Ⅲ
夢小説設定
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「おかえりなさいティー二ー……まあ、リジー!」
突然の来客にも関わらず、クイニーは喜んでリジーを出迎えてくれた。
コートや鞄をさっさと魔法で片付けると、リジーの頬にキスをして歓迎の挨拶をする。
リジーも彼女の薔薇色の頬にキスをして応えた。
「クイニー!早退したって聞いて心配してたのに損したわ、元気そうでよかった」
「リジーこそ!二人も友達だったのね、嬉しいわ!それより聞いたわよ、やらかしたってあなた本当なの?」
「ええ?」
何も知らないティナが驚いてリジーを見る。
リジーはクイニーを軽く小突いて制した。
「そうだ、夕飯食べていくでしょう?今夜はシチューよ」
クイニーは上機嫌でエプロンを身に纏い、キッチンに向かった。
ティナとリジーは奥の部屋に行き、勧められるがまま椅子に腰を下ろす。
さて、とリジーは話題を切り替えた。
「セーレム救世軍についてだけど、まずはそうね……資料が読みたいわ、資料室になかったの」
「……処分されてしまったんじゃない?」
「まさか、あなたが持ってるはずよ」
リジーは確信を込めて口にする。
セーレムの名前を聞いた時の彼女の反応、魔法の杖認可局の荒れたデスク。
彼女が今の仕事に満足しておらず、闇祓いの仕事に、ことにクリーデンスについて未練と後悔があることは明白だった。
セーレム救世軍についてMACUSAに資料が残されていないわけがない、とすると誰かが資料室から持ち出したと考えるの最も自然だ。
ティナは狼狽えたが、嘘をついたところで仕方ないと観念して本棚の奥から一冊のファイルを取り出してきてリジーに渡した。
オーラーオフィスを去る日にこれだけは、と手元に残しておいたものだった。
「……長官に報告する?」
「そんなことしたらわたしが単独行動してるのがバレてしまう」
ティナは思わず苦笑いする。
ぱらぱらと資料を捲りながら、リジーはずっと疑問だったことをぶつけてみた。
「ミセス・ベアボーンはどうして魔法の存在を確信しているの?」
「それは……彼女の前で、わたしが魔法を使ってしまったから……」
「……でもオブリビエイトしたんでしょう?そもそも新セーレム救世軍をつくったきっかけは何?」
「それは……」
ティナは首を傾げる、リジーは肩を竦めた。
「ミセス・ベアボーンの周りで、魔法族の孤児はいる?」
「いいえ、議会で把握している限りでは」
「十代後半から二十歳ぐらいの男の子は?」
「クリーデンスだけよ」
リジーは資料からクリーデンスの写真を一葉抜き取った。
クリーデンス・ベアボーン……帽子を目深に被り世間から身を隠すようにして、怯えた目をした猫背の青年をじっと見つめる。
彼が本当にレストレンジの血筋であるかはまだ分からないが、魔法と孤児に共通する新セーレム救世軍が今は唯一の突破口だろう。
「自分の子供に"信用"なんて名前、普通つける?」
ティナが苛立ちを滲ませて言う。
「本当の名前は違うかも」リジーはぽつりと呟いた。
「え?」
「クリーデンスの過去について知りたいわ、生まれた場所、生みの親……正確な生年月日」
「ああ……孤児だから、きっと残ってないわ。名前もない子供は大勢いるもの。彼を助けるの?」
「無理よ、所詮他人だもの。ただわたしの探している人が彼かどうか確かめたいだけ」
リジーは自分に言い聞かせるようにあえてきっぱりと言った。
ティナは彼女の言葉に落胆の色を隠しきれなかった、自分より闇祓いとしての経験も知識もある彼女なら助けられるかもしれないと淡い希望を抱いていたのだ。
「この写真、借りてくわ。資料、なるべく早く戻しておいてね」
「あ、あの……探しているって、どういうこと?誰を探しているの?」
リジーはそっと写真をジャケットの内ポケットにしまいながら意味深に微笑んだ。
「内緒」
突然の来客にも関わらず、クイニーは喜んでリジーを出迎えてくれた。
コートや鞄をさっさと魔法で片付けると、リジーの頬にキスをして歓迎の挨拶をする。
リジーも彼女の薔薇色の頬にキスをして応えた。
「クイニー!早退したって聞いて心配してたのに損したわ、元気そうでよかった」
「リジーこそ!二人も友達だったのね、嬉しいわ!それより聞いたわよ、やらかしたってあなた本当なの?」
「ええ?」
何も知らないティナが驚いてリジーを見る。
リジーはクイニーを軽く小突いて制した。
「そうだ、夕飯食べていくでしょう?今夜はシチューよ」
クイニーは上機嫌でエプロンを身に纏い、キッチンに向かった。
ティナとリジーは奥の部屋に行き、勧められるがまま椅子に腰を下ろす。
さて、とリジーは話題を切り替えた。
「セーレム救世軍についてだけど、まずはそうね……資料が読みたいわ、資料室になかったの」
「……処分されてしまったんじゃない?」
「まさか、あなたが持ってるはずよ」
リジーは確信を込めて口にする。
セーレムの名前を聞いた時の彼女の反応、魔法の杖認可局の荒れたデスク。
彼女が今の仕事に満足しておらず、闇祓いの仕事に、ことにクリーデンスについて未練と後悔があることは明白だった。
セーレム救世軍についてMACUSAに資料が残されていないわけがない、とすると誰かが資料室から持ち出したと考えるの最も自然だ。
ティナは狼狽えたが、嘘をついたところで仕方ないと観念して本棚の奥から一冊のファイルを取り出してきてリジーに渡した。
オーラーオフィスを去る日にこれだけは、と手元に残しておいたものだった。
「……長官に報告する?」
「そんなことしたらわたしが単独行動してるのがバレてしまう」
ティナは思わず苦笑いする。
ぱらぱらと資料を捲りながら、リジーはずっと疑問だったことをぶつけてみた。
「ミセス・ベアボーンはどうして魔法の存在を確信しているの?」
「それは……彼女の前で、わたしが魔法を使ってしまったから……」
「……でもオブリビエイトしたんでしょう?そもそも新セーレム救世軍をつくったきっかけは何?」
「それは……」
ティナは首を傾げる、リジーは肩を竦めた。
「ミセス・ベアボーンの周りで、魔法族の孤児はいる?」
「いいえ、議会で把握している限りでは」
「十代後半から二十歳ぐらいの男の子は?」
「クリーデンスだけよ」
リジーは資料からクリーデンスの写真を一葉抜き取った。
クリーデンス・ベアボーン……帽子を目深に被り世間から身を隠すようにして、怯えた目をした猫背の青年をじっと見つめる。
彼が本当にレストレンジの血筋であるかはまだ分からないが、魔法と孤児に共通する新セーレム救世軍が今は唯一の突破口だろう。
「自分の子供に"信用"なんて名前、普通つける?」
ティナが苛立ちを滲ませて言う。
「本当の名前は違うかも」リジーはぽつりと呟いた。
「え?」
「クリーデンスの過去について知りたいわ、生まれた場所、生みの親……正確な生年月日」
「ああ……孤児だから、きっと残ってないわ。名前もない子供は大勢いるもの。彼を助けるの?」
「無理よ、所詮他人だもの。ただわたしの探している人が彼かどうか確かめたいだけ」
リジーは自分に言い聞かせるようにあえてきっぱりと言った。
ティナは彼女の言葉に落胆の色を隠しきれなかった、自分より闇祓いとしての経験も知識もある彼女なら助けられるかもしれないと淡い希望を抱いていたのだ。
「この写真、借りてくわ。資料、なるべく早く戻しておいてね」
「あ、あの……探しているって、どういうこと?誰を探しているの?」
リジーはそっと写真をジャケットの内ポケットにしまいながら意味深に微笑んだ。
「内緒」