Ⅲ
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クリーデンスについての調査を始めて数週間、収穫は全くと言っていいほど得られなかった。
手始めにニューヨークの病院に聞き込みを始めたが二十年近く前のカルテが残っているはずもなく、当時を知る人間もとうの昔に退職して連絡は取れず。
あちこちの病院や孤児院、教会を駆けずり回った。
そんなある日、ダメ元で訪れたニューヨークから少し外れた田舎の小さな産院でのことだった。
「これ……」
ふと目についた、カウンターのすみっこに隠すように埃をかぶっていたあの恐ろしい絵が描かれた新セーレム救世軍のビラ。
リジーは小さな希望を胸に抱きながら一枚手に取る。
「それね、昔働いていた人が置いていったのよ。怖いからやめてって言ったのに」
中年の看護婦が迷惑顔で答える。
「それってもしかして、ミセス・ベアボーン?」と半分確信を込めて尋ねると、看護婦は答える代わりに苦虫を噛み潰したような表情で肩を竦めた。
「おかしな人、はっきり言ってイヤな人だったわ。変な宗教か何かにハマっちゃってねえ、セーレムなんとかっていう」
「彼女……ミセス・ベアボーンはどうしてここをお辞めに?」
ちょいちょい、と指で手招きしてリジーが顔を寄せると、看護婦は低い声でそっと耳打ちした。
「もう二十年近く前、急に産気づいて飛び込んできた患者がいたの。どっかの貴族みたいな格好してたけど、どう見てもワケありだった、鞄の中に金貨をごっそり持ってたの!子どもを産んで、結局すぐ亡くなっちゃたんだけどね……」
メアリーはその赤ん坊とお金を持ち逃げしたんだよ、看護婦はリジーにしか聞こえないぐらいより一層小さな声で言った。
「……その、赤ちゃんの本当の名前って、」
「さあねえ……母親が名乗らなかったんだよ、なーんか訳があったんだろうねえ。でもほら、最近そこら中でセーレムが演説してるでしょう?いっつもメアリーのそばにいる大きい男の子がその時の赤ん坊だよ、名前は確か……」
「クリーデンス」
「……そう!確かそんなような名前だったはず」
リジーは興奮を抑えきれずにやりと笑む。
ついに辿りついた、クリーデンス・ベアボーンの過去。
しかしまだやっとはじめの一歩を踏み出したばかり、肝心の彼がレストレンジ家の血を受け継ぐ者なのかどうかはまだ分からないままだった。
手始めにニューヨークの病院に聞き込みを始めたが二十年近く前のカルテが残っているはずもなく、当時を知る人間もとうの昔に退職して連絡は取れず。
あちこちの病院や孤児院、教会を駆けずり回った。
そんなある日、ダメ元で訪れたニューヨークから少し外れた田舎の小さな産院でのことだった。
「これ……」
ふと目についた、カウンターのすみっこに隠すように埃をかぶっていたあの恐ろしい絵が描かれた新セーレム救世軍のビラ。
リジーは小さな希望を胸に抱きながら一枚手に取る。
「それね、昔働いていた人が置いていったのよ。怖いからやめてって言ったのに」
中年の看護婦が迷惑顔で答える。
「それってもしかして、ミセス・ベアボーン?」と半分確信を込めて尋ねると、看護婦は答える代わりに苦虫を噛み潰したような表情で肩を竦めた。
「おかしな人、はっきり言ってイヤな人だったわ。変な宗教か何かにハマっちゃってねえ、セーレムなんとかっていう」
「彼女……ミセス・ベアボーンはどうしてここをお辞めに?」
ちょいちょい、と指で手招きしてリジーが顔を寄せると、看護婦は低い声でそっと耳打ちした。
「もう二十年近く前、急に産気づいて飛び込んできた患者がいたの。どっかの貴族みたいな格好してたけど、どう見てもワケありだった、鞄の中に金貨をごっそり持ってたの!子どもを産んで、結局すぐ亡くなっちゃたんだけどね……」
メアリーはその赤ん坊とお金を持ち逃げしたんだよ、看護婦はリジーにしか聞こえないぐらいより一層小さな声で言った。
「……その、赤ちゃんの本当の名前って、」
「さあねえ……母親が名乗らなかったんだよ、なーんか訳があったんだろうねえ。でもほら、最近そこら中でセーレムが演説してるでしょう?いっつもメアリーのそばにいる大きい男の子がその時の赤ん坊だよ、名前は確か……」
「クリーデンス」
「……そう!確かそんなような名前だったはず」
リジーは興奮を抑えきれずにやりと笑む。
ついに辿りついた、クリーデンス・ベアボーンの過去。
しかしまだやっとはじめの一歩を踏み出したばかり、肝心の彼がレストレンジ家の血を受け継ぐ者なのかどうかはまだ分からないままだった。