくればいいさ」
ちょうど、今日は日曜日だ。もごもごとスコーンを頬張りながらダンブルドアは朗らかに答えた。
ニュートは弾かれたように茶会の席を立ち、六階に急ぐ。
十数年経った今でも、広い城内で鮮明に道を覚えていた。
辿りついた先で、ニュートは足を止めた。
そこに廊下はなく、まるで最初からそこにあったかのように厚い壁が立ちはだかり、あの美しい藤の絵がものも言わず佇んでいた。
ニュートは呆然として藤の絵に手を伸ばす、ざらついたキャンパスの中にもあの別れの日以来探し求めていた姿はいない。
「……そこで何をしてるの?」
階上の踊り場から少女が声を掛ける。
ニュートは顔を上げることなく「ここにあった部屋は」と尋ねた。
「ダンブルドア先生が塞いでしまったの、わたしの秘密基地だったのに。でもその藤の絵は大好き」
「……中に絵が一枚があっただろう。あの絵はどこに……」
「リジー・ヴァンクスの?もうあそこにはいないわ、出ていってしまったの。彼女のいた窓の絵なら今はスリザリンの談話室に飾ってある、あそこは窓がないから。でも地下の談話室に持っていった途端、窓の外も湖の底に沈んでしまったんですって!おかしいわよね、まるで額縁の外と繋がっているみたい」
「出ていったって、どういう意味……」
ふとニュートは顔を上げる。
制服のローブを身に纏い、ハッフルパフの黄色いネクタイを締めた少女と目が合う。
「わたしたち、自己紹介でもしますか?」
リジー、ぽつりとニュートは呟く。
記憶の中の笑顔と目の前の光景が重なり合わさる、リジーは花が咲くようににっこりと微笑みを浮かべた。
▶あとがき
あれから十数年も経つというのにこの古城は何も変わらず、思い出とともにニュートを出迎えてくれた。
思い返してみれば学生時代はあまり楽しいものではなかったが、それでも大人になるとあの頃が一番良かったと気づくものらしい。
恩師、ダンブルドアは本の前書きの執筆を快く引き受けてくれた。
なんと言っても、彼はニューヨークでの一件でニュートに借りがある。
正式に「魔法生物飼育学」の設立についても協力してくれるとの約束も取り付けた。彼の協力を得られれば将来、魔法動物の未来も大きく変わるだろう。
「心配せずとも、今回は真面目に書くよ」
これでも未来の若者に教育を授ける教師だ、とスコーンにジャムとクロテッドクリームを塗りつけながらダンブルドアは言う。
ニュートは怪訝な顔で小さく息をついた。
「わざわざ呼びつけなくとも……フクロウを飛ばせば済む話でしょう」
「いいじゃないか、久しぶりのホグワーツだ。懐かしいだろう?わたしの客人なら、君は堂々と正門から入れる」
「六年もここにいたんだ、もううんざりしてますよ」
ニュートは目を伏せて、紅茶のカップに口をつける。
「まあ、散歩でもしてくるといいさ。最近、城の中の改装を行ってね、部屋をなくしたり増やしたり、絵画も何枚か売り払ったり……君のいた頃とはまた雰囲気も変わってるだろう」
「……絵画を?」
さあっと血の気が引いていくのを感じた。
ニュートは思わず身を乗り出す、ガシャンとテーブルの上の食器たちが揺れる。
「あの、六階の南側に日曜だけ通じる空き部屋があったでしょう、そこに女の子の肖像画が……」
「六階?……さてどうだったかな、あちこち弄り回しちゃったからねえ、気になるのなら確かめてくればいいさ」
ちょうど、今日は日曜日だ。もごもごとスコーンを頬張りながらダンブルドアは朗らかに答えた。
ニュートは弾かれたように茶会の席を立ち、六階に急ぐ。
十数年経った今でも、広い城内で鮮明に道を覚えていた。
辿りついた先で、ニュートは足を止めた。
そこに廊下はなく、まるで最初からそこにあったかのように厚い壁が立ちはだかり、あの美しい藤の絵がものも言わず佇んでいた。
ニュートは呆然として藤の絵に手を伸ばす、ざらついたキャンパスの中にもあの別れの日以来探し求めていた姿はいない。
「……そこで何をしてるの?」
階上の踊り場から少女が声を掛ける。
ニュートは顔を上げることなく「ここにあった部屋は」と尋ねた。
「ダンブルドア先生が塞いでしまったの、わたしの秘密基地だったのに。でもその藤の絵は大好き」
「……中に絵が一枚があっただろう。あの絵はどこに……」
「リジー・ヴァンクスの?もうあそこにはいないわ、出ていってしまったの。彼女のいた窓の絵なら今はスリザリンの談話室に飾ってある、あそこは窓がないから。でも地下の談話室に持っていった途端、窓の外も湖の底に沈んでしまったんですって!おかしいわよね、まるで額縁の外と繋がっているみたい」
「出ていったって、どういう意味……」
ふとニュートは顔を上げる。
制服のローブを身に纏い、ハッフルパフの黄色いネクタイを締めた少女と目が合う。
「わたしたち、自己紹介でもしますか?」
リジー、ぽつりとニュートは呟く。
記憶の中の笑顔と目の前の光景が重なり合わさる、リジーは花が咲くようににっこりと微笑みを浮かべた。
▶あとがき